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■□□PTBDの手引き□左の巻□□□□
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■□□□□□器官調節外科□神谷順一□□
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◆前置き
●用語について
PTBDはPercutaneous Transhepatic Biliary Drainage(経皮経肝胆道ドレナージ)です。PTCDは英語をしゃべる人たちには通じないことが多いです。あれっ、と思ったらPTBDと言ってみましょう。このマニュアルでいくつかPTCDという用語を使っていますが、混乱している訳ではありません。商品名です。
PTCはPercutaneous Transhepatic Cholangiography(経皮経肝胆道造影)です。PTCは、US下に行うことが多いです。USはUltrasonography(超音波画像)です。PTBDはPTCSを行うために施行することもけっこうあります。PTCSはPercutaneous
Transhepatic Cholangioscopy(経皮経肝胆道鏡検査)です。
PTBD直後には、胆汁に血液が多かれ少なかれ(少なかれ多かれ、といいたいところですが)混じります。これは胆道出血hemobiliaです。ついでにひとつ。胆管内に空気が存在する状態はpneumobiliaです。
肝内胆管についても少し。このマニュアルでは、穿刺する胆管は左外側枝(B2+3)あるいは左外側後枝(B2)です。
最後に針のことです。針の先端は斜めに切られています。これはbevelと呼ばれています。PTCやPTBDではこの面を意識する必要があります。
●解説するのは影像下直達法です
影像下直達法では、まずPTCを行います。この胆管像影像から胆管を穿刺する部位を診断し、透視画面を見ながら穿刺します。穿刺に成功したら、ドレナージ・カテーテルを留置します。
利点は、狭窄の上縁から十分離れた部位に穿刺できることです。「十分」ではまずいですね。3cm以上とします。短いといろいろ不利です。カテーテルが狭窄を越えないと逸脱のリスクが高くなります。そして、カテーテルを狭窄の下まで送り込んだ場合には、ドレナージが不安定になります。側孔が瘻孔や狭窄部に入ってしまいやすいのです。当科に紹介されてきた患者さんの中には、PTBDをやり直した人もいました。なお、「カテーテルを狭窄の下まで送り込む」ことを内瘻化するといいます。
欠点は術者の指が被爆することです。これは被爆時間を短くする努力をするしかありません。がんばりましょう。
●初期設定いろいろ
説明をすっきりさせるために、条件を単純にします。
胆管狭窄部位は下部にしましょう。PTBDが一本ですみ、胆管狭窄部にドレナージ・カテーテルをとおす必要がありません。下部胆管狭窄でも膵頭部癌では、肝外胆管が左にシフトしています。話がややこしくなるかもしれませんので、下部胆管癌症例とします。
穿刺部位となる左外側枝あるいは左外側後枝の拡張は1cm程度にしましょう。まあまあ気楽にできる太さです。
患者さんは意識がはっきりしていて、10秒くらい呼吸を止めることができる人とします。
キライディティ症候群はありません。腹水もありません。出血傾向もありません。亀背もありません。肝葉の萎縮はありません。肝葉切除の既往もありません。内蔵逆位もありません。
これでいいはずです。
◆PTCの前に
●患者さんの協力が不可欠
PTBDは局所麻酔で肝臓の中の胆管にカテーテルを入れる「手術」です。痛いです。カテーテルが入ったあとは、背中のほうに鈍痛を感じます。そして、患者さんは24時間くらいベッド上安静です。たいへんです。
PTBDでは、穿刺する時には、体を左前にしてもらったり、呼吸を10秒程度止めてもらわないといけません。患者さんの協力がないとできません。
ということで、PTBDの前には患者さんにしっかり説明をしてください。主な項目は以下のようになります。説明内容は、このマニュアルから精製してください。
