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■□■PTBDの手引き□右の巻□□□□
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■□■□□□器官調節外科□神谷順一□□
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◆前置き
●あらまし
右も左も手順は同じです。造影し穿刺部位を決定して穿刺、なんとかラジフォーカスを送り込んでカテーテルを留置、ということです。ですが、右の方がすんなりいかないことが多いです(当者比)。ということで、この文章の後半はトラブル対応ものになっています。
●設定
右葉にPTBDとなると、ターゲットとなる胆管はいっぱいあります。前区域では、B8c、B8b、B5b、B5c、あるいはB8bc、B5c+8bといった肝門側の枝が主なところです。後区域では、B6a、B6b、B6c、そして右後枝といった部位になります。
ここでは、右肝管狭窄で右前枝と右後枝が分断された症例を想定して話を進めます。こういう症例では、前区域ではB8c、後区域ではB6bにPTBDを行うことが多いです。
穿刺部位となる胆管枝の拡張は5mm程度にしましょう。よくある太さです。左の巻と同じように、患者さんは意識がはっきりしていて、10秒くらい呼吸を止めることができる人とします。キライディティ症候群はありません。腹水もありません。出血傾向もありません。亀背もありません。内蔵逆位もありません。
◆B8cへのPTBD
●なにはともあれPTC
USでねらう胆管は、B8aあるいはB5a+8aあたりになることが多いです。とにかく穿刺しましょう。左の巻に書いてある注意を守ってください。
胆汁が引けたら2ml吸引1ml注入を繰り返します。胆汁が引けなければ、造影剤を0.5mlくらい注入します。胆管が造影されてきたら、そのまま注入を続けます。造影剤は胆汁より重いので、造影されてくる枝はB8cかB8b、あるいはB8bcです。これらが前区域の中で一番背側に位置するからです。
PTBDを成功させるコツの一つは、十分な胆管造影を得てから穿刺することです。B8cがこれ以上は鮮明に造影されないというところまで造影剤を注入します。胆管が濃く造影されていれば、穿刺針が胆管を押した時の造影剤の逃げや、穿刺針が胆管に入った時のリング状の造影剤の抜けがよくわかります。そして、穿刺針を抜いてきた時に、濃い造影剤が外筒に流れこんできます。造影剤の流出があるのかないのか悩む、というのが泥沼への第一歩なのです。
昔ながらの方法で側胸から穿刺する方法も少し説明しておきます。皮膚の穿刺部位や穿刺方向は左の巻で説明したのと同じです。ただし、穿刺部位を1cmくらい腹側にして、剣状突起の基部をねらって穿刺すると、前枝に当たる確率が高くなるような気がします。この方法でも造影される枝はB8cあるいはB8bです。
●穿刺部位を決めて体勢を作る
狭窄上縁から3cm、できれば5cmくらい離れた部位に穿刺したいです。透視画面で検討してください。指を入れてはいけません。鉗子を使います。
ここだ、というところほど肋骨にさえぎられています。そういうものです。右前斜位(第一斜位)にします。そうですね、30度弱かな。きっと穿刺したい部位が肋間になるでしょう。だめなら、少し息を吸って止めてもらったり、息を吐いて止めてもらったりします。どうですか。まだ穿刺したい部位が肋骨でじゃまされていますか。でしたら、透視で見ながら斜位の角度を加減してください。画面に指が入らないように注意してくださいよ。
体位が決まったら、右腰と右肩の下にクッションを入れてもらいます。まだ先は長いと思ってください。右前30度の姿勢を支えなしにキープするのは大変です。クッションで助けてあげましょう。
●局所麻酔と皮膚切開
皮膚穿刺部から始めて、肋間、横隔膜、肝表面に1%キシロカインを注射します。肋間動脈は肋骨下を走行します。この動脈を損傷しないように、穿刺ルートは肋間の下半分(肋骨上縁の少し上)を通過するように設定してください。
皮膚を3mm切開します。
●いよいよ穿刺
左の巻で書いたように、穿刺針を外筒に装着します。いよいよ胆管穿刺です。
穿刺針の先端を皮膚切開部に置きます。そして穿刺針の先端が透視画面の中央にくるように台を調節します。画面上で、針の先端が胆管穿刺予定部位と重なりますか?なかなか重ならないようなら、斜位を強くするなり、管球を頭側(あるいは尾側)に少し傾けます。
針の先端と穿刺予定部位が重なるようになったら、画面を絞ります。そして針を起こして、画面上で丸になるようにします。患者さんに、針を刺します、痛いかもしれませんが心配ありませんと伝えます。
