がんについて

がんについて

人の体は数十兆個の「細胞」が絶妙にコントロールされて、成り立っています。しかしながら、時によってこのコントロールが効かなくなり、周りと無関係に増え続ける異常な細胞が出てきます。こうした異常細胞の塊を「腫瘍」と呼びます。

「良性腫瘍」「悪性腫瘍」とは

腫瘍には「良性」と「悪性」があります。

良性といっても、良い影響があるわけではなく、「悪くはない」といったところでしょうか。腫瘍は周りの細胞と関係なく増え、大きくなるので、体に悪い影響がでることもあるからです。

悪性に関しては、文字通り、悪い影響があります。この悪性の腫瘍のことを「がん」といいます。

良性腫瘍

悪性腫瘍(がん)

「良性腫瘍」「悪性腫瘍」の違い

では、良性と悪性の違いは何でしょう?簡単に比べてみます。

  良性腫瘍 悪性腫瘍
細胞が大きくなるとき 膨らむように大きくなる。 悪性では喰い込むように大きくなる(=浸潤する)。
大きくなる早さ 比較的緩やか。 比較的速やか。
離れた場所に飛んで、そこでも大きくなる(=転移する)こと ほとんど無い。 ある。
体から一度とってしまった後で、もう一度できてくる(=再発する)こと ほとんど無い。 ある。
全身への影響 ほとんど無い。 ある。

良性腫瘍のうち、よく知られたものには、おできや子宮筋腫などがあります。

がんはいろいろな臓器にできますが、我々の教室では主に消化器(食道・胃・大腸・膵臓・肝臓等)にできた「消化器がん」の治療を行っています。

消化器がんを治すには

手術風景

消化器がんのもっとも確実な治療法は「がんの切除」です。

簡単に言えば、がん細胞のすべてが身体から取り除かれれば、それはすなわち、がんが治ったということになります。ただ、この場合の「すべて」とは、目に見えない細胞のひとつひとつも含めてということです。そうなると、手術では肉眼で見えるものを切除する操作であり、手術の段階で「すべて」がとりきれたと言いきることはできません。手術できれいに取れましたと聞いて安心したのもつかの間、一定の確率で再発する場合があるのは、このような理由からです。一方、目に見えないがん細胞がもし本当に取り残されて体内に残っていれば、いつまでも目に見えないままで眠っていることはありません。

このような理由から、

  1. 手術できれいに取りきれた
  2. 手術後一定期間経過しても再発が確認できなかった

というふたつの条件を満たせば、がんが治ったと考えることができます。

がんが治ったと判断する期間

一定期間とはどの程度の期間のことを言うのでしょうか。

たとえば胃がんの場合、定期的な検査をしておりますと、再発の50%は1年以内、85%は3年以内に起きてきます。5年以上経過して再発が見つかることはきわめて稀なので、5年目の定期検査で異常が見つからなければ治ったと考えるのが普通です。

ただし、術後5年以上経ってから残った胃や大腸に同じようにがんが出てくることはあり、この状態は再発ではなく、新しい病気です。胃がんや大腸がんに一度罹ったわけですから、体質的に、このような病気に罹りにくいとは言えません。むしろその逆かもしれません。こちらについては、術後5年以内に限らず、定期的な内視鏡検査が推奨されます。

がんの転移について

もともとのがん細胞が原発部位(腫瘍が最初にできたところ)から離れて体の他の部分に飛んで拡がると別の腫瘍を作るかもしれません。

こうした過程を転移と呼びます。転移して別の場所(肺・肝臓・骨など)にできた腫瘍は原発部位の腫瘍と同じタイプのがんです。例えば、もし大腸がんが肺に転移した場合、肺のがん細胞は実際には大腸がんのがん細胞です。その病気は肺にできた転移性大腸がんとなりますので、その抗がん剤等の治療は肺がんではなく大腸がんに準じて行います。

がんが体内に拡がる(浸潤する・転移する)方法は以下のような場合があります。

  • がんが周囲の正常組織(血管・腸・膀胱・子宮など)に喰いこむように大きくなる場合があります。直接浸潤と呼びます。
  • もとのがんの塊からおなかの中に細胞が直接ばら撒かれ、おなかの中の内臓の表面やおなかの壁の裏側(腹膜)にとりつきます。播種性転移(腹膜転移)と呼びます。
  • リンパ液にがん細胞が入り、体の他の部分のリンパ節に転移を作ります。リンパ行性転移と呼びます。
  • 血液中にがん細胞が入り、体内の他の部分(肺・肝臓・骨・脳など)に流れてそこで定着し発育します。血行性転移と呼びます。

がんといってもその進行度(浸潤・転移の有無)によって治癒の可能性(予後)と治療法の選択が変わります。浸潤があればがんと一緒に確実にとりきれるかどうか、また肺や肝臓や骨などに転移があればもとのがんをいくらしっかりとりきっても、がんを治すことはできないことになります。

手術に抗がん剤治療を追加したり、手術ではなく抗がん剤治療を行ったほうが良い場合もあります。ですから浸潤の程度や転移の有無を手術前にはっきりさせて治療方針を決めることがとても重要になります。

大学病院の医療機器は最新の優れたものが多く、他の病院で行われた検査をもう一度やり直させていただき、進行度の更なる評価をお願いする場合があることをご了解ください。

がんの再発について

1981年以降、日本では脳卒中を超え「がん」が死因の第一位となり、最近では約3人に1人が「がん」で亡くなられています。がんが悪性と言われる理由のひとつは、がんが転移・再発するからです。

がん治療の基本は、手術でがん細胞をしっかりとりきってしまうことです。手術によりがんが完全に切除できたと言われると、患者さんの多くはがんが治ったと思われますが、がんが他の病気(例えば外傷など)と異なるのは、手術がうまくいったと思っても何割かの人は数年後に再発する危険性が残っていることです。うまくいったのは、がん細胞が「肉眼的に切除できた」ということで、実際には、肉眼では見えないがんが残っていたり、すでに全身に散らばっている可能性があるからです。つまり目にみえるほど大きくなった時点では目に見えないレベルですでに他の場所に転移していることがあるため、手術によってがんを取り除いても再発する可能性があるのです。

がんの治療を受けた後には、「再発の予防」と「再発の早期発見」が重要です。担当医とよく相談し、術後補助化学療法を受けたり、がんの術後は必ず定期的にCT検査等で再発の有無を確認する必要があります。再発の発見が遅れた場合、その多くは全身にがんが拡がっており、手術ではとりきれない状況であることがほとんどです。なるべく早期に発見し、完全かつ安全に切除できると判断された場合は手術を考慮し、完全には切除できないと判断された場合も早期に抗がん剤治療を開始してその効果を期待することになります。

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