名古屋大学大学院 医学系研究科 機能構築医学専攻 機能組織学

English

教室紹介

教室代表からの挨拶

木山博資
教授 木山博資 (Hiroshi Kiyama)
2014年4月 挨拶
平成23年4月1日に木山が着任してから3年立ちました。3度目のラボの引っ越しでしたが、やはり引っ越しは何度やっても大変でした。研究のペースがどうしても一旦落ちてしまいます。動物の移動や各種の承認のための書類はやはり時間がかかります。今年は引っ越しによる影響からようやく抜け出る年がやって来たと思っています。桐生のグループが中心にやっているATF3プロモーターを利用したTgがうまく作動しはじめ、損傷神経特異的にミトコンドリアを蛍光標識しCreを発現させることが可能になりました。これにより、さまざまなFloxed遺伝子を神経損傷ニューロン特異的に欠損させることが可能になり、20年来続けて来ている神経再生分子メカニズムの解明にとって大変有効なツールを手に入れることができました。分子からオルガネラの動態へと研究を展開したいと思っております。また、小西のグループもミクログリアに発現する免疫系分子の新たな機能をいくつか捕まえており、その実証を急いでいます。加えてミクログリアのablationができるようになり、今年は大きく仕事が発展すると信じております。安井らが中心になっている、慢性ストレスの生体に及ぼす各種の影響とその分子メカニズムについても、慢性疲労症候群や線維筋痛症の疼痛の原因がミクログリアにあることなどが明らかになり、今年はさらに面白い論文が出せそうです。
学会関係では、2013年3月から神経化学会の理事長を拝命し、学会運営の仕事の責任も重くなりました。同時に昨年は京都で開催されたNeuro2013(第56回日本神経化学会大会)の共同大会長として6月末までは忙しく結構大変でした。大会は成功裏に終わりほっとしています。学会ついでですが、2015年には日本自律神経学会の大会長を努めることになり、この準備も始まっております。雑誌編集については、J Neurochemistry (JNC) のハンドリングエディターを昨年末ようやく卒業しました。JNCのエディターは結構忙しかったのですが、振り返れば13年も続けてしまいました。通常10年以内で引退のようですが、少々長すぎたと思っています。やめることが決まったとたんに、脳内のセロトニン局在で著明なHarry SteinbuchからJ Chemical Neuroanatomyのエディターのお誘いがありました。こちらは査読のペースも其れ程多くなく、また神経解剖の形態論文がほとんどなので、丁度良い仕事量かと思っています。
教室の社会貢献として重要な位置づけにある解剖トレーニングセミナーも教室の安井や浅野の尽力により、ここ3年無事に続けることができ、全国の多くの解剖学担当教員の方と真夏の暑い名古屋での熱気みなぎる1週間を楽しく過ごさせて頂くとともに、多くの解剖系教員の方と親睦を深めさせていただいております。本年、このトレーニングセミナーは日本篤志献体協会から「篤志献体賞」を受賞いたしました。これは、杉浦名誉教授はじめ先輩の諸先生方が30年以上にわたり全国の解剖学教育の向上に貢献され続けたことが高く評価されたもので、大変嬉しい受賞でした。

機能組織学/第二解剖学教室の沿革

解剖学教室の沿革をたどれば、明治4年の名古屋落仮医学校設立まで遡る
大正6年浅井猛郎教授の就任によって第一講座が開設
大正8年佐藤尾一教授が第二講座開設
昭和6年、国立名古屋医科大学となる
昭和7年戸苅近太郎教授が就任

戸苅教授の研究は、卵巣、黄体の組織発生や甲状 腺、上皮小体、副腎、胸腺など諸内分泌腺の組織発生および生後発育にわたる広範なものであり、杉山鉦一(元第一講座教授)、原淳(元第二講座教授)、伊藤 隆(北海道大学名誉教授)、山田和順(名古屋市立大学名誉教授)、永津郁子(前藤田保健衛生大学教授)、星野洗(元第二講座教授)ら多くの人材を育て た。昭和28年に上梓された戸苅近太郎著・組織学(南山堂)は本学での講義実習から生れた教科書である。その後改定が重ねられ、伊藤隆(北海道大学名誉教授)に引き継がれている。

昭和35年、原淳教授が着任し、上皮小体の機能的構造の研究を進めた
昭和46年、原教授定年退官後10年の間教授空席
昭和56年から平成8年まで星野洸教授が担当
平成8年、杉浦康夫教授が着任し、疼痛メカニズム解明の研究を進めた
平成12年に大学院重点化に伴って講座名が改称され、機能組織学となる
平成22年、杉浦康夫教授定年退任
平成23年、木山博資教授が着任

