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■□□PTCSの手引き□癌の巻□□□□
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□□■□□□器官調節外科□神谷順一□□
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◆前置き

●お願い
 PTCSの手引きは「癌の巻」と「石の巻」に分けました。癌と石では作法がずいぶん違うからです。PTCSの手引きを初めて読まれる方は、癌の巻を先にしてください。

●設定
 症例は乳頭型の下部胆管癌とします。表層拡大進展を疑ってPTCSを行うことになりました。肝内胆管の合流形態に大きな変異はありません。B4はB2+3に合流します。右後枝は門脈右枝の頭側を走行します。通常のタイプです。胆嚢管の合流部位も通常です。
 結石はありません。肝転移も認めません。肝内胆管に狭窄を認めません。
 PTBDはB3に施行されています。瘻孔は15Fまで拡張してあります。減黄は良好です。発熱もありません。
 こんなところでしょう。ただし設定をはみ出した文章もところどころあります。ご容赦ください。

◆基本的あるいは些細なことをいくつか

●PTCSはどこでやるんでしょうか
 レントゲンの透視室です。PTCSではいろいろな場面で透視が必要なのです。造影写真も撮りますし。

●機器を説明します
 ここでの設定で使う胆道鏡はオリンパスCHF TYPE P20です。シャフト径は4.9mmです。若い先生はなかなか胆道鏡の名前と太さを覚えてくれません。仕方なくCHFの49(よんじゅうきゅう)と呼んでいます。4.9でもいいんですけどね。小数点がないほうが覚えやすいであろう、と思ってのことです。ちなみにCHF TYPE CB30SはCHFの28(にじゅうはち)です。
 これらの胆道鏡は消毒用のケースに入れて保管しています。このケースの中にはフォルマリンの粒が入れてあります。
 胆道鏡検査は内視鏡検査です。光源とビデオ装置を透視室に運び込みます。光源はオリンパスのものを使います。掟です。ビデオ装置は分かりにくいですね。胆道鏡に取り付けるCCDと画像アンプ、ビデオデッキ、テレビモニターを組みあげたものです。

●ガウンを着ます
 以前はガウンなしでPTCSをやってました。そういうものだと思っていたのです。今はガウンを着てやっています。助手も着たほうがいいでしょう。
 ラジフォーカスは脈絡なく飛び上がります。胆道鏡のシャフトはあちこちに突進します。不潔になってしまいそうな場面は多いのです。ガウンを着ることでリスクはずいぶん減ります。

●胆道鏡の持ち方
 左手で操作部を持ちます。親指でアングルレバーを動かします。いろいろな持ち方で持ってみてください。自分に一番合う持ち方を確立しておきましょう。
 右手でシャフトを持ちます。ペンを持つように持ってください。PTCSではシャフトを左右に自在に回転させないといけません。この持ち方がベストです。ハタキを持つように持ってはいけません。シャフトを回転させにくいです。肘が体から離れます。疲れやすいと思います。

●吸引機構は使いません
 CHF P20には吸引機構がついています。使いません。吸引の手加減ができないからです。
 吸引機構を使う場合には胆道鏡の吸引チャンネルを吸引ポンプあるいは吸引バルブに接続します。そして、ここぞという場面で吸引ボタンを押すわけです。胆管の容量を考えてください。胆管癌でしたら5mlから10mlといったところです。あっという間に胆管壁が胆道鏡先端に吸いつけられます。キスマークができるでしょう。
 吸引したいときは画面を見ながら注射器でゆっくりどうぞ。左肝管や右肝管、右肝内胆管を観察しているときには、どこから胆汁が流れ出てくるかは重要な情報です。特にB1やB4を探している時には。また、胆嚢管から胆泥が出てくるとか、胆砂が出てくるとかも、気をつけて観察しておきます。思わぬ結石が隠れているかもしれません。

◆いよいよPTCS、でもその前に

●まずは予習
 PTCSの前には胆管造影像をじっくり見ておきましょう。CTとか血管造影像もチェックしておきます。胆管合流形態の診断、腫瘍の進展範囲の診断は当然です。PTBDがどこに入っているか、瘻孔はどのように走行しているか、PTBDの合併症はおきていないか、ということをチェックしてください。
 瘻孔拡張の情報も大切ですね。カテーテル交換のたびに出血したとか、交換に苦労していたとか。瘻孔拡張の術者とPTCSの術者が同一人物なら問題はありません。記憶がこびりついているはずです。でも術者が違う場合には情報を収集しておくべきです。そして予想してください。たとえば、ようやく15Fにできたような症例では、ひょっとするとCHF P20が入らないかもしれません。
 どういう患者さんか、も重要な情報です。不安の強い人か、あるいは痛みに敏感な人か。必要なら対策を講じなければなりません。