患者さんに適切なところで呼吸を止めてもらい、画面を見ながら針を進めます。穿刺針が胆管を押すと、胆管内の造影剤が少し薄くなります。患者さんに、もう少し針を進めます、痛いかもしれませんが、体をねじったり、腕を振ったりしないでください、と話します。そして3mmから4mm針を進めます。このときに抵抗を感じることが多いです。
さあ、もう息をしてもらっていいです。
●外筒を残し穿刺針を抜く
針の先端と胆管穿刺部位がいっしょに動いていますか。わかりにくかったら針を動かしてみます。いっしょに動くようなら一安心です。外筒を左手で把持し、穿刺針をゆっくり抜いてきます。外筒の中に造影剤が流入してきますか?入ってくればOKです。
入ってこないのでしたら、胆管の中に白丸があるかどうか、目を凝らして見てください。あれば、胆管を貫通しているのです。すこしづつ外筒を浅くしてきます。どこかで造影剤が流れ込んでくるはずです。白丸がなければ、浅い、あるいははずれていることになります。穿刺針をもう一度装着して、胆管めがけて針を進めてください。もう一度やり直します。
●ラジフォーカスを送り込む
外筒に胆汁が流入してきたら、穿刺針を抜ききってください。黄色あるいは透明な液体が出てくることが多いですが、赤い液体が流出することもあります。あわてなくてもいいです。造影剤が外筒に入ってきたのを確認してたはずです。hemobiliaです。ラジフォーカスを送り込みます。この時、カーブの先端が肝門を向くように入れていきます(わかってください)。
うまくいく時は、抵抗なく入ります。そして、あなた(患者さん?)が本当に幸運でしたら、何の苦労もなくラジフォーカスは総胆管まで進んでしまいます。
●先へいかない
狭窄部上縁で反転することも多いです。どうしましょうか。
総胆管にラジフォーカスを通すコツは、ラジフォーカスの先端を狭窄上縁でゆっくり回転させることです。ちょっとでもひっかかりを感じたら、そこで回転をやめて、ほんの少し逆回転させます。そして、そろそろと送り込みます。入る時は抵抗は少ないです。
狭窄が長い症例では、進めていくと抵抗を感じることがあります。B5bとか左肝管の開口部にひっかかるのでしょう。回転させながらゆっくり押してください。無理に押し込むと、拡張した胆管の中でたわんではじかれてしまうことがあります。
ラジフォーカスがB5bのほうに入っていくことがあります。総胆管になかなか入らない症例でしたら、次善ということでカテーテルを送り込みましょう。
いろいろ試みても胆管穿刺部のほうに反転するだけ、ということでしたらあきらめます。そのままカテーテルを送り込みます。カテーテル交換の時に何とかしましょう。
●カテーテルを送り込む
一番ドレナージがよくなるように側孔をあけます。基本は、狭窄部には側孔をあけないことです。留置するカテーテルは6Fです。たいていの狭窄は、テーパー加工なしでそのまま通過します。
●皮膚に固定
これは左も右も変わりません。ゆっくりどうぞ。
体格のいい人では、外筒を切らなくてもよいことがあります。そんな場合は、青のストッパーは省略してもいいでしょう。
◆B6bへのPTBD
●項目は作りましたが
B8c編に加えることはあまりありません。
体位も右前斜位にすることが多いですし。
B8cへのPTBDとの一番の違いは、ラジフォーカスが総胆管に進みにくいことです。わたしはPTBDのときには、深追いしません。最初のカテーテル交換のときに、改めて攻撃します。身に沁みているのです。
●見えないターゲット
右後枝の9割は北回りです。右門脈の頭側を走行して右前枝や左肝管に合流します。通常は右前斜位で穿刺しますから、透視画面では後枝本幹は筒状に造影されます。ところが造影剤は重いので後枝先端はまず造影されません。わたしたちは見えない狭窄部を相手にしなければならないのです。厳しいです。
でもカテーテル交換のときには、右後枝の胆汁うっ滞は解除されています。狭窄部までしっかり造影されます。ねらい所がよく分かり、戦いやすいのです。PTBDのときに決めなければならないことはありません。B7に送り込んでもB6aにでもかまいません。
●尾状突起枝(B1c)にだまされるな
右後枝本幹には尾状葉枝が複数本合流します。細い枝ですが、ラジフォーカスはけっこう入り込みます。へんなほうへ進んだら尾状葉枝と診断しましょう。
やっかいなのはB1cです。B1cにラジフォーカスが入ると、総肝管に入ったように見えるのです。総肝管が造影されていないとなかなかわかりません。違いは、途中で進まなくなることです。進まないな、と思ったらねらい所を切り替えましょう。
総肝管がうつっていれば、左前斜位にしてください。ラジフォーカスが総肝管から離れるならあきらめましょう。
◆トラブル編
●ラジフォーカスが胆管の外に出ていく
