神経軸索・糖鎖研究グループ

執筆者:坂元 一真 助教

「硫酸化糖鎖による神経回路再編制御機構解明」

 私たち大人の身体では、中枢神経軸索は一度切断をされると、二度と伸長・再生することはありません。 このため、例えば脊髄損傷の患者様は、車いすや寝たきりの生活を余儀なくされることになります。 このように、神経軸索の再生を不能にしているのが、コンドロイチン硫酸(CS)と呼ばれる糖鎖です。 私たちの研究グループでは、CSが神経細胞受容体PTPRσ(受容体型チロシンフォスファターゼの一つ)に結合し、Cortactinという分子を脱リン酸化することを明らかにしました。 Cortactinの脱リン酸化は、オートファジーと呼ばれる、神経軸索の伸長に必須の過程を阻害し、この結果、神経軸索先端部はDystrophic endballと呼ばれる異常球状構造へと変化し、神経軸索の再生が阻害されるのです(Sakamoto, Ozaki, Nat Chem Biol. 2019、図参照)。
実は、オートファジーの破綻は、アルツハイマー病などのシナプスにおいても観察されます。 したがって、私たちの研究成果は、様々な神経変性疾患の解明にも寄与する可能性があります。 また、ケラタン硫酸(KS)と呼ばれる別の糖鎖の神経損傷・神経変性における機能解析も行っています(PNAS 2017など)。
このように神経軸索・糖鎖研究グループでは、特に神経系における糖鎖・糖鎖受容体の作動機構を解明することを目指すとともに、脊髄損傷などに対する新たな治療法を模索しています。
コンドロイチン硫酸(CS)によるPTPRσの活性化により、オートファジーが阻害され、Dystrophic endballという異常球状構造が形成される。

参考文献

  1. Sakamoto K, Ozaki K, Ko YC, Tsai CF, Gong Y, Morozumi M, Ishikawa Y, Uchimura K, Nadanaka S, Kitagawa H, Zulueta ML, Bandaru A, Tamura J, Hung SC, Kadomatsu K. Glycan sulfation patterns define autophagy flux at axon tip via PTPRσ-cortactin axis.Nat Chem Biol. AOP: 6 May 2019 (2019). *equally contribution.
  2. Zhang Z, Takeda-Uchimura Y, Foyez T, Ohtake-Niimi S, Narentuya, Akatsu H, Nishitsuji K, Michikawa M, Wyss-Coray T, Kadomatsu K, Uchimura K. Deficiency of a sulfotransferase for sialic acid-modified glycans mitigates Alzheimer's pathology.PNAS. 4:E2947-E2954. (2017)
  3. Sakamoto K, Kadomatsu K. Mechanisms of axon regeneration: The significance of proteoglycans.Biochim Biophys Acta. 861:2435-2441. (2017)
  4. Kadomatsu K, Sakamoto K. Mechanisms of axon regeneration and its inhibition: roles of sulfated glycans.Arch Biochem Biophys. 558:36-41. (2014).
  5. Kadomatsu K, Sakamoto K.Sulfated glycans in network rewiring and plasticity after neuronal injuries. Neurosci Res. 78:50-4. (2014).