●機器の並べ方
 透視室には透視用のモニターがあります。光源、ビデオ装置、透視モニターを正しく並べてください。PTCSの間、患者さんは透視台に寝てもらい、術者は透視台の手前に立って検査をします。患者さんの頭が術者の左手側にくるようにします。まず透視モニターを患者さんの頭のてっぺん近くに置きます。ビデオ装置はその左です。これらは近づけます。PTCSでは透視と内視鏡のモニターを見比べながら検査を進めます。離れていると不便です。
 術者は右バッターのように、体は患者さんに向け、顔は左を見ながら勝負します。モニターを術者の左肩の後ろに置いてはいけません。首を90度以上ねじって検査をすることになります。長時間の検査はまず無理でしょう。負担の少ない姿勢を取れるように位置決めをしましょう。
 光源はビデオ装置の左です。
 3つを並べたら、ビデオ装置をスタンバイさせ、録画可能状態にします。これは術者がやったほうがいいでしょう。録画できてなくて泣くのは術者ですから。

●光源はわがままです
 そう思います。電源コードをタコ足状態の電源タップに差し込んでいると、よく不安定になります。具体的にはフィルム撮影不能になったりします。たぶん電圧が下がるためです。光源の電源は壁のコンセントからダイレクトに取りましょう。
 光源の電源をオンにします。まだ点灯できません。内視鏡を接続しないと点灯しないようになっています。電源には送気機能が付いています。通常は電源を入れると勝手に送気を始めます。うるさいのでオフにします。モードはOESです。撮影条件や光量については後で説明します。

●胆道造影
 ここまでやったら患者さんに入場してもらいます。まずは胆道造影です。空気を入れないように慎重にどうぞ。造影の目的は胆管と瘻孔の現状把握です。
 まずカテーテルの走行を見ます。まさか逸脱してませんよね。逸脱してなければ、抵抗なく造影剤を注入できることを確認します。抵抗があったら造影しません。肉芽が側孔にはまりこんでいるのです。ドレナージ不良に陥っているはずです。造影剤を無理に押し込むと危険です。うっ滞した胆汁が静脈に逆流して(cholangiovenous refluxです)悪寒発熱をきたしかねません。消毒の後に固定の糸をはずし、カテーテルを5mmくらい引っ張って浅くします。けっこう抵抗があるはずです。こうすると肉芽が側孔からはずれます。胆汁を吸引できるようになったら開始です。
 さて造影剤を抵抗なく注入できました。
 カテーテルの先端が狭窄部を押していませんか。押していたら、狭窄部には発赤とか小出血が観察されるでしょう。アーティファクトというやつです。狭窄部の内視鏡診断は難しくなるかもしれません。覚悟しましょう。
 カテーテルの先端や側孔に肉芽がはまりこんでいませんか。念入りにチェックします。立派な肉芽がありますか。肉芽を腫瘍と間違えないように心しましょう。基本です。
 まだ14枚法による撮影がやってなかったら、ここでやっておきます。設定で胆管の合流はよくあるタイプと宣言しました。でもまあ実際の場面では必要なことが多いのです。
 撮影がすんだら現像してもらいます。皮膚消毒をしたりしているうちに現像がすみます。写真上でもう一度カテーテルや瘻孔の状況をチェックしましょう。

●皮膚消毒カテーテル消毒と局所麻酔
 皮膚消毒の範囲はPTBDの時と同じです。広めにどうぞ。カテーテルも忘れずに長めに消毒しましょう。
 そして局所麻酔です。これはカテーテル交換のときと同じです。

●生理食塩水ルートの準備
 PTCSとかの胆道鏡検査では生理食塩水を胆管に点滴注入しながら検査を行います。
 点滴セットを出してもらい生理食塩水のバッグに接続します。静脈への点滴と同じようにセットしてください。泡をしっかり取り除きます。基本です。
 生理食塩水のバッグの高さには注意してください。食塩水の液面が患者さんの前胸壁から20cmないし25cmになるようにします。これ以上高くすると、cholangiovenous refluxを生じる危険が増えます。結石症例ではたいてい食塩水は十二指腸に流れ込みます。胆管内圧は高くならないでしょう。でも想定している疾患は胆管癌です。流れ出てはくれません。
 点滴セットには延長チューブを接続し、延長チューブに三方活栓をつけます。三方活栓はTの形をしています。縦の脚に延長チューブをつないでください。そして胆道鏡に接続します。こうすると注射器をくっつけたときに指をかけやすいのです。注射器に泡が入っていても注入されにくいです。