・なぜ行うのか。
・どういう「手術」か。
・主な合併症
・術後の注意
・後日カテーテルを交換します
●「手術」中にも説明を
どんなに丁寧な説明を受けようと、患者さんは不安です。透視室では、折りにふれて言葉をかけます。今何をしているか、何をしようとしているか、などです。
説明なしにずーっと待たせたり、何も言わずに針を刺したりしてはいけません。
「痛いときは痛いといってください」と念を押しておきましょう。痛くなっても、痛いところに手を持っていかないように、お願いします。痛ければ痛み止めを使いますから、と話します。
●透視室に行くまでに
まず静脈を確保します。脱水があれば、補正します。
前投薬は 硫酸アトロピンとアタラックスPです。量は体重や全身状態で調節してください。鎮痛剤(ソセゴン)は、PTC針を穿刺する5分ほど前にゆっくり静脈注射します。量は体格に応じて決めます。そして痛みの程度をこまめに聞き、積極的に追加してあげましょう。
●マジック・インクで右側胸部に目印を描く
影像下直達法ではまずPTCを行います。USでうまく胆管穿刺できず、側胸式に切り替えることもあります。その準備です。第8、9、10肋間を確かめて、皮膚に描き込みます。次に、これらの線に交差するように、テーブルから10cmと11cmの高さの線を引いておきます。
●皮膚消毒しコンプレッセンをかぶせる
消毒範囲は広いです。上は乳頭の高さ、下は臍の高さ、右は後腋下線、左は前腋下線です。
コンプレッセンは孔あきを1枚、孔のあいていないものを1枚使います。まず、孔あきのものをかぶせます。孔の中心は剣状突起の5cm下とします。そのあと孔のあいていないものを下腹部から下肢にかけてかぶせます。合わせ目に2カ所テープを張ります。
コンプレッセンの孔はUSプローブには少し小さいです。プローブに合わせて拡大しておきます。
●道具を準備する
トップのPTCDセットを使います。PTC針(22ゲージ)、PTCD穿刺針、外筒、6フレンチサイズ(F)の内筒カテーテルを取り出します。ガイドワイヤーは、ラジフォーカス0.035で先端が湾曲するタイプを用意します。
まずは、延長チューブに10mlの注射器を接続し造影剤を5ml詰めます。空気は追い出しておきます。
外筒に内筒カテーテルを通してみます。通らなかったことはないのですが、まあ儀式ということで。そのあと外筒にPTCD針を入れます。外筒先端は少し曲げてあります。曲がりの膝(肘かな?)の方に針のbevelを向けます。これをうまくやらないと、針が膝を突き破ってしまいます。
外筒カテーテルの手前部分は太くなっています。そして、先端が曲がる方向に小さな切れ込みがついています。PTCD針にもbevel面の反対側に印がついています。これらを合わせて針を進めていけば、不幸は起こりません。
内筒カテーテルには側孔が一つあいています。でも、これだけですと側孔が狭窄部にはまりこんでドレナージ不良になりかねません。1cm間隔で4つ追加します。
方法は簡単です。カテーテルを折り曲げて角を1mmほど切り取ります。側孔が大きすぎると、側孔のところでカテーテルが折れてしまいます。そうすなるとドレナージが不安定になります。気をつけましょう。
安定したドレナージになるように、側孔はたがいちがいに作ります。同じ方面にあけておくと、そちらが壁にくっついた場合にドレナージ不良になりそうな気がします。気がするだけかもしれませんが。
◆さあPTC
●造影剤は重い
いきなりですが、造影剤は胆汁より比重が高いです。低いところ、背側に流れていきます。
どの枝が穿刺されたかにもよりますが、前区域の腹側の枝(B8a、B5a)、内側枝(B4)、外側前枝(B3)は造影されにくい枝です。残りの枝は造影されやすいと思ってください。
意外に造影されやすいのが尾状葉枝(B1)です。B1は肝門部胆管の背側から頭側に位置します。PTC針がB2、左肝管、あるいは右前枝とか右肝管に当たって造影を進めた場合には、左肝管が造影されるより前にB1がうつってきたりします。B1が太い症例では、左肝管と間違えることもあります。あなたが地位向上を望むのでしたら、左肝管らしき枝が造影されてきた時にさりげなく「B1ですかね」と口にしてみてください。33%向上します(当科比)。
