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□■■PTCSの手引き■石の巻■■■■
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■■□■■■器官調節外科■神谷順一■■
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◆設定

 症例は総胆管結石とします。2cmくらいの石が4、5個あります。胃癌による胃全摘術後です。内視鏡的に十二指腸からアプローチすることはできません。そういう症例です。
 胆嚢は摘出されていません。胆嚢には結石はありません。閉塞性黄疸で発症しPTBDを受けました。胃癌は再発していません。
 PTBDはB2+3に施行されています。PTCSで切石することにしまして、瘻孔は15Fまで拡張してあります。減黄は良好です。発熱もありません。
 肝内胆管の合流形態に大きな変異はありません。B4はB2+3に合流し、右後枝は門脈右枝の頭側を走行しています。胆嚢管の合流部位も通常です。
 こんなところでしょう。例によって設定をはみ出しているところがあります。気にしないでください。

◆基本戦略

●だらだら続けない
 胆石症に対するPTCSは一回で完了となることはまれです。ほとんどは何度も施行することになります。一回の時間は90分以内、といったルールを決めておきましょう。患者さんにも宣言します。そして公約を実行しましょう。時間になったら終わります。
 終了時間の見込みを伝えないで延々と続けてはいけません。PTCSが拷問になってしまいます。

●1回目は診断
 1回目のPTCSでは切石は行いません。胆管解剖の把握と結石や胆管粘膜の精査を行います。これだけでも1時間近くかかります。じっくりいきましょう。
 胆管解剖の把握とは、肝内胆管も調べておくということです。胆道鏡で肝内胆管を観察しながら胆管造影をします。撮影は仰臥位だけではいけません。右葉の肝内胆管を調べるなら左前斜位と右側臥位が必須です。左葉をねらうなら右前斜位と左側臥位を活用します。
 胆石症でも顆粒状粘膜や乳頭状粘膜が観察されることは多いです。直視下生検を行い、診断を確定させます。いままでのところ、胆道鏡でみつけた顆粒状粘膜や乳頭状粘膜が癌だったという経験は胆石症ではありません。ですが、これからもないとはいえないでしょう。おや?と思ったら生検しましょう。

●PTCSが始まったら16F
 1回目のPTCSのあとカテーテルを16Fにします。以後も瘻孔の太さは16Fのままでいきます。18Fとか20Fにはしません。電気水圧砕石機(EHL)で結石を破砕できるのです。16Fで十分です。
 なぜ15Fでなくて16Fなんでしょうか?シリコンカテーテルを使いたいからです。15Fのシリコンカテーテルはありません。16Fのはあります。瘻孔が完成していると診断したら、留置カテーテルはシリコン製にします。シリコンカテーテルはいいですよ。柔らかくて違和感が少ないです。肉芽のでき方も穏やかな気がします。

●2回目から切石
 結石が瘻孔の径より小さければ、バスケットカテーテルで取り出します。結石が瘻孔径より大きな症例ではEHL使用を考慮してください。ただし、結石がビリルビンカルシウム石であれば、もろくて割れやすいこともあります。1回目の最後に胆道鏡の先端で石をつっついてみましょう。生検鉗子でかじってみてもいいです。敵を知るためです。
 もろい結石であれば大きくてもバスケットで切石できます。硬い結石と判明したらEHLで徹底的に破砕しましょう。

●週に2回
 PTCSは週に2回行います。患者さんが元気なら3回でもいいですよ。
 瘻孔が完成していて、発熱などの合併症がなければ、週末には外泊をすすめましょう。一時退院でもよいです。

◆細かい注意をいくつか

●造影では背骨をまっすぐに
 基本です。背骨が曲がったり体が斜めになったままではいけません。胆管のオリエンテーションで思い違いをしてしまう誘因になります。気持も落ち着きません。

●10ml注射器が造影剤で20mlが生理食塩水
 こう決めています。混乱しないための方策です。
 造影剤も生理食塩水も詰めるのは5割か6割にします。三方活栓に注射器を接続したら、まず吸引します。結石症例ではけっこう吸引できるのです。満杯だと困ってしまいます。

