Nagoya University Graduate School of Medicine

EBV09

 EBウイルス関連疾患におけるウイルス感染細胞の
定量・同定に関する研究

実施計画書

研究代表者/研究事務局

木村 宏
名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学部門
〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地
TEL: 052-744-2207
FAX: 052-744-2452
E-mail: hkimura@med.nagoya-u.ac.jp

測定事務局
伊藤嘉規
  名古屋大学大学院医学系研究科小児科
〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地
TEL: 052-744-2294
FAX: 052-744-2974
E-mail: yoshi-i@med.nagoya-u.ac.jp

2009年2月16日 計画書第1版作成
2009年3月10日 計画書第2版作
2009年4月8日 計画書第3版作成


0. .概要
   
0.1. 目的
 Epstein-Barr virus (EBV)は、B細胞のみならずT細胞、NK細胞に感染し、伝染性単核症、慢性活動性EBV感染症、悪性リンパ腫・白血病を初めとする様々な疾患の原因となる。EBV関連疾患の診断・発症病理の解明には、末梢血中の感染細胞数の定量に加え、EBVが感染している細胞の同定が必須である。近年、我々はflow cytometric in situ hybridization (FISH)法を用いたEBV感染細胞の迅速定量・同定法を開発した。本研究ではこのFISH法がEBV関連疾患の非侵襲的診断法として有用かどうかを検証し、さらにEBV関連疾患の発症病理の解明に役立てることを目的としている。

 
0.2. 対象
1) EBV関連疾患が臨床的に疑われる、あるいは確定診断されている患者。
2) 末梢血中などにEBV感染細胞が一定量存在することが確認されている。
3) 試験参加について患者本人もしくは保護者から文書で同意が得られている。

0.3. 検索
被験者より末梢血を10mL採取する。検体は名古屋大学大学院小児科学 (伊藤嘉規助教)に集められ、小児科およびウイルス学で感染細胞の同定を行う。測定結果は研究代表者を通じて、担当医、施設研究者に知らされる。

0.4. 予定登録数と研究期間
予定登録数:100例。
登録期間/研究期間:5年

0.5. 問い合わせ先

研究代表者
木村 宏
名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学部門
      〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地
       TEL: 052-744-2207
       FAX: 052-744-2452
   E-mail: hkimura@med.nagoya-u.ac.jp

1. 目的
 Epstein-Barr virus (EBV)は、B細胞のみならずT細胞、NK細胞に感染し、伝染性単核症、慢性活動性EBV感染症、悪性リンパ腫・白血病を初めとする様々な疾患の原因となる。EBV関連疾患の診断・発症病理の解明には、末梢血中の感染細胞数の定量に加え、EBVが感染している細胞の同定が必須である。近年、我々はflow cytometric in situ hybridization (FISH)法を用いたEBV感染細胞の同定法を開発した。本研究ではこのFISH法が、EBV関連疾患の非侵襲的診断法として有用かどうかを検証し、さらにEBV関連疾患の発症病理の解明に役立てることを目的としている。

2. 背景と試験計画の根拠
2.1. 背景
 EBVはB細胞のみならず、T細胞、NK細胞などのリンパ球に感染し、伝染性単核症、血球貪食症候群、慢性活動性EBV感染症や鼻性NKリンパ腫、EBV関連Tリンパ腫、NK白血病、移植後リンパ増殖症など、様々なリンパ増殖性疾患/悪性リンパ腫の原因となる1,2)。近年では、蚊刺過敏症や種痘様水疱症という、一見皮膚に限局した疾患もEBV関連疾患であり、高率に悪性リンパ腫へと進展することも明らかとなっている。これらのEBV関連疾患は、その発症病理が不明で診断定義も定まっていないものも多く、それがために治療法も確立していない。

 これらEBV関連リンパ増殖性疾患の診断・発症病理の解明には、末梢血中の感染細胞数の定量に加え、EBVが感染している細胞の同定が必須である3)。病理組織では、感染細胞核内で多量に発現しているEBV encoded small RNA (EBER) をin situ hybridization 法により検出する感染細胞同定法が確立されている。しかし、血液を用いた非侵襲的な感染細胞同定法はなく、その開発が望まれていた。我々は、リアルタイムPCR法によるEBV DNA定量法を確立し、EBV関連疾患の診断法・治療モニタリングに臨床応用してきた4,5)。更に、末梢血を磁気ビーズ法により分画しそれぞれの分画をEBV DNA定量を行うことで、EBV感染細胞を同定する方法を確立し、EBV関連疾患の病態解析に応用してきた6,7)。しかし、これらの方法は手技が煩雑である上に、間接的であり、正確な感染細胞の同定は難しかった。