●PTCの基本
PTCがうまくいけばPTBDもたいていうまくいきます。失敗の多くは、造影が不十分なままPTBDを強行した時に起こるのです。経験の重みを感じ取ってください。PTCをうまく進めるために必要な基礎知識をここで並べておきます。
針が目標点まで進んだら、内針を抜きます。そして、造影剤を詰めた延長チューブと注射器を接続します。空気が入らないように注意しましょう。空気が入ると吸引の圧が逃げるような気がします。気がするだけかもしれませんが。
まずは吸引です。胆汁が引けたら造影作業に入ります。3ml吸引、1ml注入。あるいは5ml吸引し2ml注入を繰り返します。この時のために注射器の半分を空けておいたのです。胆汁がうっ滞している場合には、胆管内圧を下げながらの造影が基本です。
細かいことを一つ。胆汁の吸引と造影剤の注入を繰り返すときに、注射器をいちいち交換する必要はありません。注射器の先を下にして、ゆっくり吸引と注入を行えばいいのです。造影剤は重いです。注射器の先を下にしていれば、造影剤は下になり、胆汁が上になります。注射器の中に造影剤が残っているうちは、まず造影剤が注入されるのです。造影剤がなくなったら、造影剤を半分入れた注射器に交換してください。
造影はPTBDで穿刺する部位(B2あるいはB2+3が肝門に向かって曲がり始める部位)がしっかり造影されるまで行います。先ほども書きましたが、十分な造影がPTCを成功させる基本です。
胆管がうまく造影されても、PTC針は抜きません。後になって造影剤を追加したくなることはよくあります。なによりも、PTC針を抜去すると直後にhemobiliaになることがあるのです。造影がうすくなります。痛みがでます。いいことは何一つありません。抜去は、PTBDカテーテルを留置し位置を確認した後です。
さて。
胆汁が引けないことも多いです。どうするか。0.2mlくらい造影剤を注入します。このときに、造影剤の動きに注目してください。肝門方面にゆっくり流れていけば、まず胆管です。でも、リンパ管のこともあります。もう0.2ml注入します。太い管と判明したら安心です。胆管です。造影剤が2、3本の細い流れになって肝門の方に進んだら、まずリンパ管です。2mmほど浅くして造影、を繰り返します。
造影剤が肝門から離れるように流れても、造影剤が樹枝状にたまってくるなら胆管です。安心しましょう。造影剤が肝門から離れるように流れ、枝分かれしながら消えていくようなら門脈です。2mm浅くして造影、2mm浅くして造影、を繰り返します。造影剤が心臓の方に流れ、枝分かれしないなら肝静脈です。この場合は、グリソンから離れている可能性が高いです。次の穿刺を考えましょう。
いずれにしても胆汁を吸引できない状態で胆管が造影されてくる状況になってしまったら、そのまま造影を行っていくしかありません。
●PTC(USの巻)
目標胆管はB3です。穿刺ラインが決まったら、局所麻酔を行います。局所麻酔後に見直すと、別のところからの方が見やすい、ということもあります。無理はいけません。麻酔をやりなおしてください。
針の先端は斜めに切られています(bevelでしたね)。穿刺する際には、bevelをUSプローブの長軸面に向けます(わかってください)。そうしないと、針がUS画像の面から離れるように進むかもしれません。そう教わりました。
針の先端が胆管内に入ったら、内針を抜きます。素直に胆汁が流出すればいうことはありませんが、なかなかそうはいきません。胆汁には粘りがあります。そして針は立っています。胆管内圧が高くても途中で力尽きるでしょう。
カテーテルをつないで吸引します。胆汁が流れ出てきたら、3ml吸引1ml注入を繰り返します。出てこなかったら、0.2ml注入します。以後の作業は一つ前の項を見てください。
●PTC(側胸式の巻)
皮膚穿刺部の高さは、胸の厚みが20cm以上であれば透視台から11cmです。20cm未満なら10cmでいきます。
そして透視下に肝臓の動きを見ます。大きく息を吸ったときに、肺が届かない肋間を穿刺部位とします。肋間動脈は肋骨の下縁を走行しています。PTC針は肋骨のすぐ上を通すようにします。肋骨のすぐ上です。肋間の上部ではありません。
