■□□□□□□□□□□□□□□□□□□
■■PTBDカテーテル交換の手引き□□
■■■□□□□□□□□□□□□□□□□
■■■■□□器官調節外科□神谷順一□□
■■■■■□□□□□□□□□□□□□□


◆ 前置き

 ここで説明するPTBDカテーテル交換とは、住友ベークライトのPTCSカテーテルを使って瘻孔を拡張する手技です。
 大きな項目は以下のようになっています。◆穿刺部のガーゼを取る◆造影し術野を消毒する◆カテーテルを選択し加工する◆局所麻酔し元のカテーテルを切断する◆ガイドワイヤーを送り込む◆カテーテルだけ抜去する◆新しいカテーテルを押し込む◆ガイドワイヤーを抜く◆カテーテルを固定し胆汁ボトルにつなぐ。細工も何もありません。このあとに追記ものがいくつか並んでいます。
 根掘り葉掘り文です。通読はおすすめしません。拾い読みでどうぞ。

◆ 穿刺部のガーゼを取る

 カテーテル交換の前には胆管造影をします。造影は、カテーテルのばんそうこう固定をはずし、ガーゼを取り除いてから行います。これでカテーテルの体外部分を動かせるようになります。カテーテルの体外部分が胆管像と重なっているのは見苦しい、そう思ってください。透視画面で簡単に分かることです。重なりそうになったら移動させるのです。基本です。
 ガーゼを取ったらカテーテルの脇から胆汁が染み出ていないか観察します。染み出ていたら原因を推測してください。胆汁のドレナージが悪くてあふれだしている?なぜドレナージが悪い?まさか腹水?いろいろ考えておいてください。固定の糸の状態も見ます。突っ張って皮膚がテント状になってませんか。これは痛みの原因になります。はやく解除してあげましょう。
 テープを取ると皮膚が発赤していることがあります。かゆいはずです。たずねてみてください。交換終了後には、また固定することになります。テープを別の種類にするとか固定の位置を変えるとかしましょう。テープの辺縁で水膨れができていることがあります。たいていは弾力性のテープを引き伸ばして皮膚に張りつけたためです。緊張は辺縁に集まります。ここで表皮がずれてしまい、挙げ句の果てに水膨れになってしまうのでしょう。引き伸ばして張りつけたほうがピンとして見栄えがいいです。でもカテーテル固定の面で有利になるわけではないと思います。ふわっと張りつけましょう。皺があってもかまいません。

◆ 造影し術野を消毒する

●まずは透視画面
ここで説明する造影はカテーテルを目的にしています。カテーテルの走行とか先端の位置を診断するためのものです。なおカテーテルの通り道は瘻孔といいます。英語ではfistulaあるいはsinus tractです。
 まずは透視画面でカテーテルの走行を見ます。PTCSカテーテルにはバリウムの線が入っています。細い白い線です。この線は透視画面やレントゲン写真でも白い線になります。素直にカーブして先端が総胆管とか肝門部胆管とかの、しかるべき位置にあれば一安心です。
 腹壁のすぐ下あたりでたわんでいたり、胸壁と肝臓の間でループを作っていたら、一人静かに驚いてください。逸脱です。「◆◆抜けてる!はねてる!」が待ってます。大事なことは患者さんを不安がらせないことです。どの場面でもいえることですが「あっ」とか「まずい」といった声はタブーです。最も緊張し不安でいっぱいなのは患者さんなのです。

●胆管内圧をあげないために
 注射器は5mlか10mlを使います。おすすめは5mlです。思わぬ注入し過ぎを防ぐためです。胆管内圧の上昇は最小限に。これはこの文章のテーマの一つです。
 肝門や肝内で胆管がいくつかのパートに分断されている症例では細心の注意が必要です。カテーテルの入っている胆管の胆汁には細菌がいるものと思ってください。造影剤注入で圧を上げるとまずいです。ドレナージ不良の胆管に細菌で汚染された胆汁が押し込まれます。最悪の場合は区域性胆管炎です。
 また、胆管の内圧が上がり過ぎると胆管から静脈へ胆汁が逆流します。その結果、震えがきたり熱が出ます。これも避けなければいけません。胆管から静脈へ胆汁が逆流する現象はcholangiovenous refluxといいます。この現象は30cm弱の水柱圧で始まるといわれています。
 造影はカテーテルから「直接」行います。「直接」の意味は延長チューブを介さないということです。通常使用している延長チューブはX2という規格の50cmです。このチューブは2mlの容積を持っています。延長チューブを介して造影したら、2mlの胆汁が胆管に送り込まれてから造影が始まることになります。これはまずいです。とにかく胆管内圧は上げたくないのです。
 三方活栓は許可します。

●まず吸引
 造影する前には吸引してみます。結石症のひとでは胆泥とか胆砂が引けてきて、そのあと胆汁がたくさん吸引できることがあります。カテーテルと三方活栓の接続部、カテーテルと延長チューブの接続部、三方活栓の中とかに結石の破片がひっかかっていることもあります。これを押し込んでしまうのは無神経というものです。取り除いてから造影をはじめます。胆汁中にひも状の血液の固まりがみえてるひとでも同じことがいえます。ゆっくり吸引してみましょう。

●さあ造影
 造影剤はちびちび注入します。数値でいうと0.2mlくらいずつでしょうか。
 すんなり造影されますか?
 すなおに注入できれば胆管があまり濃く造影されないうちに撮影しておきます。仰向けと体を30度くらい右前に傾けた体位(第一斜位とか右前斜位といいます)の2方向がおすすめです。四ツ切りという一番よく使われるフィルムであれば、左右の2分割あるいは上下の2分割で1枚ということになります。
 われわれは三次元の世界にいます。ものごとを立体的に把握していないと時にひどい目にあいます。最低2方向で撮影しておけば立体的把握はかなり容易になります。