 Peptide nucleic acid (PNA) は、glycine骨格が塩基に共有結合した構造をとり、DNA・RNA プローブより安定で、核酸にhybridizationできる。我々はPNA をプローブとして用いin situ hybridization法と、flow cytometryを組み合わせ、末梢血中のEBV感染細胞を検出できるflow cytometric in situ hybridization (FISH)法を開発した。同法によるEBV感染細胞定量・同定法については既に特許申請した8)。この方法を用いれば、末梢血中のEBV感染細胞を、簡便かつ非侵襲的に検出・定量できるばかりでなく、表面抗原との二重染色により、感染細胞の同定が可能となる9)。
 
 
2.2. 対象疾患
以下に掲げるEBV関連のリンパ増殖性疾患/悪性リンパ腫:
伝染性単核症、血球貪食症候群、慢性活動性EBV感染症、鼻性NKリンパ腫、EBV関連Tリンパ腫、NK白血病、加齢性EBV関連Bリンパ増殖性疾患、移植後リンパ増殖症など。

2.3. 本研究のデザイン、内容
EBV関連疾患が疑われるもしくはEBV関連疾患と確定診断された患者を対象とする。研究事務局では別項に示した適格基準に合致するかを判断し登録の是非を決める。担当医は、登録した患者より末梢血10mL(乳幼児の場合は5mL)を採取し、測定事務局へ送付する。末梢血中には解析に充分なEBV感染細胞が存在せず、骨髄中に存在することが判明している場合には骨髄液を用いる。患者の同意が得られた場合は、保存検体も受け付ける。検体との送付と共に、検体採取時の臨床データを登録シートにて収集する。末梢血/骨髄液から単核球を分離し、FISH法によりEBV感染細胞の定量ならびに表面抗原分析による感染細胞同定を行う。同時に、従来法である磁気ビーズ法/EBV DNA定量法(細胞を磁気ビーズ法により各分画に分けた後に、EBウイルスを定量して、感染細胞分画を推定する方法)を行い、結果を比較する。登録一年後に最終診断・転帰を確認する。FISH法により決定したEBV感染細胞の表面抗原形質と臨床データ・転帰を比較し、未だ完全には明らかとなっていないEBV関連疾患の病態の解明を目指す。

2.4. 試験参加に伴って予想される利益と危険(不利益)の要約
2.41. 予想される利益
 
 参加患者の確定診断がなされていない場合には、FISH法によりEBV感染細胞数と感染細胞を明らかにすることにより、EBV関連疾患診断の補助になる可能性がある。また病理組織新などにより診断がついている場合にも、同じ結果が得られれば診断を確認できるという意義がある。一方、本法の結果が信頼できるかどうかは、従来法との比較結果により明らかになるため、現時点は確定していない。

2.4.2. 予想される不利益
本試験に参加することに伴う患者の直接的な身体的負担は1回の採血のみであり、採血量も1回あたり5-10 mlであることから、日常診療の範囲内の身体的負担である。末梢血中には解析に充分なEBV感染細胞が存在せず、骨髄細胞を材料とする場合には骨髄穿刺が必要となるため、患者は相当の身体的負担を生じる。
FISH法のEBV関連疾患に対する診断意義・精度は確定していないため、担当医の判断によっては不必要な検査や治療を受け身体的・経済的不利益を被る可能性がある。これが、本試験に参加することで予想される不利益である。この対策として、FISH法のみでEBV関連疾患の診断はせず、病理組織診など他の検査などにより判断をすべきであることを本プロトコール中に記載し(5.3.)、登録時に担当医・施設研究者に注意を喚起することとした。
本試験は患者血液細胞の表面抗原蛋白とウイルスの核酸を染色・検出するもので、患者遺伝子を対象としていないため、遺伝情報漏洩の問題などの不利益は生じない。