研究内容

(1)神経再生メカニズムの解析

(i)神経再生関連遺伝子探索

神経再生のメカニズムを解明し、損傷神経の再生や神経変性疾患の進行抑制への応用を目指しています。末梢神経は再生しますが、中枢神経は再生しにくいとされています。そこで、再生可能な末梢神経の損傷モデル動物を用いて、その再生現象の全貌の解明を目指します。各種のゲノミクスやプロテオミクスのスクリーニングの手法を用い、今までに既知・未知の数多くの分子が神経損傷後に発現し、様々な機能を発揮していることを明らかにしました。これらのスクリーニングで得られたパーツ(分子)を組み合わせてゆくことで、神経再生の様子が徐々に浮かび上がってきつつあります。

(ii)遺伝子発現の統御機構

実際に損傷を受けた神経細胞が再生する過程では、実に多くの分子が複雑な相互作用をして再生へ向かいます。損傷刺激に応答して多くの遺伝子が同期して発現を開始します。したがって、このような複数の神経再生関連遺伝子の発現をまとめて制御しているメカニズムが生体にあるに違いありません。いわば、神経再生の最初のスイッチを入れる遺伝子です。また、これとは別に神経再生に必要な複数の発現を通常OFFにしている逆のスイッチ(mi-RNAなど)の存在も分ってきています。このような神経再生に関わる起動スイッチやOFFスイッチ分子の発現を制御できれば、効率よく神経を再生へ向かわせることができます。現在までに、いくつかの神経損傷特異的な転写因子(スイッチ)や、それらのスイッチをOFFにしているmi-RNAを同定しており、この辺りのメカニズムを応用し治療へとつなげて行きたいと考えています。また、それらスイッチ遺伝子の発現特性を活かし、神経細胞が損傷を受けた時にのみ神経細胞が蛍光標識されるマウスや損傷神経細胞特異的にCreリコンビナーゼが発現するマウスを作成しています。これらのマウスは、個体レベルでの再生研究に非常に有効なツールになると期待しています。

(iii)神経−グリア相互作用

最近、神経細胞に異常がなくともその周辺のグリア細胞に異常が生じることにより神経細胞が変性に至ることが知られ、神経細胞非自律的な、周辺の環境に依存する神経細胞死が起こることが明らかになりました。神経損傷後の修復過程においてもミクログリアやシュワン細胞など多くのグリアとのインタラクションがダイナミックに展開されます。特にミクログリアは形態変化をしながら脳内を移動し、多くの免疫系のメディエータ分子を発現していることから、その機能の解明が急がれます。このようにグリア−神経の相互作用を分子レベルで理解することをめざしています。これらは、損傷神経の修復のみならず、孤発性の神経変性疾患の原因解明や治療法につながる研究であると位置づけています。

(2)異常疼痛発症メカニズムの解析

神経障害性疼痛モデルマウスと後述の慢性ストレスモデルラットを用い、異常疼痛発生のメカニズムを研究しています。これらのモデル動物では、感覚伝導路である脊髄後角でミクログリアやアストロサイトが活性化することが分かっており、前述の神経-グリア間の相互作用が、この場合でも重要であると考えられます。それらのグリア細胞が活性化するメカニズムと活性化したグリア細胞が疼痛を引き起こすメカニズムについて分子レベルで解析しています。

(3)慢性ストレスや疲労を科学する

機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome)には慢性疲労症候群や線維筋痛症など多くの症候群が含まれますが、それらの原因はまだ分っていません。しかし、過度の疲労やストレスがこれらの疾患となんらかの関連が有ると考えられています。特に睡眠障害、過度の疲労感、疼痛が共通した症状として現れます。このような症状は生体内のいかなる変化により起こっているかを研究しています。ラットの慢性ストレスモデルを用い、神経系(脳と脊髄)、内分泌系(下垂体や副腎など)、免疫系(胸腺や脾臓など)、循環器系(心臓など)の臓器において、慢性ストレス時にどのような遺伝子の発現が変化しているかを解析しています。また、その変化により何が生体で起っているのかを研究しています。最近、下垂体の一部で細胞が崩壊していることをはじめ免疫系や内分泌系の器質的変化が生じていることを発見し、これらが脳を起点として生じていることが見えてきました。すなわち慢性的なストレスは、脳に影響を及ぼしそれにより神経・免疫・内分泌系の変調が生じているのではないかと考えています。これらの原因から症状に至る過程を分子の言葉で説明できるように研究を進めています。

Page Top