MRIによる脳画像解析について

MRI装置 シーメンス社製 Verio

本学大幸キャンパス 脳とこころの研究センターに設置された磁気共鳴(magnetic resonance, MR)装置はシーメンス社製3T MR装置 Verioです。 これを用いて脳機能を解明する脳MR撮像法や画像解析には次のようなものがあります。

  • 機能的磁気共鳴法(functional MR imaging, fMRI)
  • 拡散テンソル画像法(diffusion tensor imaging, DTI)
  • 磁気共鳴スペクトロスコピー(MR spectroscopy, MRS)
  • 画素に基づいた脳形態計測(voxel-based morphometry, VBM)
  • 磁気共鳴灌流画像法(MR perfusion imaging)

1) fMRI

fMRI

Bold (blood oxygenation level dependency) 効果に基づき、脳活動に伴う血流増加から、賦活部位を同定する方法で、MR装置の中で視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などの五感や運動または認知的な刺激を加えた時に、脳内のどの部位が活動していたかを把握できます。神経ネットワーク、言語、記憶、情動、注意力、脳腫瘍と運動野の位置関係、脳血管障害後の脳可塑性、精神神経疾患、意思疎通不能患者との意思疎通、Brain machine interface の開発などの研究ができます。

2) DTI

神経線維である軸索方向に水分子は自由に動きますが、軸索方向以外の水分子の運動は制限されているという拡散異方性を利用し、脳の神経線維の走行状態を可視化する解析法です。神経線維の走行位置、健康状態が分かります。Tractography、脳血管障害や脳腫瘍と神経線維の位置関係、外傷に伴う神経線維の障害とその予後、多発性硬化症、統合失調症、自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、てんかん、加齢に伴う変化などの研究ができます。

DTI

3) MRS

化学シフトに基づき、脳内代謝産物の局在と量が分かります。虚血性脳血管障害、脳腫瘍、精神疾患(統合失調症、うつ病、双極性障害)、薬物中毒患者、多発性硬化症、てんかん、アルツハイマー病などの研究ができます。

MRS

4) VBM

解剖学的標準化・組織分画法(灰白質、白質、髄液腔に分離)の後、 正常脳の画像データベースを基に、 画素毎に脳形態の画像解析を行い、特定の因子(性別、年齢、生活習慣、精神神経疾患)と脳形態の関係を調べることが可能です。脳形態の加齢性変化、精神疾患(統合失調症、うつ病、双極性障害)、自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、認知症、パーキンソン病、萎縮を伴う脳変性疾患の早期診断などの研究ができます。

VBM

5) MR perfusion

血液にラジオ波を照射することで、血液そのものを内因性トレーサーとして灌流状態を評価する血液スピンラベリング法 (arterial spin labelling, ASL)を用いて、造影剤を用いず、非侵襲的に脳血流を評価可能です。脳血管障害、脳腫瘍、アルツハイマー病、認知症、パーキンソン病、加齢性変化などの研究ができます。

MR perfusion