2. 5. 本試験の意義
1) FISH法によるEBV感染細胞の定量・感染細胞同定が、従来法と同等あるいはそれ以上の精度を持つことを明らかにし、同法をEBV関連疾患の迅速・簡便な非侵襲的診断法として確立する。
2) FISH法により、EBV感染細胞の表面抗原形質と臨床経過・症状・検査所見・予後を比較することにより、EBV関連疾患の発症病理の解明および新たな疾患分類の確立を目指す。

3. 患者選択規準
以下の適格規準すべてを満たす患者を登録適格例とする。

1) 対象疾患に掲げられたEBV関連疾患と診断されている、あるいは疑われている症例。
2) リアルタイムPCRなどで末梢血もしくは骨髄中にEBV感染細胞が増加していることが確認されている。
3) 参加について患者本人(20歳未満の場合は保護者)から文書で同意が得られた症例。

※ 年齢は問わない。EBV関連疾患は確定診断されている必要はない。
※ 骨髄穿刺を行う基準は以下のすべてを満たした場合とする、1)末梢血中には解析に充分なEBV感染細胞が存在しない、2)骨髄中にEBV感染細胞が存在する、3)診断および治療効果判定のために骨髄検査が必要、4)骨髄穿刺に関する患者の同意が得られている。

4. 登録
4.1.登録の手順
対象患者が適格規準をすべて満たすことを確認したら、以下の研究事務局に登録を申し出る。
  研究事務局:
       木村 宏
名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学部門
       〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地
       TEL: 052-744-2207
       FAX: 052-744-2452
       E-mail: hkimura@med.nagoya-u.ac.jp
       平日 9〜17時(祝祭日、土曜・日曜は受け付けず、翌working day扱いとなる)

4.2.登録に際しての注意事項
研究事務局で適格性が確認された後に症例番号が発行される。登録されると「登録確認通知FAX」が研究事務局から担当医もしくは施設研究者に送付されるので、保管すること。
一度登録された患者は登録取り消し(データベースから抹消)はなされない。重複登録の場合は、いかなる場合も初回の登録情報(症例番号)を採用する。

5.EBV感染細胞同定方法

5.1 検体取り扱い
 
 検体採取前に、測定事務局まで、検体の受け取りが可能かどうかをE-mailで確認すること。
 末梢血 10mLをEDTAスピッツに採取する。乳幼児の場合は、採血が困難なこと、循環血液量が少ない反面、末梢血中のリンパ球の比率が高いことを鑑み、5mLとする。ヘパリン入りのスピッツはヘパリンが測定に影響するため、必ずEDTA入りのスピッツを用いること。但し骨髄液は凝固しやすいため、ヘパリンを入れた注射器を用い1mLを採取する。必ずスピッツに移し変え、注射器のまま輸送しないこと。
 スピッツには登録番号、採血日を記入した紙ラベル(様式不問)を貼ること。患者氏名やイニシャル、カルテ番号を記載しないこと。
他施設から検体を搬送する場合には、室温のまま宅急便元払いで、採血から検体到着までが30時間以内となるよう、必ず採血当日に測定機関(名古屋大学)に発送する。遠心は不要、凍結不可。検体到着受付はAM 9時〜AM12時までの原則午前中とする。
 

※検体送付先
 測定事務局: 
伊藤嘉規
     名古屋大学大学院医学系研究科小児科学
       〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地
       TEL: 052-744-2294
       FAX: 052-744-2974
       E-mail: yoshi-i@med.nagoya-u.ac.jp

5.2. FISH法の検査方法

検体は単核球分離した後に、一部をFISH用によるEBV感染細胞の定量・同定に用いる。残りの一部は、磁気ビーズ法/定量PCR法による解析を行う。残余検体は、患者の同意が得られた場合を除いて、破棄する。

5.3. 検査結果報告

 測定事務局は解析結果を検体提出後14日以内に研究事務局へ報告する。研究事務局はその結果を施設研究者、担当医に転送する。
重要:施設研究者、担当医は本検索の結果のみでEBV関連疾患の診断はせず、病理組織診など他の検査などと合わせて総合的に判断すること。