目標とするものは剣状突起の先端です。呼気の状態で、針を透視台に対して平行に(水平に)進め、椎体の右縁まで送り込みます。針が目的の位置まで進んだら、軽く呼吸してもらいます。内針を抜いて造影剤を注入しながら、針を2mmずつ抜いてきます。胆管に当たったら造影開始です。
手応えは貴重な情報です。太いグリソンを貫通するときには抵抗があるのです。肝門あたりで抵抗があったら1cmほど進めてストップです。このとき患者さんは痛みを感じることがあります。抵抗を感じ始めたら、痛みがあるかもしれませんが心配ありませんと伝えます。
この方法で穿刺される胆管は、右前枝のことが多いです。胆汁吸引と造影剤注入を繰り返して、左肝管からB2+3やB2が造影されてくるのを待ちます。総肝管が十分造影されてもB2+3やB2が造影されてこない時は、患者さんを左側臥位にします。2分程この体位を続けます。仰臥位に戻ってもらうと、左肝内胆管がうつっているはずです。手際よくPTBDを進めてください。
胆管に当たらない。よくあることです。PTC針を肝被膜の奥3cmあたりまで抜いてきます。延長チューブを針からはずし、内針を装着します。そして呼吸を止めてもらい、目標点を2cm上に設定して針を進めます。小さな呼吸をしてもらい、同じ作業を繰り返します。
また当たらなかった?中肝静脈がうつりませんでしたか。うつったんでしたら、今度は目標を1cm背側に設定してください。中肝静脈かどうかわからない?肝臓が通常の形態でしたら、ここで説明した方法で造影される肝静脈は中肝静脈です。あなたが地位向上を望むのでしたら、肝静脈が造影された時に自信なげに「中肝静脈ですかね」と口にしてみてください。有効であったとの報告があります(科内資料)。
これらを繰り返して、造影できなければ、一つ上、あるいは一つ下の肋間で勝負してください。肋間を変えるときだけPTC針を肝臓から抜き去ります。それ以外は針は肝内にとどめておきます。腹腔内出血のリスクを下げたいのです。肋間を変えても胆管に当たらない?PTCは断念しましょう。胆管はたいして拡張していないのでしょう。深追いは合併症のもとです。
●針は深くなります
刺さった状態でPTC針を置いておくと、たいていは少し深くなります。浅くなることはほとんどありません。側胸からの穿刺でも深くなりますから、針の重さのせいではないと思います。
ここからは側胸式でのPTC針深行メカニズムの推測です。
息を吸うときには肋間筋は緊張します。このときPTC針は肋間筋を貫通する部位で固定されるのではないでしょうか。吸気時には肝臓は尾側に動きます。ほとんどの場合PTC針は頭側に斜めになっています。吸気時に針は少し深くなると考えてしまいましょう。呼気時には肋間筋は弛緩し、ここでのPTC針固定状態は消失します。一方、針先は胆管壁で固定されており、針は少し引き込まれます。これを繰り返せば、徐々に深くなることになります。
ということですので、再造影だという状況で胆管がうつらない場合は、2mm浅くして造影剤を注入してください。それでも胆管がうつらなければもう2mmです。
●奥の手
胆管拡張が軽度でPTCに失敗したら、でも、PTBDが必要ということでしたら、胆嚢を穿刺します。もちろんこの手は、胆管が三管合流部の下で狭窄する場合にしか使えません。
胆嚢は緊満しています。胆管に造影剤が流れ込むまでには造影剤がたくさん必要だろうな、と思っていると意外に早くから胆管がうつり始めるものです。造影剤が重いためでしょう。
◆うまくいってるPTBDの説明
●穿刺開始まで(1)
PTCがうまくいったらいよいよPTBDです。
皮膚の穿刺部位はUS下PTCの皮膚穿刺部とほとんど同じところです。剣状突起先端の右下あたりになります。
胆管穿刺部位はB2+3あるいはB2が肝門に向かって右下にカーブし始めるあたりです。ここをねらうとPTBDルートは肝鎌状間膜を貫通したり、その近傍になります。逸脱しにくいです。また胆管はここから背側に走行し始めます。ラジフォーカスを送り込んだときに肝門側に行きやすいです。急所ですね。
