名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科
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ご挨拶


名古屋大学医学部脳神経外科教授 若林俊彦
名古屋大学医学部 脳神経外科教授
若林俊彦
【入院症例数(名古屋大学単独)】
 脳腫瘍442例、脳動脈瘤133例、脳梗塞44例、脊髄脊椎疾患66例、てんかん・機能的脳神経外科142例、など(2012年実績)。

【入院症例数(名古屋大学関連病院全体)】
 脳腫瘍2885例、脳動脈瘤2023例、脳梗塞2566例、脊髄脊椎疾患1063例、てんかん・機能的脳神経外科860例、など(2012年実績)。

【当院脳神経外科講座の歴史】
 当教室の歴史は古く、1917年(大正6年)の齋藤眞教授の官立愛知医学校(名古屋大学の前身)への着任に始まる。斎藤眞教授は、当時のヨーロッパ(特にウイーン大学)の先進的な脳神経外科手術手技を積極的に本邦に導入し、1946年に創設された脳・神経外科研究会(日本脳神経外科学会の前身)の第1回〜第3回の会長を務め、脳神経外科学の啓発活動に専心した。その後を継いだ戸田博教授及び橋本義雄教授は脳神経外科の地域医療に尽力、数多くの関連病院設立を展開した。1971年(昭和46年)に、脳神経外科学講座が独立すると、その初代教授に着任した景山直樹教授は脳腫瘍病理学・小児脳腫瘍学・神経内分泌学を確立するとともに、日本脳腫瘍病理学会、日本脳血管内治療学会などを創設し、本邦の学問的基盤を築き上げた。特に、低侵襲手術法の先駆的手法である、下垂体腫瘍に対する経蝶形骨洞手術(Hardy approach)の本邦への導入をいち早く確立した。第二代教授の杉田虔一郎教授は、脳神経外科の顕微鏡手術(Microsurgery)の確立に中心的役割を果たすとともに、脳動脈瘤に対するSugita clipの開発、Sugita frame、Sugita chair等、脳神経外科手術機器の開発に尽力した。自らの顕微鏡下手術のスケッチをふんだんに挿入した成書“Microneurosurgical atras”は脳神経外科医のバイブルとまで言われ、世界中で愛読された。第三代の吉田純教授は生命科学・医用工学の進歩を脳神経外科学に取り入れ、画像誘導手術法の確立、脳内局所投与のDrug Delivery Systemの開発、細胞免疫療法の脳腫瘍治療への導入などの後に、本邦初の脳腫瘍に対するインターフェロンベータ遺伝子治療の臨床応用を実施した。特に、脳腫瘍に対するサイトカインの果たす役割の解析で、悪性脳腫瘍に対する新たな治療法への糸口を見いだした。現在、第四代の若林俊彦教授は、脳神経外科ロボティクス開発、脳腫瘍のゲノム・エピゲノム・プロテオーム解析に基づく新規参入化学療法剤の個別化・層別化医療の推進、分子イメージングPETプローベによる未知の病態の可視化、核酸医療薬の新規開発などを手掛けるとともに、大学内に「脳とこころの研究センター」設立に伴う脳科学のアジアの拠点形成、「小児がん治療センター」の設立による悪性小児脳腫瘍の拠点化、などに尽力している。

【名古屋大学脳神経外科の臨床的研究グループ紹介の特色】
★ 脳腫瘍グループ=先進的各種手術支援システムを駆使して、超難度の手術にも挑戦し、最小限の浸襲で最大限の効果を得られる手術を心掛けている。悪性脳腫瘍(特に膠芽腫)に対する新たな化学療法の提言であるINTEGRA studyはJCOG(Japan Clinical Oncology Group)傘下の全国35施設の協力の下、第二相臨床研究が実施され、世界へのグローバルスタンダードへの発信を目指している。
★ 脳血管内治療グループ=各種脳血管内治療デバイスの国内承認への先駆的治験に大きく貢献し、動脈瘤に対するコイル或はステント治療、閉塞性血管障害に対するステント等による血行再建術のパイオニアとして活躍している。
★ 脳血管外科グループ=スギタクリップの開発に端を発する。現在、本邦の70%、全世界の40%のシェアを占め、脳動脈瘤治療に多大な貢献をしている。さらに近年、モヤモヤ病に対する診断及び発症機序に関わる新たな知見を模索するとともに、バイパス手術を積極的に取り入れている。
★ 神経内視鏡グループ=近年の開発著しい神経内視鏡を駆使して、下垂体腫瘍、脳室内腫瘍、髄液循環不全に対する循環再建などを低侵襲手術にて実施している。
★ 機能的脳神経外科グループ=神経変性疾患に伴う機能低下を深部刺激電極植え込み等により、機能回復を図っている。現在、主にパーキンソン氏病に対するDBSを手掛けており、更には、ジストニア、難治性てんかん、各種精神神経疾患に対するBMIなどを検討している。
★ 脊椎脊髄グループ=各種脊椎及び脊髄疾患に対する低侵襲手術を手掛けるとともに、神経外傷に対する再生医療への臨床応用に向けて検討を重ねている。
★ 脳神経先端医療開発グループ=各グループと有機的に連携し、難治性疾患に対する新たな診断及び治療法の開発を手掛けている。細胞療法、遺伝子治療、再生医療、核酸医療等の臨床応用に向けての研究に日夜鋭意努力を続けており、世界的な業績を挙げつつある。