●抵抗があるぞ
 抵抗があれば配慮が必要です。カテーテルの側孔が肉芽で閉塞されている可能性が高いです。6Fとかの細いカテーテルの場合には、一番手前に作った側孔の位置で折れ曲がっているかもしれません(ここ以外なら折れ曲がっても抵抗はないはずです)。極端な場合には三方活栓をロックした時のようにまったく注入できません。どうしましょうか。
 いくつかの方法があります。
・カテーテルを少し浅くしてみる。
・強引に1mlくらいで造影する。
・ガイドワイヤーをいれて探ってみる。
一番のおすすめは1cmとか2cm浅くする方法です。肉芽でじゃまされてる場合には、ぷちんとはずれます。折れ曲がっている可能性が高いなら造影しながら浅くします。しばらくすると造影されてくるはずです。胆管内に入っているカテーテルが短い場合には浅くしろとはいいません。強引に1ml注入してみます。少しでも造影できれば次の操作に進みます。造影できなければガイドワイヤーで探るしかありません。
 どちらにしても、開通した!と一気に造影してはいけません。まずは吸引です。素直には造影できなかったのです。ドレナージが悪くて胆汁が充満していると思ってください。吸引したあとに造影しましょう。

●あせらず現像
 透視画面では読めない所見があります。現像してもらいましょう。
 まずは、うれしい所見を説明しましょう。瘻孔内のカテーテル周囲をよく見てください。カテーテルと瘻孔の隙間に造影剤が流れ込んできていませんか。これは胆石症でよく見る所見ですが瘻孔がゆるいことを意味します。2Fの拡張は約束されたものと考えてください。3Fアップを考えてもいいかもしれません。
 うれしくない所見もあります。カテーテルが胆管壁を貫通するあたりを観察してください。カテーテル内腔にくびれがありませんか。あったら苦戦を覚悟してください。二つの可能性が考えられます。カテーテルの胆管貫通部に側孔がはまっている、あるいは胆管貫通部でカテーテルが締め付けられているのです。1Fでも太くできれば大成功、最悪の場合には1F細くしないといけないかもしれません。

●現像を待つ間に術野を準備する
 イソジンで皮膚穿刺部を中心に消毒します。範囲は穿刺部を中心にして30cm程度でしょう。皮膚消毒がすんだらコンプレッセンをかけます。まず孔開きコンプレッセンです。腰から足には孔のないものをかけます。いつも使っているガイドワイヤーは150cmの長さです。コンプレッセンは広くかけましょう。
 患者さんの首から上にはコンプレッセンをかぶせてはいけません。カテーテル交換中は患者さんの顔色とか表情を何度も見る必要があります。隠してしまっては困ります。我慢強い人は痛いといわずに脂汗を流します。察知して対応してあげないといけません。話しかける場面も多いです。患者さんの顔を見ながら話しかけないと不自然です。

◆ カテーテルを選択し加工する

●カテーテルの選択
 いろいろな場合があります。
・PTCSを予定している
・PTCSの予定はなく9Fか10Fにする
・単なる交換で同じ太さのカテーテルを使う
PTCSを行うつもりがなければ9Fとか10Fのカテーテルで十分です。これ以上に太くする必要はありません。以下はPTCSを予定している場合の話です。
 通常は2F大きいカテーテルを選びます。これでまず問題はありません。なぜ断言できる? 経験です。もちろん1Fしか太くできないこともありますし、3F太くできることもあります。この話題は「◆ カテーテルだけ抜去する」でしっかり記載します。
 PTBDのあとの最初のカテーテル交換では、使われたカテーテルで話が変わります。トップのセットではドレナージカテーテルは6Fですが、このカテーテルはシースの中を通してあるはずです。シースの太さは2.8mmですから8.4Fです(直径を3倍するとフレンチサイズになります)。10Fあるいは11Fに交換できます。エコー下PTBDでは7Fとか8Fのテフロン製のカテーテルが使われることが多いようです。たいていは2F大きいものでいけます。

●テーパー作製
 カテーテルの加工にはふたつの作業があります。ひとつは自前のテーパーをつけること、もうひとつは側孔をあけることです。住友ベークライトのPTCSカテーテルにはテーパー加工がされ側孔もあけてあります。側孔を追加するだけでそのまま使っている人がほとんどだと思います。
 ですが私はほとんどの場合、自前のテーパーをつけて使います。できあいのテーパー部が短いからです。テーパー部が長いほうが押し込む際の抵抗が少なく挿入しやすいです。それにテーパー部が長ければ、カテーテルを押し込む際に胆管内に入っている部分が長くなり逸脱しにくくなると考えています。
 テーパーをつける方法を説明します。簡単です。ライターを使います。ライターの炎のとぎれるあたりでカテーテルを30秒くらいあぶるのです。ビニールが熱でゆるくなったら引き伸ばします。慣れないうちはカテーテルを引っ張りながらあぶるといいでしょう。ある時点ですっと延びるのが分かりますから、そこで打ち切りです。
 延ばしたら生理食塩水で冷やします。最も細くなった部位で斜めに切断すればできあがりです。先端を斜めに切るのは、カテーテルを押し込んでいくときに有利な気がするからです。根拠は薄いですが。
 コツは、あぶる時にカテーテルを回転させる(なるべく速く)ことです。これでカテーテルは、むらなく熱せられスムーズに伸びます。1カ所だけ集中的にあぶると段差ができます。これはよくありません。慣れてきたら回転させながら左右に振ってみてくさい。2cmくらいの範囲をあぶれば長いテーパーができあがります。

●テーパー加工についての注意など
 まず一つ。テーパーを作る前にカテーテルを濡らしてはいけません。テーパーの途中に瘤ができやすくなります。水のせいで熱が均等に伝わらなくなるためでしょう。気が利く人はカテーテルを受け取ると内部を生理食塩水で濡らしてしまいます。まずいです。内部の水滴はふきとれません。濡らすのはテーパーを作ってからにしましょう。
 テーパーを作る技はカテーテル交換とか内瘻術のいろいろな局面で役に立ちます。練習してください。留意点はふたつだけです。あぶるのをやめるタイミングとひっぱる力の強さです。これらは指で覚えるしかありません。テーパー加工は太いカテーテルほど難しいです。たぶんカテーテルの肉の厚さと関連すると思います。練習は9Fあるいは10Fでどうぞ。
 なおライターを使う方法は万能ではありません。シリコンのカテーテルではちぎれるだけです。テフロンも苦しいと思います。これらの素材のカテーテルにテーパーをうまく作る方法があったら教えてください。