この部位より少し上流側でもかまいません。ですが、肝門よりの部位は避けたほうがいいでしょう。左内側枝(B4)、あるいは左門脈臍部(UP)を貫通するリスクが高くなります。
まず、局所麻酔です。腹膜とか肝被膜まで効かせるようにします。そして皮膚穿刺部を3mmほど切開します。
目安をつけてみましょう。腹壁に穿刺針を置きます。穿刺針先端を皮膚切開部直上に持ってきて透視画面を見てみます。
胆管穿刺予定部位が針先端と重なる、ということは少ないです。たいていは右上に離れています。でも大丈夫。なんとかなります。
●穿刺開始まで(2)
まず患者さんにゆっくり左前斜位になってもらいます。針先端に左肝管が近づいてきます。左肝管が針先端に重なるようになったら、大きく息を吸ってもらいます。これで、胆管穿刺予定部位が針先端のところに降りてきます。
大きく息を吸っても、まだ届かないという人もいます。この場合は、X線の管球を足側に5度ほど傾けてください。これでずいぶん違います。根拠はありませんが、10度以上傾けるのは危険だと思っています。門脈臍部(UP)を貫通するリスクが高くなる気がするのです。大きく息を吸って肝臓を尾側に下げた状態で穿刺する、これでUP穿刺が避けられている、そう信じています。
深呼吸も何度か繰り返しているうちに大きくなってきます。患者さんは緊張しています。少し練習してもらいましょう。この間に、今の状況を教えてあげてください。野球の試合でいえば、6回の裏あたり、とか。
●穿刺
さあ針先端の下に胆管穿刺予定部が来るようになりました。透視台を動かしてもらい、針先端を画面の中心にもってきます。そして透視のフィールドを狭くしてもらいます(絞る、といいます)。目安は4分割画面でいえば、縦は4分の1、横は3分の1でしょうか。絞ることで、画面は見やすくなりますし、被爆も減ります。
絞ったら、針先端が画面の真ん中になるように、もう一度台を調節してもらいます。針が真ん中にきたら、こちらから声をかけるまで台を移動しないように頼みます。
患者さんに大きく息を吸って止めてもらいます。画面上で、針先端に胆管穿刺予定部位が重なりました。さあ、針を立ててください。Bevelは上流側に向けます(とがった方が肝門側)。画面上で針が丸になったら穿刺を開始します。通常は針が残り5cmあたりで胆管に当たります。針が胆管を押しつけると、画面上では針の周囲の造影剤がリング状に薄くなります。もうすこしです。
指に軽い抵抗を感じるはずです。患者さんが痛みをもっとも強く感じるのは次のステップです。痛いですが我慢してください、と宣言して、3mm進めましょう。すっ、と抵抗が軽くなるはずです。静脈や動脈にテフロン針を挿入する時に似ています。
息止めはここまでです。患者さんには、小さな息をしててくださいとお願いします。そして仰臥位に戻ってもらいます。
透視画面を倍に広げてもらいます。息を吸った状態で穿刺しました。小さな息をしている今は、針は右上を向いているはずです。先端は胆管に当たっていますか。確認したかったら、針先を動かしてみてください。胆管と一緒に動いてくれれば、まずは一安心です。
針先が胆管から離れている?よくあることです。もう一度体勢を整えて穿刺です。あわてることはありません。ひとつひとつステップを確認していくことが大事なのです。針先と胆管がいっしょに動くところまで針を進めます。
●内筒針を抜く
いよいよ内筒針を抜きます。外筒を左手で持ちながら、針をゆっくり浅くします。外筒の中に造影剤が流れ込んできますか?これはいいサインです。そのまま内筒針を抜きます。そしてガイドワイヤーを送り込みます。
造影剤が入ってこない?こういう時は、もう一度左前になってもらい大きく息を吸って止めてもらいます。黒く造影された胆管に中に白い丸を確認できるはずです。胆管を貫通してしまい、先端が胆管の向こうにあるのです。患者さんを仰臥位に戻し小さな息をしてもらいます。そして、ゆっくり外筒を浅くします。すぐに造影剤が流れ込んでくるはずです。
外筒を浅くするときは、左右に少し回転させながら動かします。ミリメートル単位で外筒を動かすには、この方法がベストと思っています。
●ガイドワイヤーを送り込む
