名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科
脳神経外科HOME >> 脳神経外科のご紹介 >>臨床研究グループ >> 脳と心の研究センター

脳と心の研究センター


1.センターの趣旨

“脳とこころの研究センター”は、大規模なコホートを構築し地域に根ざした一大コンソーシアムを形成する事で、@発達、加齢に伴う脳とこころの構造、機能変化や神経回路の全容の解明A脳とこころの疾患の病態解明と治療方法の開発(次世代創薬)B教育における脳機能の解明など幅広い学際型研究を推進させ、更に次世代の研究者及び医療従事者の人材育成を目指したプロジェクト志向型組織である。
これらの目的の達成の為、医学系研究科はもとより、教育発達科学研究科、環境学研究科、創薬科学研究科、環境医学研究所、エコトピア科学研究所など脳とこころに係わる様々な部署が参画し異分野融合型研究を推進している。
脳とこころの研究センター公式Homepage: http://www.med.nagoya-u.ac.jp/noutokokoro/



メンバーの紹介

本センターには各部署より専任教員、連携教員、リサーチフェローが多数参画している。脳神経外科からは現在下記のメンバーが名を連ねている。

前澤聡 専任教員 (特任准教授)
若林俊彦 連携教員 (脳神経外科学教授)
藤井正純 フェロー(福島県立医科大学 脳神経外科 准教授)

研究内容の紹介

 当センターでは様々な研究プロジェクトが横断的、縦断的に進行中であるが、特に脳神経外科の関与が大きいものを紹介する。脳神経外科では“脳機能の基盤となるネットワークの解明”を主たるテーマとしている。現在進行中の研究の一部を下記に示す。これらは脳と心の研究センターシンポジウム(2012年9月22日 名古屋大学医系研究棟にて開催)”で報告された。

1)覚醒下手術時の皮質、皮質下マッピングによる言語性ネットワークの解明
 言語二重回路モデルは言語ネットワークを説明する有力なモデルの一つである。言語は聴性入力された後、上側頭回から前頭葉に連絡する背側路にて音韻性情報処理を、また上側頭回から中、下側頭回、前頭眼窩部、前頭葉外背側へ連絡する腹側路にて意味情報処理をうける。この二重回路モデルを術前画像(fMRI, DTI tractography)で同定し、覚醒下手術時の皮質下マッピングで実証するのが研究の骨格である。言語の温存を皮質から皮質下へ発展させ、その役割について探究するものである。




2)高次機能マッピングの確立
 脳神経外科手術における更なる高次機能の術中マッピングと機能温存の確立に向けて取り組んでいる。興味深い知見として一つはカテゴリ特異性を持つ語彙の貯蔵庫とされる側頭葉底面言語野に関する所見、もう一つは遂行過程に重要な役割を担う作業記憶(working memory)に関する所見を術中マッピングで確認する事ができた。作業記憶に関連して機能局在同定の為にdigit spanによる新しいfMRIの手法についても検証している。


3)画像情報処理による高度な脳神経外科手術支援
 高度な進化を求められている脳神経外科手術を支援するべく、3Dバーチャル画像の開発、覚醒下手術における統合型モニタリングシステムの開発について取り組んでいる。Surgiscopeを使った手術支援3D画像や、脳波、ナビゲーション、マッピングタスク、同時多分割画面表示および記録するシステムを構築した。

4)てんかんにおける安静時機能的MRIを使ったネットワーク解析
 ネットワーク解明の為の新しい解析方法の開発に関する報告である。局在関連てんかん症例にて安静時機能的MRIを施行して、Hub analysisで解析した。焦点付近でのhubの有意な出現を確認している。この様な手法でてんかんの病態や焦点診断に迫る研究が最近増えている。この様な手法の確立は疾患特有のネットワーク解析の可能性を示唆し、今後の応用が期待される。

 “脳機能の基盤となるネットワークの解明“は、脳外科手術における機能温存をより高度なものとする事を目標として、我々脳神経外科医が今後進む方向において希求されるべきテーマである。各疾患における新しい診断方法や治療方法の開発に発展する可能性をも有している。加えて、この様な取り組みは”脳科学“に大きく寄与できるものであると考える。

今後の展望

これらの他、様々なプロジェクトをセンターにおける脳神経外科の取り組みとして実施していく予定である。センター主導で実施予定である発達・加齢における脳コネクトームの解明の大規模コホート研究にも連携し、脳腫瘍、てんかん、脳血管障害といった様々な疾患においても神経基盤ネットワーク解析を進めていく。実際に脳に触れる事の出来る脳神経外科医には、研究において大きな利点があると共に、その利点を活かして研究を推進せねばならぬ大きな責務を担っているとも言える。今後も脳とこころの研究センターにおいて脳神経外科医の役割は多大である事を認識し、その発展に努力を惜しまない所存である。
(文責:前澤 聡)

↑このページの先頭へ