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■□□■■□PTBD造影の手引き□□□
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■□■■■■□器官調節外科□神谷順一□
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◆おなじみ設定事項
 疾患は下部胆管癌です。B2+3にPTBDが入っています。減黄は良好で、発熱もありません。
 透視の部屋まで移動できます。体位変換も可能です。

◆説明するのは14枚法です

●14枚法の中身
 1.仰臥位(これを0度とします)
 2.左前斜位(30度くらい)
 3.右側臥位(90度です)
 4.右側臥位でやや腹ばい気味(100度と説明させてください)
 5.右側臥位(90度)+頭前斜位(20度)
 6.左前斜位(45度〜30度)+頭前斜位(20度)
 7.仰臥位+頭前斜位(20度)
 8.右前斜位(30度くらい)
 9.左側臥位(90度です)
10.左側臥位(90度)+頭前斜位(20度)
11.右前斜位(60度くらい)+頭前斜位(20度)
12.右前斜位(30度くらい)+頭前斜位(20度)
13.仰臥位+頭前斜位(20度)
14.仰臥位

●14枚法の目的
 肝内胆管枝の解剖を把握することを目的としています。具体的には二つです。亜区域枝を同定すること、亜区域枝の合流形態を診断することです。
 ですから亜区域枝の本幹が造影されれば十分です。読影できます。目的は達成されます。末梢の小枝までぎっちり造影する必要はありません。危険です。

●14枚法の原則
 系統だてて撮影していきます。いきなり迎臥位から側臥位に移行したりしません。間に斜位をはさんでいます。当たり前ですけれども。そして一つの姿勢について頭前斜位を加えたものと加えていないものの両方を撮影しています(例外もありますが)。
 ところどころ工夫しています。右葉をねらった前半では亜区域枝を精密に診断したくて100度を加えました。後半ではB1を意識して右前斜位に頭前斜位を加えたものを2種類撮影するようにしました。
 経験的にはこれ以上撮影しても情報はたいして増えません。禁欲的にいきましょう。

●前半で右側臥位にしていく理由
 仰臥位で造影剤をゆっくり注入していくと右肝内胆管がうつってきます。これが理由です。左肝内胆管に造影剤が入って読影のじゃまになる前に右を済ませてしまおうというわけです。

●造影の時期
 いつやってもいいです。最適の時期は最初のカテーテル交換の前でしょう。カテーテルが6Fと細いので好都合です。太くしてからでは細い枝が写りにくくなるかもしれません。
 減黄が思わしくないときや熱のあるときは控えましょう。基本です。

◆造影の前に

●前処置
 カテーテル交換のときにやるのでしたら、特別なことは必要ありません。造影だけなら、特に処置はしません。

●準備
 カテーテルを留めているテープは取ります。ガーゼも取り除きます。基本です。胆管像にカテーテルが重なっていては興ざめです。
 点滴のラインにも気を付けましょう。けっこう写り込んだ写真を見ます。いけません。

●注射器と造影剤
 注射器は10mlのものを使います。胆管が細いことが分かっていたら5mlが適当です。基本的には20mlのものは使いません。注入量の微調整がむつかしいからです。とにかく少量ずつ注入したいのです。
 造影剤はウログラフィンの76%を使います。
 注射器に空気が入っていたら追い出しておきましょう。転ばぬ先の杖です。うっかり胆管に泡を入れてしまったら災難です。

◆コツをいくつか

●透視画面を見ながら体位変換します
 枝の重なりの少ない写真を撮りたいのです。画面でチェックしながら体位を微調整します。基本です。枝は多いです。少々の重なりには目をつぶりましょう。大切な枝がどれか素早く判断して体位を決定してください。
 透視画面には利点がもうひとつあります。体を回転させながら枝を観察すると、枝の立体関係が手に取るように分かるのです。