造影剤が外筒に入ってくるのを確認したら、穿刺針を抜去して、ガイドワイヤーを送り込みます。ガイドワイヤーの先端は肝門側に向けるようにします。総胆管まで入ってくれれば、もう8回裏です。まずは、ガイドワイヤーが抜けてしまわないように、外筒のすぐ上で鉗子でつかみます。
右肝内胆管に入ってしまうことも多いです。5cm以上右葉にはいっていれば、よしとします。総胆管に留置することにこだわらなくてもいいでしょう。
●ドレナージ・カテーテルを送り込む
ごたごたしているとガイドワイヤーが乾いてしまいがちです。ガーゼを生理食塩水でぬらし、これでガイドワイヤーに水を補給しましょう。
さあ、カテーテルをガイドワイヤーに沿わせてゆっくり送り込みます。カテーテルには黒い目印が4本入っています。先端から一つ目は外筒の長さのところです。これより深く送り込めば胆管に入っていくことになります。あとは5cm間隔です。
10cmくらい入ったら、ゆっくりガイドワイヤーを抜きます。
●ガイドワイヤーを抜く
透視画面をじっくり見ながら抜きます。カテーテルにはバリウムのラインが入っています。ガイドワイヤーを抜いてくると、カテーテルのラインが見えてくるはずです。先端が狭窄上縁にあればOKです。
素直に胆管内に収まっていますか?たわんでいれば少し浅くします。浅いようなら、ガイドワイヤーを送り込んでから進めます。ガイドワイヤーの助けなしでもスムーズに進むことも多いですが、ここは慎重にどうぞ。
バリウムのラインが見づらい時は写真判定です。正面でまず撮影します。次に、カテーテルが腰椎から離れるように、軽い左前斜位で撮影します。
●外筒を固定する
ナイロン糸2−0で外筒を皮膚に固定します。糸は切らずにおきます。あとでカテーテルを固定するのに使います。
●胆汁を吸引する
いよいよ最終段階です。胆汁を吸引できるだけ吸引します。けっこう空気が引けることがあります。側孔が外筒の先端近くにあるか、外筒内にあって、ここから空気がはいるのです。吸引をやめて自然流出にしてみてください。胆汁がスムーズに流出するようならOKとします。空気が半分以上混じるようなら側孔を少なくしたカテーテルに入れ替えましょう。
空気がたくさん出てくる状態ですと、数時間後にガーゼが胆汁でびしょびしょになるかもしれません。外筒と内筒カテーテルのすきまから胆汁がしみでたのです。このときのいろいろな手間を考えると、側孔を少なくしたカテーテルにしておいたほうが「結局は楽」です。
症例によっては、墨のような胆汁が引けてきます。胆嚢胆汁です。ドレナージ不良の原因になるかもしれませんので、引けるだけ引いておきましょう。
●胆管像影像でカテーテルの位置を確認する
症例によっては、透視画面でカテーテル先端の位置を同定できます。でも、写真で確認しましょう。画面で見にくい場合はもちろんです。
カテーテルが椎骨と重なって確認しにくい症例では、軽く左前にして撮影します。
◆PTBDカテーテルが入ったら行うこと
●外筒を短くする
現像を待つ間に外筒を短くしましょう。皮膚から2cmのところで切ります。
まずメスで全周に切り込みを入れます。壁の厚さの3分の1ないし半分くらいのキズをつける、という感じです。決して、外筒を切ってしまうわけではありません。
切り込みの下を左手でしっかり持ちます。切り込んだ上を左右に折り曲げると割れてきます。そうしたら、左右に回転します。そのうちちぎれます。切りとった外筒はカテーテルにからませておきます。取り去る必要はありません。
メスで内筒カテーテルまで切ってしまわないように注意しましょう。カテーテル内腔まで傷が入ると、そこから空気が入ります。あるいは胆汁がしみ出てきます。こうなったら交換するしかありません。
●カテーテルを固定する
造影写真でカテーテルの走行を見ます。胆管内でたわんだりループを作ったりしていませんか。時には右肝内胆管に入り込んだりしています。じっくり観察してください。
カテーテルが胆管の走行にしたがってスムーズに入っていて、先端が狭窄上縁の1cm上にあればOKです。
先ほど外筒を固定した糸でカテーテルを固定します。IVHカテーテルを固定するのと同じようにしてください。緩過ぎず、締め過ぎず、です。
●PTC針を抜く
ようやくPTC針を抜くときがきました。呼吸を止めてもらい、ゆっくり抜去します。抜去したらゆっくり呼吸してもらいます。