●胆道鏡を取り出し準備します
 光源に接続します。点灯してください。
 乾いたガーゼで接眼部を拭きます。ときどき汚れています。次に濡らしたガーゼでシャフトを拭きます。フォルマリンの粉が付着しているかもしれませんので。そしてチャンネルを生理食塩水で洗います。
 ビデオ装置のCCDを装着します。胆道鏡接眼部の軸とCCDの軸が合っていないと合体しません。ゆっくりどうぞ。モニターに画像がでましたか。出ないときはモニター背面でコードがはずれかかっています。しっかり差し込んでください。
 画像が出たら画像を最小にします。これは私の好みです。大きいのが好きな人は大きくしてください。大きさによっては画面に斜めのスジがわらわら現れるかもしれません。あわてないでください。故障ではありません。モアレ斑です。大きさを変えれば消えます。
 ホワイトバランスを合わせます。白いガーゼを映しながら画像アンプのホワイトバランスボタンを押してください。ガーゼが白く写るようになればOKです。

◆胆道鏡挿入

●ラジフォーカスを胆管に送り込む
 ようやく胆道鏡を入れる場面になりました。ラジフォーカスを生理食塩水でぬらしてください。
 PTBDカテーテルを皮膚から5cmのところで切断します。切ったところから胆汁ボトルまでは透視台の外に移動してもらいます。そのままにしてはいけません。胆管造影写真の中に写りこみます。胆汁がもれてトラブルの元になります。
 カテーテルを皮膚に固定している糸を切ります。ラジフォーカスが思いどおりに出ないときにカテーテルを回転したり浅くするためです。
 ここからは透視を使う場面が多くなります。X線の管球を頭のほうに15度くらい傾けて頭前斜位にします。患者さんが小柄だったりやせている方でしたら20度傾けます。こうすると指が透視画面に入りにくくなります。指へのX線被爆が少なくなります。ぜひどうぞ。瘻孔の走行やB3、B2、右後枝が見やすくなるという利点もあります。
 ラジフォーカスをカテーテルの中に送り込みます。狭窄部に接触させないのが理想です。この場面ではラジフォーカスが側孔から出てもかまいません。

●カテーテルを抜く
 ラジフォーカスを動かさないようにしてカテーテルを抜いてきます。カテーテル先端が皮膚の外に出たら、すかさず皮膚直上でラジフォーカスを捕まえます。指ではだめです。鉗子を使ってください。側孔からラジフォーカスが出ているかもしれません。注視してください。見つけたら即座につかみます。
 カテーテルは楽に抜けましたか?抵抗なく抜けてきたなら一安心です。胆道鏡も抵抗なく進んでいくはずです。抵抗があったら難航を覚悟してください。抵抗が強いですか。P20によるPTCSはできないだろうなと思ってください。そのまま16Fに交換するか、2.8mmの胆道鏡でPTCSをやって善後策を考える、ということになります。

●胆道鏡のチャンネルにラジフォーカスを送り込む
 カテーテルを抜ききったら、胆道鏡のチャンネルにラジフォーカスを入れます。このとき胆道鏡のシャフトはまっすぐにしておきます。ラジフォーカスの硬いほうが入っていくのです。抵抗を少なくしたほうがよいはずです。
 そうでした。胆道鏡の吸引ボタンは取り外します。ボタンがはまっていた孔からラジフォーカスが出てくるのです。
 ラジフォーカスをどんどん入れてください。ボタン孔から先端が出てきます。その前に少し抵抗があるかもしれません。ルートが屈曲しているところがあります。そのためです。

●胆道鏡を胆管まで入れる
 ラジフォーカスの先端が不潔にならないように助手に持っていてもらいます。そして胆道鏡を皮膚直上まで進めます。ここでラジフォーカスを捕まえていた鉗子をはずします。さあ瘻孔の中にゆっくり胆道鏡を送り込んでいきます。ラジフォーカスが狭窄部に接触しないように注意します。
 胆道鏡が抵抗なくB3に入りましたか。そのままB2+3あたりまで送り込んでください。そしてラジフォーカスを抜去し吸引ボタンをはめます。

●泡と戦う
 胆管内を観察します。内腔が見えるようにアングルを調節してください。ゆっくり吸引します。ラジフォーカスを使って胆道鏡を入れました。チャンネルの中には空気が入っています。これを吸引するのです。注射器の中に胆汁が入ってきたら一段落です。
 今度は生理食塩水を胆管の中に点滴注入します。泡が入るかもしれません。胆道鏡のチャンネルは吸引機能を持たせるためにY字になっています。このためにチャンネルから空気を完全に抜き取ることはできない、そのためと思っています。たいてい泡は胆道鏡先端あたりでうろうろしています。生理食塩水がある程度はいったところで泡を吸引します。でも完全な除去はできないと思ってください。妥協も大事です。