●側孔の作製法
 カテーテルを折り曲げると角が二つできます。どちらかをクーパー(刃がカーブしたはさみです)で切り取ればできあがりです。ここで二つの流派が成立します。カーブの内側で切り取るか、外側で切り取るか、です。私は内側で切るように教育されました。こうすると側孔のへこみはじめる部位(いわゆる「縁」です)が尖らないはずです。縁が尖っていると胆管粘膜にキズができやすく肉芽が形成されやすいのではないか、という理屈です。
 角を切り取る時に、クーパーを45度(わかってください)に当てれば円形の孔があくような気がします。でも実際はカテーテルの軸方向に長い、少しいびつな楕円になってしまいます。カテーテルを折り曲げると屈曲部の膝が引き伸ばされます。この形で角を切り取りカテーテルを伸ばすと、伸びた膝が縮んで孔が楕円になるのです。そう思っています。

●側孔の大きさ
 側孔の大きさには二つの数値を指定できます。カテーテル表面の径と内面の径です。重要なのは内面の径です。9F以上の太さのカテーテルであれば内面の径は1mmで十分と私は考えています(6Fとか8Fなら0.5mm前後でしょう)。大きな側孔を作ると、そこでカテーテルが弱くなります。押し込む力が伝わらなくなります。
 カテーテルを太くして側孔を大きくすれば胆汁ドレナージが良好になると思い込んでいませんか。相手は液体です(少し粘調ではありますが)。胆汁ドレナージが目的ならば内径が1mm前後の6Fとか7Fのカテーテルで十分なのです。一日2000ml以上という流量でも、この太さでカバーできます。側孔をこれ以上に大きくする利点はありません。
 胆汁ドレナージを悪くする大物は側孔から入り込んでくる肉芽です。PTCSで観察すると肉芽はできたてのころ(カテーテル交換の3、4日以内)は半球状です。側孔が小さいほうが肉芽も小さいことになります。カテーテルの内径が2mmなら側孔内面の径を1mmにしておけば安心です。
 結石の破片とか粘液とかを早く体外に誘導したい、という場面もあります。でも瘻孔拡張の経過中であれば我慢してください。瘻孔が完成し16Fのシリコン製のカテーテルを留置できるようになってから、2mmとか3mmの側孔をあけるようにしてください。

●側孔の位置と数
 狭窄部や瘻孔には側孔が入らないようにします。これが大原則です。狭窄部や瘻孔の中に側孔があると腫瘍や肉芽が入り込みやすいと考えてください。そうなるとドレナージ不良です。中原則もあります。テーパーの終了するあたりに側孔をあけないことです。ここで瘻孔を拡張していくのです。側孔があるとひっかかります。何回か泣きました。
 カテーテルにはバリウムの白い線が入っています。側孔をあける時に線を無造作に切ってはいけません。1カ所だけ切ります。通常は一番手前(皮膚側)の側孔でバリウムの線を切ります。カテーテルの進み具合を判定する目印にするのです。
 側孔の数は5個前後というところでしょうか。間隔は3ないし4mmです。この長さは胆管穿刺部から狭窄上縁までの長さで変わってきます。ただし個数や間隔に根拠はありません。好みにまかせます。
 カテーテルを先端から見てバリウムの線の位置を12時とします。まずここに側孔を作製し、隣は3時、次は9時、次は3時というふうに作っていきます。12時のほかはみんな6時というのは心配です。6時の側孔が粘膜に押しつけられてしまうと、12時のものしか働かないという事態になりかねません。3時9時と互い違いに作っておけば、3時のが粘膜に押しつけられても対側と12時の側孔が働くでしょう。
 これで準備が整いました。

◆ 局所麻酔し元のカテーテルを切断する

●局所麻酔
 皮膚とか皮下はもちろんですが腹膜(胸膜)とか肝臓の被膜のあたりも麻酔します。カテーテル1カ所について1%キシロカインを10ml程度使います。皮膚穿刺部近くはカテーテル留置で炎症を起こしているためか、針孔からの出血が止まりにくい傾向にあります。皮膚を刺す回数はなるべく少なくしましょう。

●カテーテルと糸を切る
 皮膚から5cmのところでカテーテルを切ります。この長さがガイドワイヤー操作に最適です。切り離したカテーテルはすぐ取り除いてもらいましょう。写真的雑音になりかねません。基本です。
 そして固定の糸を切ります。ナイロンの糸でしたら根っこを残します。次の固定にまた使うのです。カテーテルに近いところで糸を切ってください。縫い付けてある皮膚が切れそうでしたらあきらめます。交換に時間がかかると麻酔が切れてしまいます。固定の糸のために再度局所麻酔するのは気の毒です。前の糸を使えるようにしておけば注射しなくてすみます。

◆ ガイドワイヤーを送り込む

●ラジフォーカスを扱う時の注意
 ガイドワイヤーはテルモのラジフォーカス(アングル型)を使います。太さは0.035インチ(2.54cm x 0.035=0.89mm)が使いやすいです。ラジフォーカスは国際的に有名で外国では hydrophilic guidewireとかTerumoとか呼ばれています。Hydrophilicの名が示すように水に濡らすとつるつる滑るようになります。ケースから抜く前に生理食塩水で浸しておきましょう。乾いていると滑らないのです。滑らないときは生理食塩水で濡らしたガーゼで水を補給します。
 ガイドワイヤーは右手で持って操作します。私は鉛筆を持つように持ちます。微妙な操作をするには、この持ち方がベストと思っています。
 ラジフォーカスは操作性がよく(目的の胆管に送り込みやすい)腰が強い(先端の数cm以外は曲がりにくい)という特徴を持っています。ただし濡らすとつるつるですから注意が必要です。指でしっかり固定しているつもりでも滑っていることがあります。表面は黒一色ですから滑っていることに気づきにくいのです。ということで鉗子を使います。これでつかめば大丈夫です。
 ラジフォーカスには、もうひとつ注意すべきことがあります。紙製のコンプレッセンを使っている時の落とし穴です。コンプレッセンの上でラジフォーカスが乾くと紙の繊維がくっつくのです。ラジフォーカスの先端を回転させて目的の場所に送り込もうと熱くなっている時には不幸のもとになります。繊維がまとわりついて回せなくなるのです。この現象に気付いたらラジフォーカスをコンプレッセンから浮かせるようにします。

