医局紹介

日本の老年医学の中枢として、臨床・研究を進める地域在宅医療学・老年科学教室

老年内科とは?

2025年までに団塊の世代が後期高齢者となり、その後も 2045 年まで高齢者が増え続けることが予想される日本において、最も求められている医療が、高齢者医療・老年医学です。
また、世界でも稀にみる高齢社会となる日本の高齢者医療・老年医学は、いま日本のみならず世界から注目される医学領域と言えます。高齢者医療は病院だけで完結するわけではなく、地域・在宅医療を含めて考えてゆく必要があります。そのため、高齢者の病気を診ることはもちろん、他の医療スタッフとの協働、福祉との連携、さらには高齢者の取り巻く社会システムなどにも配慮できる多くのスキルを持った医師の存在が欠かせません。
研究においては未開拓の領域が数多く存在し、当研究室においても社会貢献に値する研究テーマがあります。他の診療科出身者で高齢者医療に対応できる経験を積むことを目指ている医師がいることからもわかるように、あらゆる診療科、また地域医療の課題解決につながる能力が身につく診療科です。

研究室について

名古屋大学老年科学教室は1979年に故・葛谷文男を初代教授として開講され、高齢者医療・老年医学領域を専門分野とする教室として、極めて長い歴史を持ちます。1993年より2007年まで井口昭久が第二代教授として着任していました。 当教室は中部地方に開設された最初の老年科学講座で、開講後多くの優れた臨床家・研究者を輩出しています。
2011年4月、以前の老年科学教室と在宅管理医療部が統合し、地域在宅医療学・老年科学分野として、第三代教授に葛谷雅文が着任し、現在わが国における 老年医学の中枢として超高齢社会を見据えた臨床・研究、さらには他の医療機関との協同による在宅医療モデルの構築などを展開中しています。
「地域包括ケアに見合った人材育成(多臓器疾患を抱える高齢者の総合診療、在宅医療、 認知症など)、多職種連携のリーダーシップを発揮する医師、超高齢社会に伴う医療ニーズの変化に対応でき今後の高齢者医療を開拓できる研究者の養成を目指しています。

教授メッセージ

日本が抱える高齢者医療という課題に対して、研究・臨床の両面から、アプローチしていく。葛谷雅文 教授


健康寿命の延伸につながる医療を追究し、より良い社会環境をつくる使命がある。

世界でも稀にみる高齢社会となる日本において、最も求められている高齢者医療・老年医学。これこそが、「地域在宅医療学 老年科学教室」が取り組んでいる領域です。健康寿命の延伸につながる医療の追究と、その根拠を基盤とする社会環境の構築こそが、我々に課せられた使命であると考えています。
当教室が産声を上げた1979年当時は動脈硬化の研究の必要性が叫ばれていた時代です。その後、当教室では、糖尿病をはじめ、認知症、栄養障害、サルコペニア・フレイルなど、様々な疾病、老年症候群が社会問題になることを予測し、研究領域を広げてきました。また「地域在宅医療」にもいち早く着目しており、現在は「地域包括ケアシステム」の構築に向けて、地域中核病院や開業医などと協力して、より良いシステムについても研究しています。


高齢者特有の医療・生活環境が、老年内科ならではの独自性を生んでいる。

高齢者医療は多くの点で一般成人に対する医療と異なる点があります。疾患に関しては、多臓器にわたる疾患が認められ、症状が非定型的であり、機能障害につながる場合が多いなど高齢者特有の特徴があり、診療に際しては横断的かつ包括的な医療が求められます。既に回復不能な身体機能障害、認知機能障害を持つケースも多く、それらの高齢者は明らかに人生の終末に近く、成人と同様の医療を行うことは困難な場合もあります。また、病気の治癒を目的とすることで、他の機能に悪影響を及ぼし、結果として健康寿命を縮めてしまうことを避けることも、老年内科として重要視すべき点であると考えています。つまり、特定病因論に基づく、原因が判れば病気は治癒できる、という「医療モデル」は、もはや無数の慢性疾患、加齢、環境、心理的な要素が合わさって構築される疾病、障害を抱える高齢者に対しては適応できないのです。その意味で老年医学および高齢者医療は独自の領域といえます。


