大阪大学医学部 保健学科 基礎生体情報学講座
東山繁樹
HB‐EGF(Heparin-binding EGF-like Growth Factor)は1回膜貫通蛋白質で細胞表面膜蛋白質として発現するEGFファミリーに属する増殖因子である。
近年、サイトカインやG蛋白質共役型受容体(GPCR)アゴニスト刺激により、EGF受容体が活性化されるトランスアクチベーションにHB‐EGFのプロセシングが中心的役割を果たしていることが明らかになりつつある。
我々は、HB‐EGFプロセシング酵素の同定ならびに阻害剤を開発し、HB‐EGFプロセシングの生理的・病理的意義について(1)創傷治癒過程、ならびに(2)心肥大において解析を進めてきた。創傷治癒過程では、創傷によってHB‐EGFのプロセシングがドミナントに誘導され、その結果惹起されるEGFRのトランスアクチベーションがケラチノサイトの運動に必須であることを明らかにした。一方、アンギオテンシン等によって誘導される心肥大においても、GPCRシグナルによるHB‐EGFプロセシングとEGFRトランスアクチベーションの誘導は心肥大シグナルの中心的分子機構であり、この抑制は顕著な心肥大抑制をもたらした。
本シンポジウムでは、これら全く異なる事象において、創傷やGPCRシグナルによって惹起こされるHB‐EGFのプロセシングとEGF受容体のトランスアクチベーションが生理的/病理的反応の分子機構の中で重要な役割を果たしている事を示すと共に、HB‐EGFを代表とする細胞表面分子のプロセシングが新たな治療戦略の標的分子機構に成り得る可能性について述べる。