●ガウンを着ます
 PTCSではいろいろな器具を使います。不潔にならないようにガウンを着ましょう。
 砕石器を使うときは必須です。ガウンにプローブを固定するからです。プローブは右肩越しに術野に持ってきます。このときにプローブをガウンの肩にテープ固定するのです。そして先のほうは、使い始めるまで腹に鉗子で留めておきます。術者は自由に移動できなくなります。ですが、この方法が一番合理的な方法と思っています。

●糸の切り方
 PTCS終了時にはキシロカインは切れています。糸を取りきっているとかわいそうです。キシロカインを追加して針糸をかけることになります。PTCSは何回も行います。気の毒です。
 糸はナイロン糸を使っています(そのはずです)。糸のかかっている皮膚の状態が良好ならカテーテルを縛っているところだけ切り取ります。根っこから幹は残しておくのです。PTCSを終えてカテーテルを再挿入したら、根っこに糸を縛りつけます。その糸でカテーテルを固定するのです。

●吸引機構は使いません
 胆石症のときも使いません。胆管の中の胆汁や生理食塩水の量は10ml程度です。多い人で20mlです。消化管の消化液やガスと同じように吸引するとまずいことになります。重要な所見を見逃してしまいます。
 注射器で吸引しましょう。吸引の圧や量を調整しながら吸引してください。胆管を観察しながら吸引するのです。結石の破片が上流から流れてきたか、それとも下流から戻ってきたか、あるいは、結石や胆砂がどの枝から流出したか、といったことを確実に診断できます。
 吸引するときは、画面を見ながら注射器でゆっくり吸引しましょ。

◆準備

●予習しておきましょう
 PTCSの前には胆管造影像をじっくり見ておきましょう。石の大きさや数を診断します。PTBDがどこに入っているか、瘻孔はどのように走行しているか、ということもチェックしてください。
 瘻孔拡張の情報も大切ですね。カテーテル交換のたびに出血したとか、交換のあと発熱したとか。瘻孔拡張の術者とPTCSの術者が違う場合にはしっかり情報を収集しておくべきです。患者さんが痛みに敏感かどうかも大切な情報です。
 胆石症では瘻孔はたいていゆるいです。15Fになっていれば、まずCHF−P20は入ります。

●場所と機器
 PTCSは透視室でやります。胆道鏡はオリンパスCHF TYPE P20を使います。
 光源とビデオ装置を透視室に運び込みます。光源はオリンパスのものを使います。電気水圧砕石器を使う場合には、あらかじめ取り寄せておきます。
 透視室に、光源、ビデオ装置、透視モニターを正しく並べます。EHLは術者の背中に置きます。

●胆道造影を始めます
 ここまでやってから患者さんに入場してもらいます。まず胆道造影です。造影剤は薄めません。そのまま使います。
 カテーテルは逸脱してませんね。逸脱してなければ、抵抗なく造影剤を注入できることを確認します。抵抗があったら造影しません。肉芽が側孔にはまりこんでいます。消毒の後に固定糸をはずし、カテーテルを5mm引き抜きます。これで肉芽を側孔からはずします。造影はその後です。
 造影剤を抵抗なく注入できました。

●14枚法がやってありますか
 まだやってなかったら、ここでやっておきます。第一の目的は胆管解剖の診断です。第二は小結石が意外なところに隠れていないかチェックするためです。第三は切石後の造影像と比較するための「コントロール」を撮っておくためです。
 撮影がすんだら現像してもらいます。皮膚消毒をしたりしているうちに現像がすみます。写真上で結石の状態や胆管解剖、そしてカテーテルや瘻孔の状況をチェックしましょう。

●吐き気がくることも
 胆石症では、造影剤が十二指腸に流れ込みやすいです。患者さんによっては、胃に逆流して、そのためか吐き気が出現したりします。胃に造影剤が流れ込むのを見たら、吐き気がするかもしれません、と説明しておきましょう。
 こういう患者さんは検査前の食事を止める必要があります。造影剤が胃に流れ込んでも吐き気がこない人なら、食事を止める必要はありません。