●胆管に入らないぞ
 抵抗が強くて胆管に入らないことがあります。たいていは胆管に入る直前です。アングルをかけると入ることもあります。ですが無理はいけません。
 胆道鏡がなかなか胆管に入らないときに胆道鏡の画面を見ると、けっこう胆管内腔が見えます。で、もう少し、もうちょっとと思ってしまいます。これが落とし穴なのです。ぐいぐい押しているうちに腹壁と肝臓の間で瘻孔が離断してしまったことがあります。びしっ、という音がして胆道鏡画面の半分が黒くなったこともあります。ファイバーが折れたのです。
 次回に期待しましょう。16Fのカテーテルを挿入します。切羽詰まった状況ですか。いったん16Fを挿入して瘻孔を拡張し、もう一度チャレンジしてもいいかもしれません。お勧めはしません。カテーテル交換のせいで発赤や出血などのアーティファクト必発です。まともな胆管観察は無理でしょう。CHFの28を使う手もあります。

◆観察

●B2+3から左肝管
 胆道鏡先端はB2+3にあるはずです。まず胆管を造影します。先端が胆管の中にあることを確認してください。そして生理食塩水を流しながら、ゆっくり胆道鏡を浅くしてきます。瘻孔が胆管に移行する部分を確認しておきたいのです。瘻孔内面は光沢に乏しい白色を呈し、輪状のラインを多数認めます。胆管は光沢のある、やや黄色を帯びた白色です。細かい血管や小さな胆管開口部を認めます。
 胆管穿刺部を同定したらB2開口部を探します。透視画像を参考にしましょう。B2とB3は鋭角に合流していることが多いです。開口部はひだの奥に隠れています。胆汁が流出してくる大きな枝と記憶しておきましょう。
 なぜ最初に病変部を観察しないのでしょう。どうしてB3とかB2+3から観察し始めるのでしょうか。理由は二つです。ひとつは、癌のない粘膜をまず観察したいのです。眼を慣らしておきたいのです。癌のない粘膜は平滑です。このあたりで「コントロール」情報を入手しておくのです。もうひとつは、シャフトにこすられないうちにB3、B2+3、左肝管の所見を得たいのです。

●B4とB1
 B2+3にはB4とB1が合流してきます。次の仕事はこれらを見つけることです。参考になる所見はPTBDカテーテルの圧迫による軽度の発赤のライン(ときに平行する2本になります)、あるいは白色帯です。カテーテルは後壁を圧迫します。この近くに合流する小さい枝はB1です。B4は反対側に合流しています。
 B4も鋭角に合流することが多いです。通常は開口部を正面視できません。ひだの向こう側に胆汁が流出してくるのを見たら、そこがB4です。胆道鏡による観察だけではB4開口部を見つけられないこともあります。その場合は、患者さんを左側臥位にします。ゆっくり造影剤を注入してください。B4が胆道鏡のシャフトの腹側に造影されてくるはずです。
 B4開口部が分かれば、胆管穿刺部から左右肝管合流部までの観察は一段落です。気合を入れて演技しながら、この部位の所見を録画します。演技とは、シャフトをゆっくり動かす、アングル操作もゆっくり行う、ということです。必要ならフィルム撮影もします。

●総肝管から総胆管
 左右肝管合流部を認識したら、いよいよ(ようやく)総肝管から総胆管を観察します。総肝管は胆管癌の表層拡大進展があるかもしれない部位です。心して観察してください。表層拡大進展は内視鏡的には顆粒状粘膜あるいは乳頭状粘膜です。胆道鏡をゆっくり動かしてじっくり観察してください。
 PTBDカテーテルは総肝管の右壁を押していたはずです。発赤や肉芽があって当然です。そしてこれらの周囲には、狭い範囲で顆粒状粘膜を認めることが多いです。カテーテルに対する反応性変化です。この所見は結石が胆管に接触する部位でも観察されます。
 目の訓練です。よく観察してください。顆粒の粒の大きさがそろっていて透明感があります。粒の上に粒がのっているようなことはないはずです。これらの逆が癌の所見です。粒がふぞろい、透明感に乏しい、粒にのる粒(乳頭状ということになりますか)といったところです。
 総肝管の背側を右肝動脈が走行します。胆道鏡的には、拍動性のなだらかな隆起が右肝動脈です。後壁の目印として使えます。ときには右肝動脈は総肝管腹側を走行します。CTやUSでチェックしておきましょう。
 胆嚢管は胆汁の出入りする陥凹です。開口部をしっかり確認できる症例は半分くらいです。