6. 試験中止規準

以下のいずれかの場合、試験を中止する。
1) 原病の悪化などにより、測定用の採血が困難と判断される場合
2) 患者が測定の中止を申し出た場合

7. データ収集
7.1. 記録用紙の種類
専用の記録用紙(Case Report Form : CRF)を用いる。
登録時CRF、追跡調査時CRFの2種類。

7.2. 記録用紙の送付方法
登録後、研究事務局から背説研究者・担当医に登録時CRFを送付する。
登録時CRFは、検体と同時に測定事務局に返送する。
追跡調査CRFは登録1年後に研究事務局より郵送したものを、返送する。
7.3. 登録時データ内容
 以下に示す症例の臨床データを収集する。
年齢、性、発症年月、家族歴、既往歴、主たる症状、Performance Status, 血液生化学所見(WBC, 抗中球数, リンパ球数, 単球数、異型リンパ球数、RBC, Ht, Hb, Platelet, TB, DB, Cr, TG, ALT, AST, LDH, CoE, IgG, IgA, IgM, IgE)、EBV関連抗体(VCA IgG, VCA IgA, VCA IgM, EA-DR IgG, EA-DR IgA, EA-DR IgM, EBNA)、EBV DNA量、EBVクローナリティ、TCR/Ig遺伝子再構成、末梢血もしくは骨髄液のフローサイトメトリー結果、病理組織診断結果(EBER染色を含む)、染色体異常、画像検査(CT/MR)結果、先行治療の有無とその内容、診断名(暫定を含む)。
 なお、データに欠落があってもよい。後に結果が判明した場合には、CRFに記入後、測定事務局に郵送する。
7.4. 追跡調査データ内容

最終診断名とその根拠、行った治療、転帰

8. 統計的事項
8.1. 主たる解析と判断規準
本研究の主たる解析目標は、FISH法によるEBV感染細胞定量・同定法がEBV関連疾患診断法として有用かどうかを検証することである。まず、FISH法によるEBV感染細胞数と従来法であるEBV DNA定量値との相関をみる。また、FISH法により明らかになったEBV感染細胞の表面形質を、磁気ビーズ法/定量PCR法の結果と比較し、両者の一致率を求める。病理組織診の結果があるものについては、その結果を対照に、FISH法および磁気ビーズ法/定量PCR法のそれぞれについて、陽性/陰性診断率および一致率を求める。

8.2. 予定登録数・登録期間
予定登録数は100例とする。登録期間は5年とするが、予定登録数に達したら終了とする。

8.3. 副次的評価項目の解析
 本研究では、FISH法により得られた情報を元に、未だ完全には明らかとなっていないEBV関連疾患の病態の解明を目指している。
 CRFによって収集した症例の臨床データ(年齢、性、症状、血液生化学所見、EBV関連抗体価、TCR/Ig遺伝子再構成、病理組織診断結果、転帰など)を層化し、FISH法の結果との比較を行う。

9 測定にかかる費用
本研究で行われるFISH法およびEBV DNA定量は2009年2月現在でいかなる病名に対しても適応承認は得られていない。測定に要する実費は1検体当たり20000円程度と算定されるが、測定費用は文部科学省科学研究費などによりまかなわれる。
10. 倫理的事項
10.1. 患者の保護
本試験に関係するすべての研究者はヘルシンキ宣言に従って本試験を実施する。
10.2. インフォームドコンセント
10.2.1. 患者への説明
登録に先立って、担当医は患者本人に別紙の説明文書もしくは施設の機関審査委員会(Institutional Review Board;IRB)承認が得られた説明文書を渡し、以下の内容を口頭で説明する。
1) 研究の内容
2) 検査の内容
   回数と時期
3) 検査にかかる費用について
   測定にかかる費用は研究費でまかなわれること、健康被害が生じた場合の補償は一般診療での対処に準じて研究費からは支払われないこと
4) 研究参加に伴って予想される利益
5) 研究参加に伴って予想される不利益とその対策
6) 本試験で得られたデータを別の研究に二次利用する可能性について
7) 人権・プライバシーの保護
8) 同意しない場合でも不利益を受けないこと
9) 同意した後に、いつでもこれを撤回できること
10) 別途同意が得られた場合のみ、検体を将来の医学研究のために保管すること
11) 文書による同意・質問の自由
担当医の連絡先のみでなく、施設の研究責任者、試験の研究代表者(または登録事務局)の連絡先を文書で知らせ、試験や治療内容について自由に質問できることを説明する。
10.2.2. 同意
研究についての説明を行い、患者が研究の内容を十分理解したことを確認した上で、研究への参加について依頼する。患者本人が研究参加に同意した場合、付表の同意書または施設で定められた書式の本研究の同意書を用い、説明をした医師名、説明を受け同意した患者名、同意を得た日付を記載し、医師、患者各々が署名する。20歳未満の未成年者については親権者の代諾ともって同意とする。16歳以上20歳未満の場合は本人および親権者双方からの同意を得ることとする。同意文書は1部コピーし、1部は患者本人に手渡し、原本は担当医が保管する。
 骨髄穿刺を行う場合には、骨髄穿刺の方法・これに伴う危険・おこりうる合併症について説明を行った上で、研究の同意書とは別途の文書で同意を得る。説明書・同意書は各施設で用いているものを使用する(名古屋大学附属病院の場合には、特殊検査・処置の説明・同意書を用いる)。