●皮膚消毒カテーテル消毒と局所麻酔
 皮膚消毒の範囲はPTBDの時と同じです。広めにどうぞ。カテーテルも忘れずに消毒しましょう。
 そして局所麻酔です。

●患者さんに配慮を
 患者さんは検査着を着てPTCSを受けます。検査着は薄いです。しかも治療中は腹部を開いています。寒い季節には配慮が必要です。
 切石を目的としたPTCSでは、治療時間が1時間以上になります。通常PTCSは仰臥位で行います。柔らかいマットを敷くなどして背部や腰部が痛くならないように対応してください。症例によっては、PTCSによる切石を多数回施行しなければなりません。前回のPTCSで何が不快あるいは苦痛だったかを聞いてください。少しでも治療が楽になるように気を配ります。

●生理食塩水ルートの準備
 PTCSは生理食塩水を胆管に点滴注入しながら行います。生理食塩水のバッグの高さに注意してください。食塩水の液面が患者さんの前胸壁から20cmないし25cmになるようにします。これ以上高くすると、cholangiovenous refluxを生じる危険が増えます。
 結石症例では、食塩水は十二指腸に流れ込んで胆管内圧は高くならないかもしれません。でも、用心してください。食塩水がたくさん腸に流れ込むと、下痢を引き起こします。くれぐれも生理食塩水のバッグの高さに注意してください。

●生理食塩水はよくあふれます
まずは、瘻孔と胆道鏡のすきまです。15Fとか16Fでは漏れません。18F20Fの瘻孔では気をつけましょう。次は鉗子孔です。バスケットカテーテルとかEHLのプローブを使用している時によくあふれます。
 もれたり、あふれた生理食塩水は的確に処理しましょう。まずいのは気づかずに患者さんを水浸しにしてしまうことです。
 水浸し事故の多くは、生理食塩水のルートを胆道鏡からはずしたときに起こります。水が流れっぱなしになってしまうのです。三方活栓の栓をひねって水を止めるだけのことです。でも平常心を失っていると忘れてしまいます。
 ということで助手の仕事です。見張っててください。流れっぱなしなら止めてください。

◆胆道鏡挿入

●瘻孔が完成するまでは
 癌の巻で書いたのと同じです。ただし石では瘻孔が緩い場合が多いです。苦労することは少ないです。

●瘻孔が完成していたら
 ラジフォーカスは不要です。生理食塩水を少し注入してカテーテルを抜きます。瘻孔に空気が入らないようにするためです。そして胆道鏡を挿入します。モニター画面で瘻孔内面を観察しながらゆっくり送り込んでいきます。

●瘻孔状況のチェック
 カテーテルを抜く前に造影剤を多めに注入しておきます。ラジフォーカスを送り込んでカテーテルを抜去します。瘻孔に入り込んでくる造影剤を観察してください。腹腔内に流れ込んでいきませんか。大丈夫ですか。では大きく呼吸してもらいます。漏れていきませんか。肝内瘻孔と腹壁内瘻孔(胸壁内瘻孔)が分断されるようなことはないですか。
 これらのテストで大丈夫そうなら、たぶん完成しているでしょう。実際のところ瘻孔ができあがっているかどうか診断することは難しいです。PTBDが左肝内胆管に入っている症例なら、PTBDから3週経過していればまずOKです。右肝内胆管ですと3週ではまだ心配です。4週は待ちたいところです。

◆画像記録

●ビデオ録画
 基本的には見ている画像はすべて録画します。ビデオを撮らないと密室状態になります。思い込み状態に陥り、失敗しかねません。あとで患者さんや家族の人に見てもらうくらいのつもりでやりましょう。
 PTCSは数多い検査ではありません。過保護でちょうどいいのです。もちろん胆管造影中の白玉赤玉は撮らなくてもいいです。
 ここぞ、という所見を録画するときには、胆道鏡をゆっくり動かします。見てる人がいらいらするくらい、のろのろ動かしてください。録画したものを見直すと実感しますが、普通に胆道鏡を動かしている場面を見直すと目が回ります。
 光量の調節も大事です。撮りたい所見がうまく見えているかチェックしながら録画します。そのためのモニターです。ビリルビンカルシウム結石は光を吸収します。光量を最大にしなければうまく見えないでしょう。自動調光に頼ってはいけません。