●狭窄部が見えた
 乳頭状腫瘍あるいは乳頭状粘膜が見えますか。平滑な粘膜をかぶっていますか。不整な血管を伴っていますか。
 乳頭状のタイプは表層拡大を高率に伴います。規約の分類でいえば、乳頭型、結節膨張型の一部です。狭窄部の粘膜が平滑なタイプはあまり表層拡大を伴いません。結節膨張型の多くと結節浸潤型、平坦浸潤型がここに含まれます。
 癌による狭窄では高率に不整血管を認めます。典型的な症例では、しめ縄様の形態を呈し、数本認めます。われわれは悪性を示す所見として重要視しています。腫瘍血管と命名しました。これは数十ないし数百ミクロンの太さです。毛細血管ではありません。毛細血管は太さ数ミクロンです。胆道鏡の解像能では観察不能です。
 狭窄部を観察したら、その上流の粘膜をもう一度観察し直します。顆粒状粘膜はありませんか。
 ここでフィルム撮影と供覧用のビデオ録画をしておきます。

●右肝管から右肝内胆管
 さあ検査の山は越えました。胆道鏡を浅くしてきます。そして右肝管に胆道鏡を送り込みます。透視画像を参考にした方がいいでしょう。アングル操作は穏やかにどうぞ。胆道鏡の先で粘膜をこすらないように。
 ここにはPTBDカテーテルは留置されてましたか。一度も留置されてなければアーティファクトはほとんどないはずです。平滑な粘膜をじっくり観察してください。
 右肝管はふつう短いです。正面に丸く見える胆管は右前枝の枝、B5やB8、あるいはB8a系やB8c系です。右後枝を見るにはコツがあります。胆道鏡を右肝管にほんの少し入れて右に少し回転させながらアングルをアップにします。三日月状の開口部が見えるはずです。右後枝です。
 右前枝は通常2つあるいは3つの枝に分かれています。右後枝に近い枝がB8c系です。右後枝から離れている枝がB5あるいはB8a系です。
 これらの枝を同定するには左前斜位になってもらいます。そして胆道鏡のチャンネルから造影剤を注入します。同定したい枝の開口部に先端を少し押し込んでください。容易に診断できます。仰臥位や右前斜位は有効ではありません。
 右肝管に合流するB1の開口部は分かりにくいです。細いことがひとつ。画面の隅で接線方向に観察することがひとつ。観察は困難とわきまえてください。
 右後枝の手前を観察しながら、注射器でゆっくり右肝管の内容液を吸引します。胆汁がたなびいてくるところがB1です。そうまでして探し出す意味があるのですか、といわないように。自覚してます。

●肉芽だ
 PTCSはアーティファクトとの戦いです。仕方ありません。道なきところに無理やり道をつけて検査しているのですから。
 アーティファクトの横綱は肉芽です。初めて見るとぎょっとします(そうだったはずです、私にとっては遠い記憶なので)。慣れれば腫瘍と間違えることはありません。
 肉芽には2種類あります。カテーテルの先端にできるのと、側孔の位置にできるものです。前者の典型的なのは芯のないロウソクの形をしています。壁はつるつるしています。色はピンクですね。後者は半球状です。表面は赤っぽく凸凹しています。
 共通しているのは胆管粘膜との移行部(立ち上がる直前、でしょうか)に狭い白色帯を伴っていることです。カテーテルが胆管を強く押していた地域です。その周囲には発赤帯があります。よく見ると顆粒状の粘膜を認めることがあります。
 肉芽のでき方には個人差があります。早い人では2日で立派なものができます。シリコンのカテーテルではどうでしょうか。できる人にはできます。

◆画像記録

●ビデオ録画
 基本的には見ている画像はすべて録画します。よし撮るぞ、というときにはアーティファクトで大事な所見が消滅していたりするものです。肝心なところを撮れなかった経験(失敗ともいいます)はいっぱいあります。PTCSは数多い検査ではありません。過保護でちょうどいいのです。
 とはいうものの胆管造影中の白玉赤玉は撮らなくてもいいです。生検後の出血で視界不良に陥った場面。これも撮りません。

●演技を
 ここぞという所見を録画するときには胆道鏡をゆっくり動かします。その場で見てる人がいらいらするくらいに、のろのろ動かしてください。録画したものを見直すと実感します。普通に胆道鏡を動かしている場面は目が回ります。画面がびゅんびゅん移動して所見をつかめないのです。なぜなんでしょうか。理由はわかりません。どなたか教えてください。
 後で編集することも考えます。うまく場面がつながるように録画します。基本です。