● 原理原則
 ガイドワイヤーはなるべく長く留置したいというのが人情です。ですが原則的には乳頭を越さないようにしましょう。十二指腸液による感染がこわいからです。

●側孔から出てしまう
 ガイドワイヤーはカテーテル先端から出るとは限りません。側孔からも出ます。それでも目的の部位まで送り込めれば不都合は少ないです。ただし側孔からガイドワイヤーがでていると、カテーテルを抜いてくるときに抵抗を強く感じることがあります(ガイドワイヤーがカテーテル外を走行するわけですから)。その際には患者さんは痛みを訴えることが多いです。なるべくなら先端からだした方がいいでしょう。
 カテーテルが胆管狭窄部を通過しているのにガイドワイヤーが側孔から出てしまう場面も多いです。そのためにガイドワイヤーが胆管狭窄部を越えなくて目的の場所に届かなくなります。たいていはカテーテルがカーブしている部位の側孔から出ます。こういう場合は固定の糸を切ります。カテーテルを少し浅くすれば切り抜けられることが多いです。だめなら90度回転させます。狭窄を越えたらやれやれです。
 ガイドワイヤーが抜けてしまわないように、鉗子でつかんで次のステップに進みます。

●透視画面に手が入ってはだめ
 レントゲンの照射野に手が入っても気づかない、あるいは気にしない人がいます。いけません。被爆します。ちょっとした注意で被爆は減らせます。被爆に関しては勧告しても改めない人が多いです。なぜでしょうか。そういう教育を受けなかったためでしょう。ですから私はいいます。「あんたはあきらめている。でも、あんたのやり方を見て覚えていく人がいる。見られている時ぐらいは配慮するように。」
 当科での第一選択である影像下直達法で留置されたカテーテルの交換では照射野に手が入りやすいです。レントゲンの管球を頭のほうに20度程度傾けると(頭前斜位といいます)手が入りにくくなります。活用してください。そして照射野をこまめに絞りましょう。
 あなたのやり方を見て育つ人がいるのです。

◆ カテーテルだけ抜去する

●念のためのおせっかい
 ガイドワイヤーを右手で持ってください。カテーテルを左手で少しづつ浅くします。透視画面でガイドワイヤーの位置を確認しながら行ってください。ガイドワイヤーが浅くなったら、しかるべき位置まで戻します。ここは前半戦の正念場です。細心の注意を払いましょう。

●抜くときの手ごたえが重要
 抵抗なく抜けてきたら一安心です。皮膚のすぐ上で鉗子を使ってガイドワイヤーをつかみます。カテーテルを抜き取り次の操作を開始します。
でも、いつもすんなり抜けるわけではありません。体に張りついてしまったように抵抗を感じる場合があるのです。二つの状況が考えられます。肉芽が側孔にはまり込んでいる。瘻孔がきつい。いずれにしても引き抜くしかありません。ゆっくりひっぱります。
 肉芽のせいなら、ぽんと抵抗が消えて、あとはすんなり抜けます。やれやれと思ってください。2F太いカテーテルを送り込める可能性が高いです。ずっと抵抗が続く場合は、1F太いのに交換できれば成功と考えてください(ガイドワイヤーが側孔から出ているための抵抗は話が別です)。すんなり抜けるか抜けないかは造影時にある程度予測できます。忘れてしまった人は「◆ 造影する」を読み返してください。
 肉芽で抜去困難になるくらいですと胆汁のドレナージは悪いはずです。カテーテルを抜いてくると胆汁がどっとあふれてくることもあります。ぞっとしてください。発熱していたら、これが原因と考えてください。

●血液があふれてくる!
 カテーテルを抜去すると出血してくる場合があります。勢いが弱いのは肝静脈あるいは門脈の細い枝からでしょう。2cmとか3cmの高さに吹き出すくらいなら太い門脈と思われます。稀にもっと勢いよく出ることもあります。動脈と考えざるをえません。
 あわててもいいですがパニックに陥らないように。まずガーゼで皮膚穿刺部を覆います。血液が体表面をつたって流れるのを防ぐのです。患者さんはあなたより不安がっています。「先生何か流れてます!どうしたんですか?」と言われてしまわないようにしましょう。
 こういう時のためにカテーテルを準備しておいたのです。すみやかにカテーテルを送り込みます。カテーテルが入っていけば出血は治まります。え?準備してなかった。では、今まで入っていたカテーテルを戻します。え?!抜いてすぐ捨てた。じゃあ同じ太さのカテーテルを挿入してください。ということです。抜いたカテーテルは交換が終了するまで捨ててはいけません。
 出血した患者さんの次の交換は気が重いです。でも、けっこう止まっているものです。「カテーテルが入れば止まる」原則を胸に、抜かりなく準備して手早くやりましょう。

◆ 新しいカテーテルを押し込む

●回転させながら押し込むべし
 単純に押し込むだけでカテーテルが入ってしまうこともあります。幸運と思ってください。たいていは押し込んでいくと進まなくなります。そうなったらカテーテルを回転させながら押し込みます。これで進み始めるはずです。回転方向は時計回り、あるいは逆?回しやすいほうでいいです。なぜか回転を逆にすると進むこともあります。
 なぜ回転させると進むようになるのでしょうか。難問です。ナイフで肉を切る場面を思い浮かべてください。単純に下に押してつけてもあまり切れません。でも手前に引くとすんなり切れます。実はこれも説明困難ですが似たことが起こっているはずです。何かの本でナイフを引くと見掛け上ナイフが薄くなる、と読んだことがあります。カテーテルを回転させると瘻孔はテーパーが伸びたと勘違いするのかもしれません。

●進まない時は
 なかなかカテーテルが入っていかない時はカテーテルの先端に気を取られてしまいます。でも、腹壁や胸壁と肝臓の間でカテーテルがたわんでいないか注意してください。よくあるのです。挙げ句の果てにガイドワイヤーごと逸脱してしまったらたいへんです。
 にっちもさっちもいかなくなった時、何を目安にギブアップするか教えましょう。バリウムの線に注目します。回転させながら押し込んでますよね。カテーテル先端のバリウム線がゆっくりでも回転していれば望みはあります。もし先端が回転しないでバリウム線がガイドワイヤーをらせん状に取りまくだけでしたら諦め時です。1F細いカテーテルで再挑戦してください。