●フィルム撮影
 フィルム撮影は二人目の助手が担当します。カメラやフィルムは不潔です。そのように対処してください。
 ひとつの構図で3枚撮ります。+1、±0、−1に条件を振って撮影するのです。フィルムは20コマです。6シーンと少し撮影できます。撮影前に作戦を立てておきましょう。

◆まずは観察

●左肝管から総胆管
 胆道鏡先端はB2+3にあるはずです。そのまま胆道鏡を押し込んでいきます。総肝管に入ると褐色の結石が見えるはずです。挨拶がわりに胆道鏡の先端で結石をこづいてください。硬さが分かります。けっこう殻がはがれたりします。案外もろくて壊れるかもしれません。まれですが。
 結石が胆管に接触する部位やカテーテルが胆管を押しつけていたところに注目してください。顆粒状粘膜を見ることが多いです。気になったら生検しておきましょう。
 総肝管の背側を右肝動脈が走行します。胆道鏡的には、なだらかな拍動性のひだが右肝動脈です。胆嚢管は胆汁の出入りする陥凹です。開口部を孔として確認できる症例は多くはありません。
 胆石症では総肝管や総胆管で太い血管が透けて見えることが多いです。これは静脈のはずです。両脇に細い動脈が伴走していたりします。癌ではこういう血管が見えることは少ないです。理由はわかりません。石に青筋を立てているのでしょうか。
 
●結石はビリルビンカルシウム石のはずです
 なぜか結石は割れていることが多いです。割面を見てください。層状構造がありますか。ビリルビンカルシウム石の所見です。ときどき層状構造に放射状構造が混じっていることがあります。混合石です。こういうのは硬いです。

●胆管末端を観察する
 胆管造影では結石と胆管壁の間に隙間がないことが多いです。でも胆道鏡を押し込んでみてください。どんどん進んでいきます。粘膜を観察しながら、胆管末端まで挿入してしまいましょう。
 たいていの症例で胆管末端に乳頭状粘膜を観察できます。収縮や弛緩の周期的な運動が見られるはずです。しばらく観察していると、結石の破片が流出していったりします。
 まれには胆管末端が開きっぱなしという症例があります。生理食塩水の注入をストップしてみてください。十二指腸液が逆流してきたりします。こういう症例では、機会を見て胆汁中アミラーゼをチェックしておくとよいでしょう。

●右肝管から右肝内胆管
 胆道鏡を浅くしてきます。そして右肝管に胆道鏡を送り込みます。透視画像を参考にした方がいいでしょう。結石の破片が紛れ込んでいませんか。念のため調べておきましょう。

◆切石だ(バスケットカテーテル編)

●まずバスケットカテーテルの点検
 バスケットカテーテルの腕はけっこう変形します。瘻孔より大きな石をつかんで、むりやり引っ張ったりするのがまずいようです。いびつに開くようになったりします。
 使う前に開いて真正面から形を確認します。正しく十字に開きますか。90度以上に開くところがあったら、石をつかむのは難しくなります。新品に交換したほうがいいでしょう。

●途中で泣かないために
 バスケットカテーテルによる切石では、胆道鏡を抜き取らなければなりません。結石をつかまえたまま胆道鏡ごと体の外まで引き抜くのです。
 瘻孔が完成されていないと身の毛がよだつ事態になります。胆道鏡を抜いた際に腹壁(あるいは胸壁)と肝臓の間で瘻孔が離断します。PTCS2回目の段階では、あらかじめラジフォーカスを瘻孔と胆道鏡の隙間から胆管まで送り込んでおきます。転ばぬ先の杖です。胆道鏡を抜去する時にはラジフォーカスを残してきます。こうしておけば瘻孔が離断しても安心です。胆道鏡やカテーテルを胆管に送り込めないという最悪の事態は回避できます。