●背骨をまっすぐ
 体の軸に直角な線(水平線と呼びます)は重要です。5と8、6と7を診断するときの基準線になるからです。4aと4b、1lsと1liの診断でも重要です。
 迎臥位では背骨をまっすぐにして撮影します。背骨が斜めになっていると水平線が傾きます。間違いが起こりやすくなります。斜めの背骨が気色悪いと思うようになったら免許皆伝です。

●造影剤は胆汁より重いことを理解して
 胆管に入った造影剤は胆汁を押しのけて地球の中心に近づこうとします。仰臥位であれば濃い枝は背側に位置する枝と診断できます。この所見はたとえば8aと8c、あるいは5aと5bの鑑別に使えます。濃い枝が8c、5bです。
 もう一つ意味があります。右側臥位にすれば造影剤は右葉方面に、左側臥位にすれば左葉方面に入っていきます。適切な量の造影剤を注入すれば、見たいほうだけを造影できるのです。くれぐれも過量注入はしないでください。

●呼吸をどこで止めてもらうか、も大事です
 たいていは息を吐いたときがベストです。肺のかぶりが最小になるからです。透視画面を見て決めましょう。技師さんにおまかせはまずいです。

◆実際

●1.仰臥位
 造影剤を少量注入します。抵抗なく注入できますか。抵抗があったら造影は中止です。カテーテル交換の手引きの「● 抵抗があるぞ」を読んでください。
 右肝内胆管がだいたい造影されたら注入をやめます。ひとつの目安は左肝内胆管が造影されかかるくらいです。あなたがB8aを診断できる人でしたら、B8aがうつりかけてきたら撮影します。B4がしっかり造影されるほど注入してはいけません。危険です。そして左葉の胆管が右葉の胆管にかぶって診断しにくくなります。
 そうそう背骨はまっすぐになっていますか。

●2.左前斜位(30度)
 右前区域の枝が外側に移動し、右後区域の枝が内側に移動します。前区域と後区域の間の胆管が存在しない面が分かる症例も多いです。右門脈裂です。分かったら右門脈裂を意識して撮影しましょう。
 この体位はB5a、B5bやB8aの合流形態が分かりやすいです。これもチェックです。

●3.右側臥位(90度)
 体が台の手前にきます。右前区域の腹側の枝が画面の外にはみ出ることが多いです。慎重に体を背中の方面に移動します。
 この体位では右後区域枝がよく分かります。B6a、B6b、B6cが腹側から背側に並びます。B7は背側から肝門に向かってほぼ水平に走行します。B8cはだいたい45度で肝門に向かっています。ここで鑑別してください。右後枝に合流する枝はB7と思いこんでいると失敗することがあります。6例に1例くらいの割合でB8cは右後枝に合流します。
 側臥位にすると8aがしっかりうつってくることも多いです。左前斜位でうっすらうつっていた枝が濃くなってきたら8aです。

●4.右側臥位でやや腹ばい気味(100度)
 この体位は亜区域枝の合流形態を診断するためのものです。体を少しづつ前後に動かして一番よく分かる位置で撮影しましょう。息を吐いたところで撮影です。

●5.右側臥位(90度)+頭前斜位(20度)
 体を90度に戻して頭前斜位を加えます。透視で枝の動きを観察してください。B8bやB5cが頭側に移動し、合流部位が分かりやすくなります。左肝管や左尾状葉枝(B1l)は足側に動きます。

●6.左前斜位(45度〜30度)+頭前斜位(20度)
 ねらいはB8a、B5a、B5bです。合流形態をよく見て最適位置で撮影します。ほかの体位ではB8aやB5aの性状は分かりにくいです。