【名古屋大学脳神経外科の基礎的研究の特色】
★ 脳神経外科手術=当院には術中MRI、ニューロナビゲーションシステム、ニューロメイト等による高精度ロボティクス手術支援機器の導入に特徴づけられる”Brain Theater”と名付けられた手術支援システムを擁している。また、術中モニタリング技術、覚醒下手術の併用により、機能予後を配慮した高難易度の手術成績も向上している。
★ 脳腫瘍先端医療開発=先端医療の臨床研究開発として、マイクロカプセル包埋インターフェロンベータ遺伝子による悪性脳腫瘍への遺伝子治療臨床応用が、2000年4月より当教室にて始まった。今後さらに脳腫瘍核酸医療臨床研究に向けて鋭意努力を重ねている。
★ 細胞療法・神経再再生医療=本学では「先端医療・臨床研究支援センター」が中心となり、「臨床研究」ならびに「医師主導型臨床治験」に適応した細胞・組織調製施設が完備している(ISO9001:2008, ISO13485:2003取得)。この施設を利用し脳腫瘍に対する特異的発現抗原感作による樹状細胞療法臨床研究を当院輸血部及びピッツバーグ大学との協力の下、悪性神経膠腫症例に対して実施している。
★ 脳腫瘍の網羅的ゲノム解析=多数の脳腫瘍サンプルを網羅的にゲノム解析し、その結果から新規予後予測因子の同定と個別化医療への応用を模索。更には、新規標的分子の同定とその分子標的療法の開発を手掛けている。

【名古屋大学医学部附属病院の特色】
 名古屋大学医学部附属病院は、歴代の院長が築き上げてきた基盤の上に、斬新なアイデアの下に改革を次々に断行し、その結果、名大病院は、診療実績、教育基盤、研究業績のいずれの面も大きな発展を成し遂げた。トランスレーショナル研究拠点、臨床研究中核拠点、小児がん研究拠点はもとより、産学官連携の推進、早期創成科学プロジェクトセンターと共同で各種プロジェクトの推進、脳とこころの研究センターの創設などを先導する一方、臨床現場では、病院収益を各講座の教官数の増員を図り、若手研究者の研究支援金の補填に務め、各教室の人的及び研究財政支援を図った。また、寄附講座の増設による教官数の増員も図り、教育担当の分担化と割当時間の短縮に伴う負担の軽減に務めている。
 名古屋大学医学部の特筆すべき特色として、全国に先立ちマッチングシステムを取り入れ、独自の名古屋大学方針として永年築き上げて来た卒後全科ローテーションシステムがあり、この結果、全人的な医療および中部地区の地域医療を支え、優秀な臨床医が育ってきている。そのため、愛知県を中心とする東海4県への研修希望者が毎年多数参集しており、臨床に強い医師の要請機関として、本邦に於ける存在感は更に強まって来ている。
 一方、わが国は、世界で類をみないスピードで超高齢化社会を迎え、今後、65歳以上が総人口に占める割合は、2025年には30%を越えるものと予測されている。平均寿命の上昇により、医療現場においては、高齢化に伴って増加する、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、慢性腎疾患等の慢性疾患が医療費の多くを占めるようになってきており、この抜本的解決を目指した取り組みが緊急課題となっている。名大病院の今後取るべき方向性は、国内のみならず国際的な視野の下に、上記各種疾患に対する創薬を含めた大型臨床研究の受託推進体制を創り上げるとともに、2012年に名大に創設された創薬医薬大学院を初めとする各種研究機関から生まれでてくる名大発の創薬開発を、臨床応用に導くために支援する開発基盤を早急に立ち上げ、それ産業化して世界に冠たる臨床研究拠点を組織化することである。そしてこの目標を実現化するためには、1)創薬医薬大学院、脳とこころの研究センター、先端医療臨床研修支援センター或は中部円環コンソーシアムなどから生まれでてくる基礎研究から橋渡し研究へのシーズ発掘と育成の持続性を人的及び経済的支援をすること、2)橋渡し研究及び臨床研究を支える世界的頭脳の人材確保(ヘッドハンティング)とその下での優秀な若手人材の育成及びリクルートの推進、3)臨床研究推進基盤の国際標準化確立のための海外交流の活性化、4)圧倒的知財申請を基盤として創薬医療の成長と地元財界と組んで産業化の達成を早期に目指すことが必要であると考える。
 名大病院は、東海地方を中心に、わが国の国立大学病院の中で最大級の関連病院数を誇る。約70病院(総数約31,000床)の関連施設の中には臨床研究や臨床治験が自ら行える500床以上の大規模病院が34施設あり、医学生及び卒後研修制度の人材教育、診療教育の実績では他に類を見ないネットワークを構築している。このネットワークを基に情報の共有化を図り、中部円環コンソーシアム或は脳とこころの研究センターでは、創薬研究の大規模コホート研究の実現を可能にしている。このシステムを利用し、ここ数年以内に多くのアクションプランを実現し、世界に情報を発信させるように実働させるよう尽力している。今回、山中伸哉京大教授がiPS細胞の発見で本年度のノーベル医学生理学賞を受賞したように、基礎科学力では国際競争力のトップランナーであるわが国で培った基礎研究を橋渡し研究、更には臨床研究の成果として医療を世界に発信していくためには、日本全体の科学者が一丸となり、多職種間の人材交流や情報の共有化を図るとともに、行政関係者、企業関係者等のグローバルなチーム体制の整備が極めて重要と考える。2013年にはWPIやリーディング大学院も取得したいまこそ、名大病院に世界に冠たる先端医療イノベーションセンターを立ち上げる時期が到来している。

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