●具体的には
 PTBDカテーテルからラジフォーカスを2本胆管に通します。そしてカテーテルを抜去します。一本のラジフォーカスを胆道鏡のチャンネルに入れて、胆道鏡を送り込みます。もう一本は胆道鏡の外に残します。16Fの瘻孔であれば、余分な抵抗はほとんどありません。瘻孔の内面を観察しながら胆道鏡を送り込んでください。たいていは瘻孔がしっかりできているはずです。
 結石をつかまえたら、胆道鏡を引き抜きます。ラジフォーカスが抜けてしまわないように注意してください。
 バスケットカテーテルから結石をとりのぞき、バスケットカテーテルを胆道鏡からはずします。今度はガイドワイヤーの助けなしで胆道鏡を瘻孔に送り込みます。うまく送り込めるようなら、3回目以降はラジフォーカスの助けは不要でしょう。

●石のつかみ方(その1)
 まずは基本から。基本は助手にバスケットカテーテルを閉じてもらうことです。4本の腕の間に石が入っていることを観察しながらゆっくり閉じてもらいます。バスケットは閉じると手前に引き込まれてきます。引き込まれた分、カテーテルを押し込んでください。そうしないと結石が近接しすぎて、腕が石にくいこむ様子が見えなくなりします。
 慣れていない助手には要注意です。力を入れすぎて結石を破砕してしまったりします。いいんですけどね。でも、なるべくならそのまま取りだしたいものです。大きいものを見せると、みんなが「おおっ」といってくれますし。
 助手の人もモニター画面を見ながら操作してください。腕が石にくいこむのが見えたらそれ以上閉じないようにします。

●シミュレーション
 試験管を用意します。そして豆とか消しゴムを4mm角に切ったものを中に入れます。これで胆管と結石のモデルができあがりました。試験管を横にします。
 さあ練習です。バスケットカテーテルで豆や消しゴムを取り出します。横からバスケットの動きを観察してください。閉じてくるとバスケットが手前に引き込まれます。その分カテーテルを押し込まないといけません。けっこうやっかいです。練習してください。
 豆や消しゴムが底にいると取れません。試験管を立てればてきめんです。これは示唆に富む所見として覚えてください。バスケットの中に石を取り込むには、それなりの作業場が必要なのです。

●石のつかみ方(その2)
 助手の人にはバスケットを開きっぱなしにしていてもらいます。
 石がバスケットに入ったら、バスケットカテーテル全体をゆっくり引き抜きます。胆道鏡のチャンネル出口でバスケットが締められて閉じていきます。この方法では腕がくいこむ様子は見えません。ですが手応えで分かります。
 利点はバスケットの閉じ具合を術者がコントロールできることです。快適です。そして、引き抜いてくるときに石がバスケットからはずれにくい、ような気がしています。石と胆道鏡が接しているためにひっかかりにくいのかな、と思っています。おすすめの方法です。

●胆道鏡の引き抜き方
 石をつかみました。胆道鏡をゆっくり抜いてきます。このときアングルレバーはフリーにします。指をかけていてはいけません。余分な力がかかって石がはずれやすくなります。そう信じています。
 右手でシャフトを持って引き抜きます。左手の人指し指でチャンネルの口から出ているバスケットカテーテルを抑えます。バスケットカテーテルもいっしょに抜くためです。
 抵抗があっても抜くしかありません。こういうときは石は出てきません。石が瘻孔の径より大きかったのです。EHLの使用を考えましょう。

●バスケットカテーテルを使いこなす
 太い胆管の中では結石をつかみやすいです。胆道鏡のアングル操作を使い、十分に広がったバスケットカテーテルの中に結石を追い込めばいいのです。
 胆管が狭いと、バスケットは一度の操作では開ききらないと思ってください。こういった状況では胆道鏡で観察しながら結石をつかむ、ということもできません。透視下で操作することになります。
 バスケットカテーテルを前後に動かします。透視画面を見てください。バスケットが開ききったと見たら、ゆっくり引いてきます。抵抗を感じたらつかんでいる可能性が高いです。引き抜いてきます。

