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  • 第19回日本排尿機能学会

前立腺癌

前立腺癌とは

前立腺がんは、高齢化、食生活の変化。PSAの普及に伴って近年増加傾向にあります。その診断、治療法は最近数年で大きく変化してきています。
 前立腺がんは、一般的に進行の遅いがんであり、初期には症状がみられません。最近は検診で発見されることが多くなってきています。血液検査によるPSAの測定、直腸診、お尻からの超音波検査などでがんの疑いが生じた場合、針生検を行って確定診断します。針生検をいつ、どのように、どのような人を対象に行うかについては病院ごとに少し異なりますが、一般的にはPSAが4.0mg/ml以上が対象となります。針生検で前立腺がんと診断された場合は、CTや骨シンチという核医学検査で転移がないかどうかを診断します(ステージン検査)。これまでにわかった情報(PSA値、生検での悪性部分の割合、悪性の度合い、画像診断での病巣の広がり)を基にして適切な治療方針を決めていきます。また、針生検で異常がないと診断された場合でも、将来約20%の人で再度生検をしたときにがんが見つかるとも言われており、PSAによる定期的な検査が必要です。

主な治療法

早期前立腺がんの治療法は、無治療経過観察、手術、放射線治療、ホルモン治療に大きく分けられます。前立腺肥大症の手術で診断された小さながん、針生検で見つかったものの非常に小さなおとなしいがんは経過観察でよい場合もあります。治療が必要な段階で見つかった前立腺の中にとどまる限局がんに対しては、手術または放射線治療を選択します。年齢、進行度、合併症を考慮し、限局がんであっても薬による治療を行うこともあります。いずれの治療法も早期の低リスクがんに対して、現在高い治療成績をあげられるようになっています。
 これに対して進行、転移期前立腺がんに対しては主にホルモン治療が行われ、長期間がんを抑えることができる場合もありますが、薬が効かなくなって再発することもあります。いったん再発すると薬を変えても反応が悪く、また、効果が長続きしないため徐々に病気が進行し死に至る場合もあります。
 中年以上でPSA検査の数値が高い、オシッコが出にくい、身内に前立腺がんの人がいるといった方は専門医の診断を受けるようにお勧めします。

ダ・ヴィンチによるロボット支援前立腺がん手術

 名古屋大学医学部附属病院は、平成22年3月に、医療用手術ロボット「ダ・ヴィンチ」を導入し、泌尿器科では平成22年5月から前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を開始いたしました。
 ダ・ヴィンチは4本のアームで、腹腔鏡手術における内視鏡と手術鉗子の操作を行いますが、執刀医は患者さんから離れた位置にあるコンソールボックス(操縦席)で、内視鏡を介した術野のモニターを見ながら、手術鉗子の操作を行います。ダ・ヴィンチの鉗子の動きは非常に精密で、コンピューター制御により人間の手の繊細な動きを再現することができ、また、3次元の拡大視野で手術操作を行うことができることから、従来の腹腔鏡手術に比べて、より確実で精密な手術を行うことができます。
 すでに、アメリカで約1200台、ヨーロッパで約250台、韓国でも約30台のダ・ヴィンチが稼動し、ロボット手術は通常診療として行われており、特に前立腺がんに対しては、欧米では約80%がロボット手術により行われています。他方、日本では薬事承認が得られていなかったことにより、従来は国内に5台しかなく、実際の手術も高度医療として少数例が行われているのみでした。しかし、平成22年 11月に薬事承認が得られたことから、本院ではいち早く導入を決定し、同年5月から実際の手術を行っています。現在、泌尿器科においては、前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を週2例のペースで行っています。本邦では保険診療としてはまだ未承認のため、本院では、自費診療として行っており、おおよそ130万円前後の費用となっています。
 最先端医療テクノロジーと外科医の巧みの技を合体させて、質の高い、低侵襲手術を実現させるダ・ヴィンチは、外科領域における先進的医療開発の先駆的役割を果たしつつあります。ダ・ヴィンチの導入は、患者さんに質の高い、低侵襲手術を提供できるという点で非常に喜ばしいことであり、さらに本院としては日本におけるロボット手術の発展に貢献したいと思います。


名大病院泌尿器科におけるロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除(10分30秒)