●光量調節を
 光量の調節も大事です。撮りたい所見がうまく見えているかチェックしながら録画します。そのためのモニターです。自動調光に頼ってはいけません。裏切られて泣くだけです。
 たとえば狭窄部では光が逃げないせいか白く光りがちです。光量を下げましょう。遠景では光量を最大にしなければいけません。難しいのは粘膜を接線方向に観察している場面です。近接すると粘膜が真っ白になって所見が飛んでしまいます。うまく調節してください。
 通常の観察をしているときも同じです。こまめに光を上げ下げしてください。光が過剰で顆粒状の変化を見逃しているかもしれませんよ。

●フィルム撮影の総論
 フィルム撮影は二人目の助手が担当します。カメラやフィルムは不潔です。そのように対処してください。
 フィルムは16mmのものです。専用のものです。いま使っているフィルムは灰色のツバがついています。撮影後に取り出しやすいようになっているのです。カメラに入れる前に取ってしまわないように。
 カメラはSC16というのを使います。フィルム撮影となったら、CCDをはずしてカメラを取り付けます。胆道鏡への取り付け方はビデオのCCDと似ています。初めて使う人はシャッターの位置をあらかじめ聞いておくように。

●条件を変えて撮影します
 ひとつの構図で3枚撮ります。+1、±0、−1に条件を振って撮影するのです。機械を信用していない、ということです。長年こうやって撮影しています。±0の写真がベストなことは少ないです。
 フィルムは20コマです。6シーンと少し撮影できます。無駄を減らすために撮影前に作戦を立てておきましょう。ビデオ録画しています。フィルム撮影の対象は厳選素材だけでいいです。

◆B1探査

●B1探査
 たいていの人にとってB1はうっとうしいだけの存在らしいです。そのように推定して矛盾のないことを示唆する観察結果が集積しつつあると考えて誤りはないのではないかと思われます。とはいえB1も時に役に立ちます。左肝管の中での目印になるのです。B2+3から左肝管は比較的長いにもかかわらず、これといった目印がありません。B1開口部が同定してあれば重宝します。
 左肝管をじっくり観察してください。小さな胆管が2本から3本合流しているのが分かるはずです。B2に近いのが左上尾状葉枝(B1ls)でしょう。左右肝管合流部に近いのが左下尾状葉枝(B1li)や右尾状葉枝(B1r)のはずです。
 肝門部胆管癌とか肝門に浸潤した胆嚢癌といった疾患ではB1のいくつかは造影されないかもしれません。でも想定した疾患は下部胆管癌です。造影されるはずです。造影所見と胆道鏡所見を照合してください。左肝管に合流するB1の同定は可能です。

●ラジフォーカスを使います
 問題は、胆汁が流れ出てこないと胆管開口部なのか、単なるくぼみなのか分からないことです。そこでラジフォーカスの登場です。胆道鏡で問題のくぼみを監視しながら、ラジフォーカスを挿入するのです。B1なら深く入っていきます。開口部の位置やB1の中のラジフォーカスのかたちで造影でのどの枝か診断できます。
 ラジフォーカスは屈曲したものを使います。先端を目的の場所に持っていくのはけっこう難儀です。でもじっくり操作すればなんとかなります。
 ストレート型を使ったこともあります。先端を開口部にもっていくのは比較的簡単です。ですが、B1に入ってから奥に進んでいかないのです。J型ですと回転させることでどんどん奥に入っていきます。ということでJ型を使います。

●胆道鏡押し当て法はやめました
 少し前までは調べたいくぼみに胆道鏡を押し当てて造影していました。太い枝を相手にしているのでしたら、この方法がベストです。
 でもB1のように細い枝を調べようとすると、たいへん苦しいのです。胆道鏡を押し当てると、くぼみが見えなります。枝が写らなかったときに、くぼみが胆管開口部でなかったのか、あるいは胆道鏡のチャンネル開口部がくぼみからはずれているのか、なんともいえません。B1が造影されたとしても、さっきまで見ていたくぼみから造影されたのかどうか不確実です。
 もうひとつ弱みがあります。造影剤の量や注入圧の調節が難しいのです。実質造影になってしまったこともあります。
 ということでラジフォーカスを使うことにしました。弱点は造影できないことです。血管造影カテーテルのプログレートなどを使えばできますが、まあこれはよほどの場合に使う手段ということで。

◆生検

●大上段に
 生検の目的は、主病変が悪性かどうか診断することと、進展範囲を診断することです。内視鏡学的に書くと、内視鏡診断を確定するために生検するのです。生検するために胆道鏡をやるのではありません。勘違いしないように。
 胆管を観察しながら診断してください。そして生検部位を決めてください。生検するときには、ここは癌、ここは灰色、ここは非癌などと宣言しながら(差し支えのない方法でどうぞ)勝負します。