●どこまではいったかな
 側孔がみんな胆管に納まれば勝利宣言してもよいでしょう。透視画面ではどこまで入ったか分かりにくければ写真判定です。一番手前の側孔で切り取ったバリウム線がここで役に立ちます。
 造影剤が薄くなってどこから胆管か分からない?造影しましょう。50cmの延長チューブを2本と造影剤を吸った10mlの注射器を用意します。これらを接続し延長チューブに造影剤を充填します。そしてプラス側からガイドワイヤーを入れます。ガイドワイヤーは120cmですから延長チューブの中にみんな納まるはずです。カテーテルに延長チューブを接続して造影します。延長チューブの空気を造影剤で追い出してから造影してくださいよ。

◆ ガイドワイヤーを抜く

●注視しながら抜きます
 十分入ったかな、となればガイドワイヤーを抜きます。さっと抜いてはいけません。思い込みというのは誰にでも起こります。ガイドワイヤーを抜いてみたらカテーテルは胆管に入りかけだったという経験があります。
 ガイドワイヤーをゆっくり抜いてくると先端のカーブが直線化する部位があるはずです。ここがカテーテルの先端です。もう少しガイドワイヤーを抜いてくるとバリウム線が現れます。これを確認しカテーテルの位置はOKとなればガイドワイヤーを抜き取ります。まだ浅いということなら押し込み作業を再開します。
 体格のいい患者さんでは透視が見づらくてガイドワイヤー先端の直線化が分かりにくいことが多いです。この場合は写真でカテーテルの位置を判定するしかありません。9Fや10Fですとカテーテルのバリウム線はガイドワイヤーより細いです。慎重に読影してください。

●仕切り直しは慎重に
 もう少し入れよう、ということはよくあります。ガイドワイヤーを入れ直して再開です。この時には注意が必要です。ガイドワイヤーは側孔から出やすいのです。
 気付かずにそのまま押し込もうとすると失敗するでしょう。カテーテルはガイドワイヤーが入っていないと直線化します。ですから、カテーテルの先端が胆管壁に突き刺さったような状態になってしまうのです。こうなると滑ってくれません。カテーテルを押し込む時の手応えが今までと違っていたら写真撮影でガイドワイヤーの走行を診断してください。急がば回れです。

●浅くしよう
 カテーテルが深すぎる、ということもよくあります。少しづつ浅くしましょう。たいてい抵抗があるはずです。でも抵抗があるからといって、ぐいと引っ張って浅くなりすぎたら悲しいことになります。慎重にどうぞ。
 カテーテルを押し込んでいく時に最も抵抗する場所は胆管穿刺部、次は筋膜あるいは筋鞘です。カテーテルを押し込み終わった時点では瘻孔内のカテーテルは2カ所で固定され、湾曲した状態になっているはずです。カテーテルを浅くしてくると、まず、この部分が直線化します。それからカテーテルが浅くなってくるわけです。これでよしとなった時には瘻孔内のカテーテルは直線状態になっています。通常はそのまま皮膚に固定します。
 カテーテルがずっと直線状態でいてくれればいいのですが、そうはいきません。瘻孔内のカテーテルは多かれ少なかれ湾曲してくるのです。一番手前の側孔を胆管壁貫通部の直下においておくと、それが瘻孔内まで出てしまうことがあります。先を見越して浅くしましょう。

◆ カテーテルを固定し胆汁ボトルにつなぐ

●ナイロン糸で固定する
 2−0のナイロン糸を使います。絹糸を使うと感染を起こして皮膚にびらんができたりします。固定は2針です。1針ですとカテーテルが浮きやすいのです。
 ナイロン糸は長持ちします。皮膚にゆるく大きくかければ1月は大丈夫です。ということなのでカテーテル交換のたびに皮膚に針をかけるのはかわいそうです。使えるうちは接ぎ木方式で固定しましょう。交換前に糸を切るときに皮膚の部分を残しておくのです。そうすれば接ぎ木ができます。
 皮膚に残す「根っこ」部にはちょっとした気配りが必要です。先にいいましたように、針を大きくかけることです。1cm程度がいいです。ゆるく結びます。皮膚をきつく縛り込んではいけません。皮膚が少しづつ切れてきます。痛々しいです。
糸は7回か8回くらい結んでからカテーテルを固定します。これだけ結んでおけば次の交換で糸を切ってもほどけません。これ以上遊びはおきません。遊びをおくと何かの拍子に深くなり過ぎるかもしれません。心配です。
 固定の直前と後にはカテーテルの位置を確認します。そして注入した造影剤を十分回収できるかどうか調べます。カテーテルの位置はちょっとしたことで変わります。注意し過ぎということはありません。
 糸は結び目から1cmくらい距離をおいて切ります。ナイロン糸は硬いです。短いと皮膚に突き刺さって痛いことがあります。ちくちくして一晩眠れなかったという不幸がありました。長ければ皮膚をつついても曲がって痛くないのです。

●不幸の種
 PTCSカテーテルは手術の際に留置するドレーンなどと比べるとずいぶん硬いです。糸はあまりカテーテルにくい込みません。結紮したときに糸が斜めになっているとまずいことになります。糸がカテーテルから浮いてしまうのです。縛った直後に糸が浮いて、おいおいとなったこともあります。次のカテーテル交換の時に逸脱しかけていたこともあります。糸は長軸に直角に縛りましょう。

●胆汁ボトルに接続する
 糸による固定が終わったらボトルにつなぎます。体からボトルまでの管の長さは患者さんに決めてもらいます。短いほうがいいという人もいれば、長くないと困るという人もいます。
 三方活栓は使いません。トラブルのもとだからです。三方活栓のコック部分の内腔は狭いものが多いです。血液塊とか胆砂とかがひっかかって胆汁の流れを悪くします。誤ってロックされてしまうこともあります。使わなければこんなことは起こりません。1日に5回以上の洗浄が必要ということなら三方活栓をつけておく意味はあるでしょう。1日に1回とか2回の洗浄ならメリットはありません。
 どうしても三方活栓をつけたいという時はカテーテルの次に接続します。三方活栓の目的は洗浄でした。カテーテルと三方活栓の間に延長チューブをいれると洗浄効率を悪くします。延長チューブがデッドスペースになるのです。
 カテーテルに直接三方活栓をつけると皮膚に当たりやすくなります。突出部が皮膚を押しつけるようではいけません。三方活栓の接続方向やテープ固定の位置を工夫します。とにかくトラブルの元です。なるべく使わないようにしましょう。

●テープによる固定など
 皮膚穿刺部には小さいパッドをあてます。ガーゼを厚く当てる必要はありません。カテーテルの周りから胆汁が大量にもれることはありません。あってはいけません。
それからカテーテルを皮膚にばんそうこう固定します。IVHカテーテルの固定と同様です。

◆◆抜けてる!はねてる!