●バスケットカテーテルをどう送り込むか
 いろいろな方法があります。
 開いた状態で石のいるところに送り込む方法。胆管が広く結石がふわふわ浮いている状態なら、この方法がいいでしょう。
 胆管壁と結石のあいだに隙間がない状態では、開いたバスケットを送り込むことはできません。閉じた状態で隙間に送り込み石を通り越したら開きます。開いたことを確認したら、ゆっくり引き抜いてきます。腕が石をとりかこんで現れたら成功です。
 隙間が狭くてバスケットが進まないことがあります。無理はいけません。患者さんを痛がらせてしまいます。バスケットを1cmくらい外に出してください。先端が柔らかい状態になります。ゆっくり送り込めば入っていくはずです。

●結石を手前にもってくる
 腕が石をとりかこんで現れたら成功です、と先ほどいいました。実のところ、4本の腕が隣り合って現れることのほうが多いです。何回やってもつかまらない。どうしましょう。
 胆道鏡を3,4cm引きます。そしてバスケットカテーテルで結石を手前にごしごしこすります。しばらくすると手前に浮いてきます。こうなったらしめたものです。バスケットが開きやすくなります。つかまえやすくなります。
 どうしても動かない、つかめないですか。EHLの出番ですね。

●バスケットカテーテルから注入できます
 ところでバスケットカテーテルの操作部には注入口がついています。ここから生理食塩水や造影剤を注入できます。活用してください。
 ただし使うのでした、あらかじめ生理食塩水を注入して空気を追い出しておいてください。

●細かいことですが
 バスケットカテーテルを使うときは、チャンネル孔から直接送り込みます。三方活栓ははずします。EHLで使うシースアダプターもはずします。バスケットカテーテルを動かしたときの手ごたえを感知したいからです。

◆切石だ(EHL編)

●一般的な注意
 EHLによる切石では、プローブによる胆管損傷を回避することが重要です。胆管を損傷すると、痛みと出血を引き起します。切石を続けることは不可能になります。
 基本は、胆管の中央でプローブと結石を接触させて通電スイッチを踏むことです。
 結石が1cm未満の大きさであれば単発の放電を選択します。1cm以上であれば連発放電で破砕といきましょう。プローブを結石に押しつけてはいけません。結石が割れたときにプローブが奥に進み、粘膜に接近する危険があります。プローブは結石に軽く接触させたままで放電を続けるのが、痛みや出血を引き起こさないコツです。
 EHLを使用すると放電に伴って、炸裂音が聞こえます。ほとんどの患者さんは腹部に軽い衝撃を感じます。あらかじめ結石を破砕する際に、音や衝撃があることを知らせておきましょう。

●シースアダプター
 EHLで切石を行うときは、シースアダプターと呼ばれるコネクターを使用します。これは血管造影で使用されるシースのバルブ部分を独立させたものです。胆道鏡のチャンネル部に直接接続して使用します。
 バルブが優れもので、生理食塩水を流しながらEHLプローブを通しても食塩水があふれません。食塩水をフラッシュしてもほとんどもれないのです。

●見えなくなったら洗浄
 結石破砕が進むと、破片や胆泥によって胆道鏡の視野が悪くなります。洗浄を繰り返して視野を確保してください。よく見えない状況で破砕を強行してはいけません。胆管損傷のリスクが高くなります。破片が十分取れないようなら、大きな側孔をあけた16Fのカテーテルに交換して洗浄します。ごっそり取れます。
 石の壊れ方には2種類あります。煙のような泥が出てくるのと、細かい破片になるだけ、という二つです。ビリルビンカルシウムが主成分だと煙が発生するんでしょう。コレステロール石では細片ができあがる、そう考えています。そうでした。コレステロールが含まれていると、小さくて薄い結晶がキラキラ舞うことが多いです。

●乳頭切開が必要ですと?
 EHLを使用すると大量の破片が形成されます。これを腸管に流出させるために、乳頭を切開したほうがよいとの意見があります。不要です。破片の多くはカテーテルを通って流出します。流出しないで胆管に残った破片はバスケットカテーテルで取り除けばよいのです。
 乳頭機能を温存できることがPTCSの利点なのです。そこを考えてください。

