豊國 研究室

酸化ストレスの生物学的意義を細胞からヒト個体レベルまで広く追究しています。形態学を重視しながら、遺伝学的・細胞工学的・遺伝子工学的な手法を駆使して以下のテーマに取り組んでいます。出身分野にかかわらず、酸化ストレスに興味を持つ学生が研究室に参加することを望みます。当講座では、遺伝子改変動物の解析に必須の形態学的な知識を広く身につけることが出来ます。さらに、MDのひとは希望により病理医としての基礎的な研修が併行してできます。関連病院での非常勤病理医としての勤務も可能です。

1.活性酸素による発がんメカニズムの解析
20年に渡り当研究室で解析されてきた鉄ニトリロ三酢酸による腎発がんモデルの解析もいよいよ佳境に入ってきました。2002年2月には
Am J Pathol誌に、主な標的遺伝子のひとつであるp16のallelic lossが投与開始後数週のたいへん早い時期に起こっていることをCommentary付きで発表しました。いよいよヒト発がんへの応用、全ゲノム的な解析を開始しています。また、最近ではオキシゲノミクス(Oxygenomics)というコンセプトを提唱し,ゲノム内で酸化的傷害の起こりやすい部位を網羅的に解析することに取り組んでいます。オキシゲノミクスを総説で解説しています(Toyokuni S and Akatsuka S, J Clin Biochem Nutr 39: 3-10, 2006)。2006年秋にはオキシゲノミクスの方法論に関する論文を発表しました。現在、酸化ストレス誘発腫瘍のアレイCGH解析がかなり進行し、新しい展開が見えてきています。

2.アスベスト病態の解明(アスベスト誘発中皮腫発がん機構の解明)
平成18年度より研究室をあげて、アスベストに起因する発がん病態の解明に取り組んでいます。鉄含有率の高いアスベスト繊維ほど、発がん性の高いことが疫学的には明らかにされています。鉄発がんの研究からこれまでに蓄積してきたノウハウを結集して、サイエンスから社会への還元を目指して取り組んでいきたいと思います。特に、アスベストにすでに暴露された方への発がん予防手段に焦点を定めています。

3. 酸化ストレスマーカーの開発,酸化的組織細胞傷害の可視化
上記1および2より得られた成果をもとに、新たな酸化ストレスマーカーの開発を行っています。酸化ストレスは、発がんのみならず動脈硬化症・糖尿病などのさまざまは生活習慣病の病態に関わっていることがわかってきており、そのモニタリングは今後ますます重要になると考えられます。 

4.病理診断における診断マーカーの開発
日常の診断の中から得た発想をもとに、レーザーマイクロダイセクションやアレイ解析を駆使して、病理診断に有用な分子を選出することを目指しています。

参考文献 (references)

Intranuclear Distribution of 8-Hydroxy-2'-deoxyguanosine
(J Histochem Cytochem 47: 833-835, 1999)

"Oxygenomics as a means to analyze the in vivo genomic DNA status in terms of oxidative stress" from J Clin Biochem Nutr 39, 3-10, 2006

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