11.3. プライバシーの保護と患者識別
登録患者の氏名は担当医および参加施設から研究事務局へ知らされることはない。
登録患者の同定や照会は、登録時に発行される登録番号を用いて行われる。患者名など、第三者が当該施設の職員やデータベースへの不正アクセスを介さずに直接患者を識別できる情報が、研究事務局のデータベースに登録されることはない。
 施設、研究事務局、測定事務局間の患者データのやりとりは緊急の場合を除いて郵送または直接手渡しによって行い、プライバシー保護を確保する。
11.4. プロトコールの遵守
本研究に参加する研究者は、患者の安全と人権を損なわない限りにおいて本研究実施計画書を遵守する。

12. 臨床研究に伴う被験者の健康被害に対する補償について

 臨床研究は細心の注意をもって行われるが、使用された臨床研究用治療薬或いはそれに関連する治療行為による副作用等により、万一健康被害が生じた場合に備え、名古屋大学医学部附属病院では補償制度を用意している。

1 本臨床研究に係わる補償制度の概要
(1)補償原則
@保険診療以外で実施される臨床研究に参加し、これによって健康被害が生じたと推定される場合は、臨床研究実施施設である名古屋大学医学部附属病院が補償をする。
A 臨床研究で使用される治療薬或はそれに関する治療行為は、新規性の高い治療で、かつ有効な治療方法が明らかでない疾患が対象となっているため、補償の内容は、臨床研究に起因して生じたとみられる健康被害に限られる。
B なお、本補償制度によることなく国立大学附属病院損害賠償責任保険の対象となる場合は、当該保険の補償を適用することとし、本補償制度は適用されない。

(2)補償の内容
@ 臨床研究に起因して副作用等の健康被害が生じた場合には、臨床研究実施施設である名古屋大学医学部附属病院が医療費を負担する。但し、治療に健康保険等を使用する場合は、保険給付分を除く自己負担分の医療費を負担する。
A 上記以外のもの、例えば差額ベッド代や休業補償金等の支払はできない。

2 補償とならない場合
(1) 補償責任の除外
@ 補償の対象となるのは、保険診療以外で実施される臨床研究に限られる。保険診療による臨床研究は補償の対象外となる。
A 臨床研究以外の原因に起因するとみられる健康障害、例えば、入院中の転倒にともなう骨折、給食による食中毒、通院途上での事故等(これらを機会原因という。)、臨床研究との因果関係が認められないものについては、補償の対象とならない。
B 健康障害の原因・因果関係が他に明確に説明出来るもの(原疾患の進行に伴う死亡など)、あるいは、今回の臨床研究と健康障害発現との時間的経過・その他の理由により関連性の推定が及ばないもの(臨床研究用治療薬を服用する以前から出ていた症状など)、その他当該健康障害が臨床研究に起因するとみることが不適切な場合は、補償の対象とならない。
(2) 補償責任の制限
@ 健康被害が生じていても、臨床研究との因果関係が推定できない場合には、補償の対象とはならない。
A 虚偽の申告或いは医師の指示に従わなかったなど、故意・過失が健康被害の発症に影響しているような場合には、補償の対象とはならず、あるいは補償の内容が制限される場合がある。
B 臨床研究自体が無効であったという効能不発揮の申し出については、補償の対象とはならない。