◆撤収

●カテーテル再挿入
 さあ終わりにしました。ドレナージカテーテルを留置しましょう。
 16Fシリコンを使います。瘻孔がしっかりしていないのでしたら、しかるべき太さの塩化ビニールのカテーテルを使います。
 皮膚への固定を忘れずに。

●光源とビデオ装置を戻し胆道鏡を洗浄
 お願いします。置きっぱなしにしてはいけません。
 胆道鏡は水道水でまず洗います。チャンネルの中は注射器で水を通します。吸引ボタンをはずしてじゃぶじゃぶやってください。アルコールでも洗います。そして洗浄器で洗います。
 終わったらホルマリンボックスに収納します。洗浄器に置き忘れないように。

●ビデオテープの整理、フィルムの整理
 検査が終わったらテープに患者さんの名前や検査日時を書き込みます。忘れるとどこかで誰かが不幸に会いますな。
 現像がすんだフィルムもしっかり整理しておきます。

●レポート作成
 専用の用紙が用意してあります。所見をしっかり記載してください。生検の部位も忘れずに記入してください。先人のものを参考にするとよいでしょう。用紙は複写式です。複写された方をカルテにはさみ込みます。オリジナルは、しかるべき引き出しに入れてください。
 同じ患者さんに何回もPTCSをやっていると、今回はまあいいか、となりがちです。気力を奮い起こしてください。効能もあります。胆管像を描くと新しい発見があるものです。内視鏡像を描いていると有効戦略を思いつくこともあります。レポートを作ることで頭の中をリフレッシュできるのです。

◆取りきったと診断したら

●もう一度
 切石が終了したと診断しても、もう一度確認のためのPTCSを行います。よくあるのです。なくなったはずの破片が見つかることが。肝内胆管に隠れていた破片が総肝管や総胆管に降りてくるのでしょうね。
 総胆管結石でも肝内胆管を精査しましょう。選択的胆管造影の際には、右前斜位、左前斜位だけでなく右側臥位や左側臥位といった体位も活用します。これらに頭前斜位を加えればさらに精密に探査できます。
 おまけです。肝内結石症では粘液が流出する開口部がないか、慎重に観察してください。粘液流出は結石存在を示す重要なサインです。

●細い胆管も無視しない
 細い胆管であっても陰影欠損の所見を見つけたら調べましょう。泡かもしれません。泡ではないかもしれません。放置はいけません。
 B1のように細い肝内胆管に対しては、胆道鏡を押しあてて造影する方法は不適当です。造影剤の量や圧を調節しにくいのです。洗い流すということもできません。
 チャンネルから造影カテーテルを送り込みます。ゆっくり生理食塩水あるいは造影剤を注入します。あふれてくるものを観察してください。泡が出てきましたか。破片でしたか。この方法にはcholangio-venous refluxを引き起こしにくいという利点もあります。

●残した破片は必ず再発結石の種になる?
 そうまでして徹底的に取り除きたいのはなぜか、と聞かれることがあります。小さな破片なんか落ちますよ、という意見です。
 実のところは分かりません。おそらく多くは十二指腸に流出するんでしょう。でも。なんらかの事情で落ちないのがいて、それが成長するかもしれません。そう心配してもいいのではないでしょうか。
 私たちの意見は、取れるんだから徹底的に取っておこう、です。

●PTBDカテーテルを抜去する
 石が残っていないことを1回ないし2回確認しました。では、いつPTBDカテーテルを抜去しましょうか。乳頭内圧検査、胆道シンチの適応がありますか。USの必要はありませんか。これらが済んでからにします。
 カテーテルを抜去すると瘻孔はすぐふさがります。ガーゼを3枚ほど当ててはおきましょう。でも、ほとんど汚れないはずです。歩いてもらってもかまいません。
 風呂は翌日からOKです。皮膚穿刺部が湯につかっても大丈夫です。