PTC針を抜去するとよくhemobiliaになります。驚かないでください。1時間もしないうちに収まります。
●固定板を取り付け、切れ込みガーゼで取り巻き、テープで固定する
固定版取り付けの説明は難しいです。見て覚えてください。流儀もいろいろですし。固定版の意義は皮膚のところで折れ曲がらないようにすることです。気楽にどうぞ。
切れ込みガーゼやテープ固定については、「交換マニュアル」を見てください。
胆汁ボトルとの接続についての注意も「交換マニュアル」にあります。
●安静について
原則は24時間です。ですが、実は根拠は薄いです。12時間でいいのかもしれません。
●逸脱が心配になったら造影
PTBD後に心配なのは逸脱です。起こりやすいのは、仰臥位から体を起こしたとき、歩行を開始したとき、寝返りを打ったときです。サインとしては、急に胆汁が流出しなくなった、急にhemobiliaになった、といったものがあります。
胆汁流出がストップしたときは、カテーテルの逸脱が大きくて先端が胆管の外に出ているかもしれないと思ってください。急なhemobiliaは、逸脱により側孔が門脈あるいは肝静脈に入って出現したものでしょう。透視室でカテーテル造影をしましょう。
腹痛は逸脱とは関係ない可能性があります。ポータブルで腹部単純写真を撮影します。これなら大丈夫と診断できれば、経過観察ですし、心配でしたら透視室でカテーテル造影を行います。
逸脱してる!!となったら、「交換マニュアル」を見てください。
◆トラブル
●PTCD針を抜いたら勢いよく出血してきた
肝内の多くの部位では胆管の背側を門脈が走行しています。胆管を貫通すれば、そこは門脈の中、ということになりがちです。よくあることなのです。落ち着いてください。まず外筒の中に内針を5cmほど挿入します。出血をとりあえず止めるのです。
そして、胆管像をじっくり観察します。外筒が胆管を貫通したときに現れる小さい白い丸がありますか?あれば安心です。2mm浅くしてください。丸が消えましたか。消えたら内針を抜きます。透視画面で造影剤が戻ってくるようなら、たとえ見た目が血液そのもであっても大丈夫です。ラジフォーカスを送り込んでください。2mm浅くする操作は、白い丸が消失するまで繰り返します。
白い丸がないですか?胆管に届いていない可能性が高いです。冷静に内針をすすめて穿刺可能な体勢にします。針の方向に注意してくださいよ。体勢が整ったら、透視画面を見ながら、針を頭側や尾側に振ります。これで針の先端と胆管の位置関係がわかります。浅いのでしたら、もう少し深く穿刺します。針と胆管が、ねじれの位置関係(脇を通り抜けている)でしたら、5mm引き抜きます。そして穿刺をやり直します。
●ガイドワイヤーが胆管に入らない
これもよくあります。すんなり入るほうが少ない気もします。ガイドワイヤーを目的地まで送り込むためにああだこうだと操作することを、英語ではnegotiation(交渉)というそうです。むかし二村先生に教えてもらいました。だからどうだということでもありませんが、あせらずじっくりいきましょう。
まずガイドワイヤーをチェックします。ストレート型ではありませんか。先端がカーブしていればOKです。次に進みましょう。
頭前斜位にします。20度くらいが適当です。これで、胆管とガイドワイヤーの関係を把握しやすくなります。右前斜位も有効です。昔はよく使いました。ですが、体を動かすと外筒が胆管からはずれてしまうかもしれません。管球を傾けるだけでよい頭前斜位のほうが気が楽です。
目を凝らしてください。ガイドワイヤーは胆管を貫通していますか。それとも胆管の手前でそっぽを向いていますか。
多くの場合は胆管をすり抜けています。もし胆管が5mm以上の太さであれば、外筒を30度から45度右方向あるいは左方向に回転させてみます。だめですか。では2mm浅くしてみてください。胆管が細い場合には、回転は30度くらい、浅くするのは1mmにします。だめなら025のラジフォーカスを使ってみてください。
胆管の手前ではずれているのでしたら、もう一度体勢を整えて針を少し深くするのが正解です。ですが、三回くらいは透視画面を見ながら交渉してみてもいいでしょう。うまくいくかもしれません。