3 補償手続き
(1)被害の申し出
 副作用等の健康被害があったと思われる場合には、主治医或いは受診診療科又は総務課(052-744-2804)に申し出る。
(2)判定委員会
@ 因果関係の判定・補償の決定は、担当した医療従事者の意見を参考に臨床研究実施施設である名古屋大学医学部附属病院の判定委員会において行う。
A 判定委員会の判定に不服がある場合には、同意を得た上で、名古屋大学医学部附属病院の費用負担において、日本医事法学会会員等の中立的な第三者に判定委員を依頼し、この判定委員の意見を尊重する。
B 判定委員会の判断は、賠償責任請求問題には関与しないこととする。
C 判定委員会の判定及び補償に不服がある場合には、通常の民事訴訟等、民事責任ルールにより解決戴くことになる。その場合、支払済の補償は損害に填補される。
(3)その他留意事項
 医療費等を支払いする際には、口座番号を聞き、健康保険証の写し等必要書類を提出してもらう。
 このほか、補償に関し質問等がある場合には、主治医或いは受診診療科又は総務課(052-744-2804)に申し出る。

13研究組織
13.1. 研究代表者/研究事務局
木村 宏
名古屋大学大学院医学系研究科ウイルス学部門
〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地
TEL: 052-744-2207
FAX: 052-744-2452
E-mail: hkimura@med.nagoya-u.ac.jp

13.2. 測定事務局
伊藤 嘉規
名古屋大学大学院医学系研究科小児科学
〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65番地
TEL: 052-744-2294
FAX: 052-744-2974
E-mail: yoshi-i@med.nagoya-u.ac.jp

13..3. 参加施設
    本研究の趣旨に賛同し、本試験計画書の内容を熟知し、検体・CRFを送付できる施設が、本試験に参加できる。

14. 研究結果の発表
 主たる公表論文は最終解析終了後に英文誌に投稿する。
学会・論文発表の著者・発表者は、症例登録数、プロトコール作成、研究事務局、共同研究者など本研究への参加と貢献度を勘案して研究代表者が決定する。
すべての共著者は投稿前に論文内容をreviewし、発表内容に合意した者のみとする。内容に関して議論にても合意が得られない場合、研究代表者はその研究者を共著者に含めないことができる。
学会発表者は研究代表者が決定する。ただし、学会発表に際しては、発表準備および発表内容について研究事務局 /測定事務局が責任を持つ。研究事務局 /測定事務局以外の研究者であっても、自施設の症例に関しては自由に発表することができる。

14. 参考文献
1. Cohen JI. Epstein-Barr virus infection. N Engl J Med. 343:481-492, 2000.
2. Jaffe ES, Harris NL, Stein H, et al., eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. 4th ed, IARC Press, Lyon, 2008
3. Kimura H, Ito Y, Suzuki R, Nishiyama Y. Measuring Epstein-Barr virus (EBV) load: the significance and application for each EBV-associated disease. Rev Med Virol 18: 305ミ319, 2008.
4. Kimura H, Morita M, Yabuta Y, et al.: Quantitative analysis of Epstein-Barr virus load by using a real-time PCR assay. J Clin Microbiol. 37: 132-136, 1999
5. Hoshino Y, Kimura H, Tanaka N, Tsuge I, Kudo K, Horibe K, Kato K, Matsuyama T, Kikuta A, Kojima S, Morishima T. Prospective monitoring of the Epstein-Barr virus DNA by a real-time quantitative polymerase chain reaction after allogenic stem cell transplantation. Br J Haematol 115: 105-111, 2001
6. Kimura H, Hoshino Y, Kanegane H, Tsuge I, Okamura T, Kawa K, Morishima T. Clinical and virologic characteristics of chronic active Epstein-Barr virus infection. Blood 98: 280-286, 2001
7. Kimura H, Hoshino Y, Hara S, Sugaya N, Kawada J, Shibata Y, Kojima S, Nagasaka T, Kuzushima K, Morishima T. Differences between T cell-type and natural killer cell-type chronic active Epstein-Barr virus infection. J Infect Dis 191: 531-539, 2005
8. ウイルス感染細胞の検出・同定法及びキット(発明者;木村 宏、他1名)特願2008-073384
9. 木村 宏、山内洋平、後藤研誠、伊藤嘉規、西山幸廣Flow cytometry/in situ hybridization法を用いたEBV感染リンパ球の新規定量・同定法の確立と臨床応用. 第58回日本ウイルス学会総会、ワークショップ 岡山、2008. 10