●実際
 基本は胆道鏡で観察しながらの採取です。最初は主病変から取ります。視野の一番いいときに確実に取りたいからです。そして順に上流側に移動して採取します。
 鉗子を送り込みます。鉗子が入るとシャフトのアングルが少し伸ばされます。思いどおりの場所に鉗子を当てることはけっこう難しいものです。鉗子を開いて目標のところに押し当てます。
 ここで胆管造影像を撮影します。ここから採取した、あそこから取った、という証言だけでは納得しない人は多いです。証拠写真が必要なのです。ということで,生検を始める前に造影剤を胆管に注入しておきます。
 撮影したら鉗子を閉じて引き抜きます。標本が採取されたところからは出血が起こります。この所見から生検部位を再確認します。時に大出血に見えて肝を潰すことがあります。でも処置が必要になったことはありません。我慢です。せっせと洗浄を続けます。
 総肝管になると胆道鏡で観察しながらの生検は困難になってきます。鉗子が滑ってしまうのです。鉗子が滑る部位は、透視で観察しながら鉗子を直角に胆管粘膜にあてて採取します。胆道鏡のアングル機能を活用してください。このときは胆道鏡による観察はあきらめます。そうそうレントゲン撮影をこまめにやりましょう。マッピングに必要です。

●おせっかい情報
 主病変に乳頭状の部位があると、一発で1mm以上の大きい標本を採取できます。1個で十分です。結節膨張型とか結節浸潤型、平坦浸潤型では、1mmくらいの標本を取るのに2回あるいは3回の生検が必要になることが多いです。大きめのが取れるまでがんばりましょう。
 腫瘍血管をはっきり認める症例では一発目はここからです。出血するかもしれません。びっくりするほど出血することもあります。でも、しばらくすれば止まります。出血すると視野は悪くなります。ゆっくり洗浄を続けて止まるのを待ちましょう。
 結節膨張型とか結節浸潤型、平坦浸潤型では、鉗子を狭窄の中に送り込んで生検しておきます。透視で鉗子の位置を見ながらやれば確実かつ安全です。
 表層拡大の部位からも大きい標本が取れることが多いです。それ以外の粘膜からは、なかなか十分な大きさの標本が取れません。0.5mmくらいで満足しましょう。逆にいいますと、大きく取れたら悪性を考えなさい、ということになります。
 胆管末端は別です。ここは癌がなくても乳頭状になっています。大きいのが取れます。

●左右肝管合流部から右肝内胆管
 左右肝管合流部は採取しやすい部位です。右肝管開口部を正面視できます。鉗子が粘膜に垂直に当ります。しっかり取りましょう。
 右肝管に入ると鉗子はスリップします。なかなか思いどおりには採取できません。B5bの開口部があれば、開口部のひだをつかみましょう。取れます。B1開口部のほうはまず取れません。アングルを最大にしてようやく見えるような枝だからです。鉗子を入れていくとアングルが伸ばされてしまいます。開口部が見えなくなって、ま、あきらめるか、ということになります。
 右肝管の奥から生検するのでしたら、B8a系とかB8c系の開口部のひだから取ります。胃角のように見えるところがいいでしょう。採取するところを観察していると痛々しいですが。

●左肝管
 左肝管も鉗子がすべりやすいところです。
 B4開口部が分かっていれば、ここから採取しましょう。そしてB1開口部が役に立ちます。位置を客観的に同定できます。鉗子のどちらかの顎を開口部に挿入できれば、大きめの標本を採取できます。

●生検標本の処理
 常識的かつ迅速にやってください。
 生検部位は言葉で記載するよりは、スケッチに書き込む方が分かりやすいです。基本です。

◆狭窄より下流側の胆管造影

●上流から造影できます
 胆管に狭窄があると、たいていは狭窄より下流側の胆管は写りません。もちろん圧をどんどん上げれば写ってきます。これは危険です。やってはいけません。
 胆道鏡を使えば安全かつ確実に造影できます。

●狭窄部に胆道鏡を押し当てて造影
 狭窄部を観察します。そこに胆道鏡の先端をつっこみます。その前に胆管内溶液をしっかり吸引しておきます。狭窄より上流側の胆管内圧を危険域に到達させないための配慮です。
 そして胆道鏡を押しながら造影剤をゆっくり注入します。始めは薄くしか写ってきません。左前斜位になってもらいます。そうすると薄く造影された総胆管が椎骨から離れます。見やすくなります。見逃すことはありません。
 写り始めたらしめたものです。どんどん写るようになります。ですが、ゆっくり造影剤を注入してください。狭窄の上流に造影剤が流れて緊満状態になってはまずいです。注意しながら造影してください。