●あれ?
 胆汁の流出が急に悪くなった。危険信号です。患者さんが今までと違う痛みを訴えている。まずいです。ポータブルで上腹部レントゲン写真を撮影し写真でカテーテルの走行を診断します。いつもと違う状況になったら患者さんは不審に思います。早めに状況を説明し納得してもらいましょう。
 カテーテルが反乱を起こす場所は決まっています。腹壁と肝臓の間あるいは胸壁と肝臓の間(多くは横隔膜と肝臓の間)です。この場所でカテーテルがたわんでいたら透視室で修復です。抜けていたらPTBDです。
 カテーテルを逸脱させやすい検査があります。肺機能検査と内視鏡検査です。肺機能では大きな呼吸をさせます。肺の下には肝臓があるのです。危険です。内視鏡検査は左を下にして横になります(左側臥位といいます)。ERCPでは腹ばいになったりします(腹臥位です)。肝臓は重い臓器です。左に移動したり腹側に移動します。危険です。
 これらの検査は瘻孔がしっかりするまで待ちましょう。どうしても必要なら検査直後に腹部単純写真を撮影しカテーテルの走行をチェックします。抜けかけ程度なら修復可能です。

●あら
 まずゆっくり造影します。カテーテルが抜けてきていると側孔のいくつかが腹腔内にでています。造影剤が肝臓の表面を流れて横隔膜下にたまったりします。驚かないでください。
 発見が早ければカテーテルの先端が胆管内に入っていることが多いです。この場合は胆管が造影されてきます。ここではじっくり胆管を造影します。何かの拍子にカテーテルが肝臓の外にはねてしまう可能性も高いです。そうなったら再度PTBDになります。胆管が十分造影されていれば穿刺の作業にすぐ入れます。
 カテーテルが肝臓の外にはねていたらPTBDです。ですが、まずカテーテルを8Fに交換し横隔膜下まで入れておきます。漏れた胆汁をドレナージするためです。このあとは通常の手順でPTBDを行ってください。
 
●修復のコツ
 カテーテル先端が胆管内にとどまっていてくれれば修復できる可能性があります。造影した後に0.025のラジフォーカスをゆっくり送り込んでいきます。0.035は使いません。腰が強いのです。押し込んでいくとカテーテルが肝臓の外にはねていったりします。最も目撃したくないシーンです。0.025だったら絶対大丈夫とはいいませんが。
 ガイドワイヤーがうまく胆管に入ってくれたら大成功です。そのまま奥に送り込みます。できれば狭窄を通り越して十二指腸まで送り込みます。カテーテルは抜けかけているのです。深く留置しておくに越したことはありません。私は十二指腸の中でループができるまで入れてしまいます。
 ここまできたら通常のカテーテル交換と同じです。カテーテルだけを抜いて新しいカテーテルを留置します。ここで自前の長いテーパーがものを言います。ぜひどうぞ。
 カテーテルをじわじわ抜いてくるとループが小さくならずに抜けてくることがあります。おそらくカテーテルが逸脱してから時間がたっていて道ができかかっているのでしょう。ループがそのままではまずいです。ガイドワイヤーがはねてしまいます。カテーテルを回転させながら抜いてきます。そうするとループがするすると小さくなります。大きくなる?!逆に回転させてください。

●何度も抜けるぞ
 います。こういう人がいます。基本は早期発見です。こまめに単純写真でチェックします。そして早めに交換します。カテーテルはできるだけ深く留置します(でも肝門部で胆管が分断された症例では、カテーテルの先端を十二指腸に出してはいけません)。
 カテーテルは太いほうが抜けにくいという印象があります。11Fとか12Fにできるのならそうします。何度も逸脱した患者さんにピッグテイルをいれたら抜けなくなった、という経験もありましたね。
 PTBDが2本施行されている症例ならUチューブにするという手が使えます。片方からバスケットカテーテルを総胆管に送り込み開きます。もう一方から0.025のガイドワイヤーを総胆管に挿入します。たいていは苦労することなくバスケットカテーテルでガイドワイヤーをつかめます。つかんだらガイドワイヤーを引っ張りだします。そしてドレナージ用のカテーテルを片方の皮膚穿刺部から挿入し、もう一方から外に出します。これなら絶対逸脱しません。
 スマートではありませんが、ガイドワイヤーを入れっぱなしにする手もあります。ガイドワイヤーで腰を強くすれば抜けかかっても戻るだろうという考えです。この場合はガイドワイヤーを十二指腸まで送り込んでおきます。体外にはガイドワイヤーが80cmとか90cm。これは延長チューブを接続して収納し端はボトルの中に納めます。ガイドワイヤーが体内に全部入ってしまうかもしれない、と心配でしたら、ボトル端を折り曲げて縛っておきます。この手は有効だと思っています。何回か助かりました。
 ただし注意してボトルを交換しないとガイドワイヤーが抜けてしまいます。事情を知っている人が交換してください。連絡不十分で「管の中の変なものは取っておきました、異物をカテーテルに残したままにしないようにしてください」と注意されたこともあります。しっかり申し送りましょう。

◆◆軌道修正

●修正の必要な状況
 PTBDの時にカテーテルを下流側に向けられないことがあります。これはカテーテル交換の際に何とかしなければなりません。カテーテル交換の前に造影してみたら、B3(左外側前枝)を貫通して左肝管に入っていたということもたまにあります。そのほかの驚愕すべき事例としては、左肝管を貫通して左尾状葉枝に入っていた、左肝管を貫通して右肝管に入っていた、右肝管を貫通して左肝管に入っていた、という症例を経験しています。これらも軌道修正する必要があります。