入るときはあっけないです。すっと入ります。力は不要です。強く押し込んではだめです。ガイドワイヤーがたわみます。そして外筒を胆管からはじいてしまいます。ただし幸運な場合には、たわんだ部分が先進部となって胆管に入っていくこともあります。この幸運は025でよく発生します。
どうしても、あらゆる手段を尽くしてもガイドワイヤーが胆管に入ってくれなければ、少し離れた部位に穿刺をやりなおすしかありません。穿刺針を再挿入して、全体を1cm浅くします。そして2mmでも3mmでも離れた部位に穿刺します。
●穿刺針を再挿入する時の注意
冷静な時はいいのです。いかんわ出血だがやPTCD針を外筒に再挿入せなかんわ、という時は要注意です。外筒の膝を突き破ってしまうのです。
外筒を突き破ってしまうと、外筒先端が脇にとびだします。当然胆管に入りにくくなります。私は一度経験しております。胆管前壁を確かに押しているのに、針先は確かに胆管の中に入っているのに、外筒が入らないのです。思い当たって、新しく隣に穿刺しなおしました。
胆管が太い場合には何とか入ることもあります。でも、PTCD針で突き破られてできた孔からガイドワイヤーが胆管に入ったりします。これは透視画面ではまず分かりません。で、どうしても内筒が入らないという状態に陥ります。仕方ないので、外筒を抜いてくると破れた膝からガイドワイヤーが出ていることが判明します。
●hemobiliaで胆管像が分かりにくくなった
これは最も考えたくない状況です。でも時に遭遇します。覚悟しておいてください。
患者さんは痛がっていませんか。胆管内圧が急に上がると痛みがきます。鎮痛剤を追加します。
外筒先端が胆管に入っていれば(入っている自信があれば)、薄くなった像を頼りに、ガイドワイヤーを送り込みます。もしガイドワイヤーが肝外胆管のほうに進んでくれればやれやれです。でも安心は早いです。意地悪く門脈の中を進んでいくこともあります。想定したケースは下部胆管に狭窄がありました。送り込んでいくとUターンするはずです。もしどんどん尾側に進んでいく、あるいは脾臓のほうに向かっていく、ということでしたら決着はまだまだです。
外筒先端がどこにあるかわからないですか?では、PTC針から造影剤を追加してください。胆管の中には帯状の陰影欠損があって、状況はわかりにくいでしょう。でも冷静に。じっくり観察すれば、事態は明らかになってきます。必要なら外筒を回転させるなどして、先端の位置を確認しましょう。
外筒から直接造影剤を注入するのは最後の手段です。PTC針がしっかり抜けてしまった時にしか使いません。外筒の先端が胆管内にあれば問題は起こりません。
鮮明に造影できます。でも、胆管外にはずれていると胆管周囲にもれて、先端の位置を判読できなくなります。PTC針がかなりずれていても、位置を修正して造影を試みてください。短気は損気です。
●hemobiliaで胆汁が出てこない
待ってください。1時間もすれば胆汁が流出するようになります。
PTBD直後には凝血塊がバルブの役目をして、注入できるが吸引できないという状況になりがちです。でも待っていると、凝血塊が縮むためと思いますが、胆汁が出てきます。
生理食塩水で洗おうとしても効果はありません。むしろ凝血塊のバルブ作用で胆管内圧が上がるだけです。危険です。待ってください。
大事なことは、患者さんや付き添いの人に状況を説明することです。今は血液がじゃまして胆汁が出てきませんが、しばらくすると黄色い胆汁が出てきます、などと。
●PTBDを失敗したときの外筒の処置
どうしてもうまくいかない時があります。しかたありません。穿刺の部位を変えるか、あるいは患者さんの状態によっては日を変えましょう。で、大事なのが外筒の処置です。
その場でいきなり抜いてはいけません。腹腔内出血の危険があります。1cmから2cmくらい浅くして皮膚に固定してください。そしてクランプします。一番簡単な方法は、外筒を適当なところで折り曲げて、糸で縛っておくことです。
3日か4日したら抜去します。一気に抜くのは心配ですか。でしたら、2cmほど浅くして皮膚に固定します。さらに3日ほど後に抜去してください。