社会貢献に値する研究テーマがあり、多臓器への理解などあらゆる診療科で必要となる能力が身につくため、その先進性と多様性を求め、色々なキャリアを持つ医師たちが集まっている。

当教室は地域が求めている高齢者医療の専門家を育成することも目標としています。高齢者医療の現場は急性期病院、リハビリテーション病床、地域包括ケア病床、慢性期病床、在宅医療、福祉施設と多岐にわたり、どの現場でも高齢者のことを知りぬいた医師が必要とされています。そのため様々な医療の現場で対応できるような高齢者医療の専門家を養成したいと思います。また、今後老年医学・地域在宅医療分野の研究を通じて高齢社会に貢献したいと希望している方には、それに十分対応できる研究テーマを当教室は持っており、期待に添える研究を指導いたします。この名古屋は、国立長寿医療研究センターが近隣にあることで、地理的なメリットがあることも、当教室の特長と言えます。
将来地域・在宅医療で高齢者医療を実践しようと考えている方、すでに他の診療科で臨床経験を積まれ、高齢者医療に対応できるスキルを身につけることを目的している方も、当教室で学ばれることを大いに歓迎いたします。高齢社会に広く貢献できる医師を世に送り出していくことは、私の使命であり、これから特に力を注いでゆきたいことでもあります。実際、研究室のメンバーも、徐々に増えてきました。ここにしかない老年医学を、ぜひ多くの方が学び、高齢社会をしっかり支える地域医療のリーダーとなっていただきたいと思います。

葛谷雅文 教授プロフィール

  • 昭和58年
  • 大阪医科大学卒業
  • 平成元年
  • 名古屋大学大学院医学系研究科(内科系老年医学)卒業
  • 平成3年
  • 米国国立老化研究所 研究員
  • 平成8年
  • 名古屋大学医学部附属病院(老年科) 助手
  • 平成11年
  • 同上 講師
  • 平成14年4月
  • 名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻発育・加齢医学講座(老年科学分野) 助教授
  • 平成15年4月
  • 名古屋大学医学部附属病院地域医療センター 副センター長 兼任
  • 平成17年11月
  • 名古屋大学医学部附属病院老年科診療科長
  • 平成18年1月
  • 名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻発育・加齢医学講座(老年科学分野) 特命教授
  • 平成19年4月
  • 名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻発育・加齢医学講座(老年科学分野) 准教授
  • 平成21年9月
  • 名古屋大学医学部附属病院NST委員長(兼任)
  • 平成23年4月
  • 名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻発育・加齢医学講座(地域在宅医療学・老年科学分野)教授
  • 平成25年4月
  • 名古屋大学医学部附属病院地域医療センター センター長(兼任)
  • 平成25年11月
  • 名古屋大学予防早期医療創成センター 教授(兼任)
  • 平成26年4月
  • 名古屋大学未来社会創造機構 教授
    名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻発育・加齢医学講座(地域在宅医療学・老年科学分野)教授(兼任)
  • 平成27年6月
  • 名古屋大学医学部附属病院地域連携・患者相談センター センター長(兼任)
    (名古屋大学医学部附属病院地域医療センターの改組並びに名称変更)
  • 平成28年4月
  • 名古屋大学未来社会創造機構 機構長補佐

専門分野 : 老年医学、栄養・代謝、サルコペニア、認知症、動脈硬化、地域在宅医療

  • 所属学会 :
  • 日本内科学会(認定医)、日本老年医学会(理事、専門医、指導医)、日本動脈硬化学会(理事、専門医)、
    日本在宅医学会(理事)、日本静脈経腸栄養学会(理事、指導医)、日本未病システム学会(理事)、
    日本血管生物医学会(評議員)、日本臨床栄養学会(理事)、日本循環器学会、日本認知症学会