●体位を変える
 左前斜位だけでなく、仰臥位や右前斜位も撮影します。基本です。
 主膵管もしばしば造影されてきます。注意して見ていてください。

◆撤収

●カテーテル再挿入
 さあ検査は終わりました。ドレナージカテーテルを留置しましょう。
 もうPTCSの予定はなく、瘻孔もしっかりしているのでしたら、12Fシリコンカテーテルを留置します。PTCSの再検があるんでしたら、16Fを使います。瘻孔がしっかりしていないのでしたら、しかるべき太さの塩化ビニールのカテーテルを使います。
 皮膚への固定を忘れずに。

●光源とビデオ装置を戻す
 お願いします。

●胆道鏡の洗浄
 水道水でまず洗います。チャンネルの中は注射器で水を通します。吸引ボタンをはずしてじゃぶじゃぶやってください。そしてアルコールでも洗います。
 そして洗浄器で洗います。消毒時間は30分にします。吸引ボタンをなくさないように気をつけてください。
 終わったらホルマリンボックスに収納します。お疲れさんでした。

●ビデオテープの整理、フィルムの整理
 検査が終わったらテープに患者さんの名前や検査日時を書き込みます。忘れるとどこかで誰かが不幸に会いますな。
 現像がすんだフィルムもしっかり整理しておきます。

●レポート作成
 専用の用紙が用意してあります。
 所見をしっかり記載してください。生検の部位も忘れずに記入してください。先人のものを参考にするとよいでしょう。
 用紙は複写式です。複写された方をカルテにはさみ込みます。オリジナルは、しかるべき引き出しに入れてください。

◆奥義だ

●胆管のふくらませ加減
 多くの人は勘違いしています。胆管が緊満していたほうが所見を取りやすいと思っています。ふくらみが足りないと生理食塩水を追加しようとします。十分見えていると判断したら、生理食塩水を吸引しようとはしません。
 発想を変えてください。生理食塩水の注入をストップします。少し吸引してみてください。粘膜に少し皺がよります。これで粘膜が見やすくなることがあるのです。光の当たり方が変わるためと思っています。
 だまされたと思って、一度は生理食塩水を少し吸引して粘膜を観察してみてください。

●主病変と連続する顆粒状粘膜を認めたら
 癌の表層進展です。PTCSをやったかいがありました。苦労が報われかけています。
 境界が問題になります。顆粒状粘膜がどこまで広がっているか診断してください。左右肝管合流部より下流までですか。右肝管に入り込んでいますか。左肝管まで来ていますか。しっかり診断しましょう。
 境界が分かりにくいケースもあります。顆粒状粘膜から平坦な粘膜になだらかに移行するのです。悩まされます。しかも観察しにくい総肝管の左壁が先進部だったりします。逃げてはいけません。診断しましょう。
 基本は所見を取ることです。ここまでは顆粒状に見える。ここからは平坦だ。粘膜の色の変化はあるのかないのか。あればどこまでか。慎重に観察しましょう。そして記述しましょう。思っているだけでは片手落ちです。
 胆道鏡で表層拡大の範囲を診断しづらい病変は尾を引きます。生検診断も、凍結切片での診断も、切除標本の肉眼診断もむつかしいということです。永久標本による病理組織診断も手こずるであろうと宣言してもいいです。
 それはそれとして実務です。
 切除術式を想定してください。ここまでだったら肝切除は不要とか、ここまで陽性だったら右葉切除も必要とか考えます。そしてツボの部位から生検します。闇雲に採取していては尊敬を得られません。びしっと決めてください。

●胆道鏡診断と生検診断が合わない(主病巣編)
 癌と診断したところから採取したのに癌が出ない。ときにあります。
 再検のチャンスがあるなら再検します。大きい標本を3個か4個取りましょう。日程的にできないですか。内視鏡診断あるいは胆道造影の診断で次に進むしかありません。胆道手術の既往がなくて胆石がなくて、なおかつ狭窄が多発性でなければ、狭窄の95%以上は癌です。
 あれ?まずいことを言いましたか。PTCSの意義はどこにあるのかな。症例ごとに、とくと考えてからやりましょう。

●胆道鏡診断と生検診断が合わない(表層進展編)
 これはちょこちょこあります。表層進展と診断しなかったところから出るケースが一番いやですね。でも仕方ありません。再検です。
 逆もあります。表層進展と診断したところを癌と診断してもらえないケースです。
 上皮が採取されていますか。上皮が採取さていて癌と診断してもらえないのなら癌でない可能性が高いです。でも、ここも再検です。もう一度PTCSをやらせてもらいましょう。顆粒を認めますか?
 上皮が採取されていませんか。やはり再検ですね。