●方法は簡単です。
 PTBD後1回目のカテーテル交換なら8Fのカテーテルを用意します。2回目以降なら今まで留置されていたカテーテルと同じか1F細いものを用意します。まずはテーパー加工です。先端から3cmから5cmの位置に長い大きな側孔を一つあけます。長さは2cm程度、大きさはカテーテルの半周程度です。ここからガイドワイヤーをカテーテルの外に出すのです。
 カテーテルを交換し側孔をしかるべき位置に持っていきます。ここからガイドワイヤーを目的の胆管内に送り込みます。うまく誘導できたらカテーテルだけ抜いて、留置用カテーテルを送り込みます。留置用カテーテルの太さは今まで留置されていたものと同じものがいいでしょう。
 外に出て欲しくない時は出る、出て欲しい時は出ない、ガイドワイヤーはそういうものです。側孔から外に出そうとすると意外に出てくれません。そんな時は側孔がカテーテルのカーブの内側に位置していることが多いです。カテーテルを180度回転し側孔をカーブの外側に持っていきましょう。

●修正の時期は
 軌道修正は早い時期にやっておいたほうがいいです。カテーテルが上流側に向いていたら逸脱しやすそうです。もちろん内瘻術は不可能です。胆管を貫通したケースでは軌道修正をすることでカテーテル交換が楽になることが多いです。胆管壁を3回貫通していたのが1回になって抵抗が減るためと思っています。

◆◆内瘻術の極意いくつか

● 極意と書いてしまいましたが
ガイドワイヤーの先端を胆管狭窄部の中心に持っていき押し込む、これがすべてです。なかなか難しい症例も多いです。膵頭部癌による胆管狭窄では胆管は狭窄部上縁で屈曲しています。ガイドワイヤーの先端のカーブを屈曲に合わせて(図が必要かな)押し込まないと通過しません。胆嚢癌による肝門部での胆管狭窄でも同様なことがあります。

●ガイドワイヤー操作
 ガイドワイヤーを思いどおりに操作することはけっこう難しいです。うまくいかないとがしゃがしゃ動かしてしまいがちです。いけません。コツはゆっくり動かすことなのです。ゆっくり動かすと先端が何かにひっかかる動きが見えます。跳ねる動きも分かります。指にも、ひっかかった抵抗や跳ねる振動が伝わってきます。こういった情報を生かしてください。あせらずゆっくり操作しましょう。
 実はもう一つあります。思い出してください。うまくいかない場面の多くは狙う胆管が造影されていないときです。目的の胆管が造影されていればなんとかなるものです。ですからコツはこうなります。見えていない胆管を「見てしまう」のです。ここに開口部があるはずと診断してガイドワイヤーを操作するのです。闇雲はいただけません。

●本当の極意はPTCSを使うことです
 10分がんばって通過しなければあきらめましょう。PTCSを使えばいいのです。胆道鏡のアングル機能を利用すれば、ほとんどの症例で通ります。2.8mmの胆道鏡を用意してください。9F以上の瘻孔なら入ります。

●ガイドワイヤーが狭窄部を通過したら
 十二指腸まで送り込みます。安心のためです。内瘻術では、カテーテルは狭い瘻孔を通って、さらに狭窄部を通過しなければなりません。内瘻術の際は肝臓の表面でカテーテルがたわみやすいのです。逸脱の危険性が大きいと認識してください。
 内瘻術は9Fとか10Fから始めます。容易に送り込めたら2F太くしてもいいです。でも無理はいけません。

◆◆単純でないドレナージのカテーテル交換

●2孔2管
 左葉と右葉にそれぞれ1本ずつドレナージということはよくあります。カテーテルが2本とも総胆管に入っていると最初の交換はやっかいなことが多いです。2本ドレナージされているということは総肝管に狭窄があることを意味します。この狭窄の中にカテーテルが2本通っていて6F2本を9F2本にしなければならないということです。やっかいです。
 カテーテルは別のカテーテルのブレーキになるのです。これは塩化ビニールでもシリコンでも同じです。動きを邪魔します。試しに2本を接触させて逆方向に滑らせてみてください。かなり抵抗があるはずです。ということで2本目は気長にかまえてじっくり押し込みましょう。

●1孔2管
 一つの瘻孔から2本のカテーテルを挿入することもけっこうあります。たとえば、左外側枝にPTBDが入っていて右前上枝に1本、総胆管に1本というふうです。
 単なる交換でしたら苦労は少ないです。太くしようとすると面倒になります。1本ずつ交換していくとカテーテル同士が邪魔しあうのです。一度に2本送り込むという手が有効です。この場合ガイドワイヤーも2本使います。助手は手際よく鉗子で2本のワイヤーをつかまないといけません。要熟練です。送り込む時はカテーテルを間違えないように気をつけます。基本です。
 カテーテルの位置の微調整にも注意が必要です。とにかくカテーテルどおしは滑りにくい、というか、仲がいいのです。片方を浅くする場面が危険です。一本を指で固定しながら片方をひっぱることになりますが、よく手元も見ててください。ひっぱってないカテーテルがいっしょに抜けてきてませんか?微調整をする時は動かさないカテーテルにガイドワイヤーを入れておきます。これで腰が強くなって思わぬ移動事故が減ります。でも万全ではありません。あくまで慎重にどうぞ。

●1孔T管
 経皮経肝的に留置したTチューブを交換するという話です。
 まずガイドワイヤーを2本用意します。そして、皮膚側の脚から2本のガイドワイヤーを肝内と肝外の脚に送り込みます。そんなことができるのかと思う人もいるでしょうが、できるのです。ワイヤーはなるべく奥まで進めておきます。そしてTチューブを抜去します。けっこう抵抗がありますが抜けなかった人はいません。この時にガイドワイヤーが浅くならないように細心の注意を払います。
 新しいTチューブはいつものように留置します。あせらずじっくりやってください。瘻孔が3mmだったことを考えると瘻孔拡張なしで脚が2本通るとは思えないでしょう。でも通ります。抜いたときの状況を考えてください。2本の脚が抜けています。