残念ながら、こういうことが多いのです。よくあるのです。あやしいと感じたら頭前斜位にします。それでも分かりにくかったら写真で判定しましょう。正しい診断が第一です。欲目でなく冷静に局面を読んでください。
胆管に入っていないと分かれば対応しましょう。外筒を30度時計回りに回転させて再度チャレンジします。あっさり通過ですか。反対方向に60度回転させてもう一度。これで入ればしめたものです。
まだだめですか。ラジフォーカスを025にしてみましょう。ゆっくり入れていきます。外筒から出始めるところは、特にゆっくり送り込みます。力は有害無益です。外筒の先端を胆管からはじくだけです。ゆっくり送ってください。胆管に入らなければ、外筒を回転させてもう一度。
入りませんか。では、外筒を2mm浅くします。そして再度探ります。
胆管内の造影剤が薄くなっていませんか?薄くなっていたら、PTC針の方から造影剤を注入します。
胆管周囲の結合織はゆるいです。ラジフォーカスは、胆管外であってもほとんど抵抗なく肝門まで進んでいきます。よし入った!と思っても、慎重に判断してください。写真も利用しましょう。ラジフォーカスが造影剤のはいった管腔からはみ出てませんか。B5bとか総胆管に入ったのを確認できれば安心です。
浅くしても入らない。仕方ありません。再穿刺です。
●上流側に行ってしまった
これもよく起こります。
胆管内に4cmないし5cm入っているなら、そのままカテーテルを留置してもいいでしょう。後日のカテーテル交換で修整できます。
2cmとか3cmとかでしたら逸脱が心配ですし、ドレナージもよくないでしょう。ラジフォーカスを操作して長い枝に送り込むか、原点に戻って肝門側への戦いを再開します。
025のラジフォーカスでしたら、上流側に入ったままでさらに押し込んでみてください。外筒から出たところがエビの腰のように曲がって肝門側に進むことがあります。035では硬すぎて期待薄です。
●hemobilia
胆管に穿刺できた、よし、と穿刺針を抜くわけです。造影剤がゆるゆる外筒の中を上ってくればいいですよ。あとはラジフォーカスで交渉していくことになります。穿刺針を抜くと、どばっと血液が出てくることがあります。この時の印象、といいますか記憶は強烈です。右のPTBDで多い気がしますので、ここで書きます。
まず穿刺針を5cmくらい送り込みます。とりあえずの止血です。するどい患者さんの中には、術者の緊張を読みとる人がいます。あ分かったな、と思ったら声をかけます。といっても、ここは正直に言うしかありません。「胆管の隣の門脈という血管に当たったようです。心配ありません。」心配でもそう言ってください。「時間がかかるかもしれませんが」とも。
さて、たいていは胆管の中に白い丸、あるいは楕円の欠損像が見えるはずです。胆管を貫通して門脈に当たったのです。外筒をゆっくり浅くしてくるしかありません。5mmも抜かない内に、白い丸あるいは帯状の欠損像が消えるはずです。そうしたら、改めて穿刺針を抜き取ります。覚悟してください。赤い液体が出てきます。透視画面です。透視画面を注視します。外筒の中に造影剤が入ってきてますか。
造影剤が流出してくるようなら、ラジフォーカスを送り込みます。これからは出血のないときと同じです。すんなり胆管にはいることもあります。苦労することもあります。たいていは出血は徐々におとなしくなっていきます。カテーテルを送り込めば見た目は止まります。
困るのは、穿刺した胆管の中の造影剤が薄くなることです。ラジフォーカスが胆管の中にいるのか、外に迷い出ているのか、たいへん分かりにくくなります。こうなったら、PTC針から造影剤を注入しましょう。
こういうときに限ってPTC針が胆管からはずれています。そういうものです。落ち着いて針先を観察します。深いですか、浅いですか。たいていは深くなっています。少し抜いて造影します。さっきまで入っていたのです。少しの調整で造影できるはずです。
胆管内の血液が凝固して話をややこしくすることがあります。造影剤は、凝血塊と胆管壁の隙間に入り込みます。胆管はしっかりと濃く造影されません。動転中ですと、造影剤が胆管外に漏れたと勘違いするかもしれません。でも、上流の細い枝に注目してください。凝血塊は鋳型状になります。細い枝までは入り込みません。細い枝がうつるようなら胆管が造影されているのです。
●shiverring
てこずっているうちに患者さんががたがた震えだすことがあります。感染胆汁が血液中に流れ込んだ症状です。これが起こると30分もしないうちに高熱が出て、震えは治まります。患者さんにそのように話してあげましょう。
PTBDカテーテルが入ったあとならいいんですが、入る前でしたら考えどころです。まずステロイドを静脈注射します。もう少しでなんとかなりそうなら続行しましょう。そうでなければ、手助けを呼ぶか、翌日に延期するかしましょう。見込みなく続けてはいけません。