●7.仰臥位+頭前斜位(20度)
 迎臥位に戻りました。背骨が斜めになっていることが多いです。まっすぐに戻しましょう。基本です。左肝内胆管はうっすらとしか写っていないはずです。それでいいのです。造影剤は追加しません。●1から●7までは一組目の連続写真と心得てください。造影剤を加えたりすると、今まで写っていなかった枝が濃くなったりして混乱します。禁欲的にいきましょう。
 胆管が濃く造影された写真は受けがいいかもしれません。でも素人受けです。薄めの造影像のほうが情報量が多いのです。欲しいのは亜区域枝の本幹の所見とか合流形態の情報です。濃すぎると合流形態は診断しにくくなります。100の真っ白と100の真っ白が重って100の真っ白になるからです。50の白と50の白が重なって100になる状況が診断には好都合なのです。

●8.右前斜位(30度)
 ここで管球をまっすぐに戻します。その間に患者さんを右前にします。2回3回と造影剤をゆっくり出し入れしてください。B3が写ってくるはずです。B4根部が造影されてきたらOKとします。撮影してください。
 右葉の胆管と左葉の胆管がすっぱり分離していることが分かることがあります。主門脈裂が見えているのです。
 頭前斜位を戻したりせずに一気に撮影していけばいいのに、と思う人がいるかもしれません。管球を戻すことにした理由を書いておきます。頭前斜位はどちらかといえば見慣れない撮影体位です。先に慣れた体位で撮影したほうが思い違いによるトラブルが少ないはずだ、そう考えたのです。そして、ここは仕切り直しの場面です。造影剤を左葉に移動させる必要があります。どのみち一気には撮影できないのです。

●9.左側臥位(90度です)
 体が台の奥に行きすぎることが多いです。慎重に手前に移動してもらいます。
 もう一度造影剤を出し入れしてください。B4を写したいのです。B4はB3と重なって分かりにくいはずです。慎重に判断してください。B2も円になっていて見つけにくいかもしれません。

●10.左側臥位(90度)+頭前斜位(20度)
 B2が頭側にするすると伸びます。よく分かるようになります。これに対してB4が足側に移動し、B3とはずれます。左肝内胆管の走行を診断するのに最も有用な体位です。
 この体位でもB4は十分造影されないことが多いです。不満でしたら、14枚法の後に腹臥位で撮影してください。

●11.右前斜位(60度くらい)+頭前斜位(20度)
 11から14までは時間との戦いです。ゆっくりしているとB4に入った造影剤が流出してしまいます。
 B1の走行を見極めて最適の体位で撮影します。素早くどうぞ。B4がうまく造影されていますか。

●12.右前斜位(30度くらい)+頭前斜位(20度)
 30度を目安に早く撮影してください。早く早く。

●13.仰臥位+頭前斜位(20度)
 背骨がまっすぐになっていることを確認したらすぐ撮影します。しっかり息を吐いてもらって撮りましょう。

●14.仰臥位
 これが最後です。
 撮影し終わったら現像してもらいましょう。その間に次の作業を行ってください。

◆おまけ
●ちょっとした歴史
 頭前斜位は85年7月頃から始めていました。その前後には側臥位が重要なことも理解していました。いろいろな程度の斜位はずっと前から使っていました。役者はそろっていたのです。ですが、93年11月に11枚法を思いつくまでは慣性的といいますか思いつくままに撮影していました。8年間も何をやっていたんでしょうかね。
 11枚法に思い至った最大の理由は「抜け」でした。どうしても、ひとつかふたつ、必要な体位が抜けてしまいます。無規格の当然の帰結です。その割に枚数は多かったのです。似た写真、あるいはちょっとしか変わらない写真があふれていました。で、系統的にやろうと思いついたのでした。それまでは撮影枚数20枚30枚はざらでしたから、禁欲生活に突入した気分でした。でも、これでいけるという感触は得られました。
 94年1月には13枚に増えました。100度の右側臥位と最後の仰臥位を追加したのです。
 撮影には四つ切りのフィルムを使います。たいていはこれを上下あるいは左右の2分割で撮影します。奇数はまずいです。13という数も不評でした。で、頭前斜位の左側臥位から仰臥位に戻ってくる間に2枚撮影するようにしました。14枚に到達したのでした。94年4月のことでした。