◆◆ちょっとした幾何問題

●9Fを二本押し込んだら
 一つの瘻孔に9Fを二本押し込む場面はよくあります。この時、瘻孔内面の周径は何Fでしょうか。カテーテルは変形しない、瘻孔は柔軟に変形するとします。面倒ですから円周率は3にしましょう。

●9Fと6Fを一本ずつ押し込んだら
 これは難しそうです。誰か教えてください。

●6Fを3本留置したら
 これは簡単です。

●外形3mmのシリコンチューブ2本ではどうかな
 シリコンは柔らかいです。自在に変形するとしたらPTCSカテーテルの9Fを2本押し込むのと異なる数値になりそうです。経験的には、3mmのTチューブを挿入するのに12Fの瘻孔でけっこういけてしまいます。さて。

◆◆助手のかたがたに

●大事な出番
 助手がどうしても必要な場面があります。「カテーテルだけ抜去する」ところと「カテーテルを挿入する」ところです。ラジフォーカスを鉗子でつかまえ持っている人が必要なのです。
 カテーテルだけ抜去してきてカテーテル先端が皮膚の外に現れたら出番です。すかさず鉗子でラジフォーカスをつかまえます。鉗子の先端近くでつかまえてください。鉗子は体のカーブに合わせて湾曲を下向きにして持ちます。こうすると皮膚ぎりぎりの位置でラジフォーカスを把持できます。見ていて安心です。
 そのあとは術者がラジフォーカスをつかんだ鉗子を押さえます。あなたが初心者だったら頼まれても辞退したほうが無難です。横を向いたとたんにラジフォーカスを引き抜いてしまうかもしれません。思わず鉗子を強く握ってラジフォーカスを逃がしてしまうかもしれません。
 新しいカテーテルを皮膚まで進めるのも助手の役目です。カテーテルにはテーパーがかかっていて進めにくいです。力任せはいけません。ラジフォーカスとカテーテルを水浸しにするのがコツです。
 「カテーテルを挿入する」ところも助手が重要です。基本的に術者はねじりながら押し込みます。両手を使ったりしてラジフォーカスを持てないことが多いです。ラジフォーカスをキープするのは助手の役目です。カテーテル後端のすぐ上でラジフォーカスをつかまえます。鉗子を使います。もう一本鉗子を用意しておいてカテーテルが進んだら追いかけてラジフォーカスをつかまえます。そして前の鉗子を放して次に備えます。間隔は2cm以上あけないようにします。カテーテルの重みでずるりと抜けたりしますよ。

●口にしてはいけないセリフ
 原則は必要最小限のことしかしゃべらないことです。確認の言葉だけにしておけば無難です。でも緊張が緩むと口に出てきます。緊張すると口にしてしまう人もいますが。
 「あっ」「しまった」とか「まちがえた」は絶対にいけません。患者さんは耳を立てています。不安に陥れる発言はタブーです。今時こんな人はいませんが基本ですので書いておきます。
 術者の神経を逆撫でするセリフもまずいです。私の経験では無邪気な発言が最強最悪です。「どうして汗をかいているんですか?」「いつもこうですか?」といったところです。場の空気を読んでください。トラブッた時でも術者は平静なふりをします。けなげな心理を思いやってください。雰囲気がつかめなかったら看護婦さんやレントゲン技師さんの表情から推測しましょう。

◆◆レントゲン技師さんへの意思伝達法

 カテーテル交換では透視画面をしつこく絞ります。指への被爆を減らしたいのです。画面を絞ると細かい所見が見やすくなるという利点もあります。ですから絞りをせっせと開閉したり台を細かく動かしてもらうことになります。そのとき困るのが意思伝達です。特に「右に」とか「左へ」といった言葉がやっかいです。たいていはうまく伝わりません。右?あんたの右手の方向?患者さんの右手の方角?ということになります。慣れた技師さんならいいのですが、いつもそうとはいきません。
 基本はいらつかないことです。怒らないことです。どなられてあせると間違いやすくなります。台が意思とは反対に動いたら、ちょっと息を吸って(ため息はいけませんよ)「反対に動かしてください」といいましょう。そして言葉を選びましょう。「体を私のほうに動かしてください」とか。「南のほう」とか「西方面」とかも使えると思います。
 気が利く技師さんには助かることが多いですが時にまずいこともあります。たとえばガイドワイヤーの先端を追いかけて台を動かしたりします。たいていは何事もなく過ぎますが重大なことになる危険性をはらんでいます。あらかじめ指示がなければ台を動かさないように頼んでおきましょう。ついでに、画面を勝手に広げないことも。

◆◆看護婦さんへの意思伝達法

 看護婦さんにやってもらうことはいっぱいあります。必要な事項は早めに伝えておきましょう。「きょうは13Fに交換するつもりです」とか「カテーテルが抜けかけていてPTBDをやりなおすことになるかもしれない」とか。
 見栄をはってもしょうがありません。「12Fも用意しておいてください」とか「PTBDセットもそろえといてください」とはっきり伝えましょう。

◆◆幾何問題の答え

●9Fを二本
 15Fです。

●9Fと6Fを一本ずつ
 いちおう12.7Fと概算しています。

●6Fを3本留置
 12Fです。

●外形3mmのシリコンチューブ2本
 チューブが半円に変形すると10.8Fになります。

◆◆蛇足です。旧版の前置きです。
 カテーテル交換は、ガイドワイヤーを入れる>ガイドワイヤーを残しながらカテーテルを抜く>目的のカテーテルを押し込む>ガイドワイヤーを抜く>カテーテルを固定するという作業です。地味な仕事といっていいでしょう。この手引きを作ってはみましたが、読んでくれるひとがいるかなあ、という気もします。
 でも、慣れてない人とか、慣れてはきたけど自信はないぞ、という人がいるでしょう。この手引きは、そういう人たちとか、助手の初心者を思い浮かべながら書きました。
 きっかけははっきりしています。学生さんたちです。同じことを何度もしゃべるのが嫌になったのです。それに、思いつくままにしゃべる方式では、抜けや落ちがでます。不正確になりがちなことも問題です。これらを解決する手段として、文章を作ろうということになりました。触媒さんたち、ありがとう。