■研究グループ紹介
腫瘍グループ
名古屋大学には、基礎ならびに臨床分野において日本を代表する悪性腫瘍の研究者が多数在籍し、われわれの口腔癌に関する研究のほとんどが彼らとの共同研究という形で進められています。また口腔癌の臨床を行う上においても他科との連携は必須なものでありますが、当大学では臨床各科の先生方が当科の口腔癌の治療に興味と理解を示して下さり、常日頃から惜しみない協力やアドバイスを得ています。このように名古屋大学医学部は口腔癌の臨床および研究を行う上においてすばらしい環境が整っており、それゆえわれわれ腫瘍グループのメンバーは、いろいろな関連施設または関連講座に出向き基礎的研究を行い、それを臨床に実践しています。
臨床:臨床においては愛知県がんセンターと共同で開発した超選択的動注科学療法を積極的に集学的治療の一つとして取り入れており、優れた治療成績を国内のみならず海外においても報告しています。この方法は放射線治療との同時併用が連日で行える事が特徴で、進行癌においても原発巣の手術が回避されるもので、国内外より注目されています。また進行性の頸部リンパ節転移症例に対しては温熱療法を放射線療法と併用し、生存率の向上が得られています。このように手術、放射線療法、化学療法、温熱療法などの手法を屈指し、治療に取り組んでいます。また、定期的に口腔外科、形成外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科との合同カンファレンスが開催されており、他科との手術をはじめとした共同治療を行っており、口腔癌の包括的な治療を実践しています。
基礎:基礎研究は遺伝子治療、温熱療法に大別されます。遺伝子治療に関する研究を名古屋大学医学部遺伝子治療学講座との共同で行っており、毒性が問題視されているウイルスベクター以外でのベクターを開発し、わが国における先駆者的存在となることを目指しております。また温熱療法の基礎的研究を精力的に行い、その成果について多く発表してきました。現在は磁性粒子を用いた磁場誘導組織内加温法の研究を名古屋大学工学部との共同研究を行っており、臨床に向けて研究を行っております。その他に遺伝子診断にも力を入れ、愛知県がんセンターの研究所との共同研究にて口腔癌の早期発見を目指しております。このように腫瘍グループは臨床、基礎研究においても、科、施設、国を越えての協力体制が整っており、恵まれた治療、研究を実践しています。
オーラルメディスン
われわれのグループは、有病者の歯科・口腔外科疾患(血液疾患、循環器疾患など)と口腔外科のなかで観血的処置を伴わない疾患(粘膜疾患、唾液腺機能異常など)を対象に臨床研究を行っております。主な臨床研究は以下のようなものです。
1) 血液疾患患者(血友病など)の口腔出血管理に関する臨床
当大学の内科学第一講座は血液疾患を専門分野とし、全国的にも有名な講座であります。このため歯科口腔外科も症例に恵まれ、血液疾患患者における口腔出血管理に関する研究を当科開設以来行っております。
2) 全身疾患を有した患者の歯科・口腔外科疾患に関する臨床研究
当院は、医学部附属病院であり全身疾患を有した患者の歯科・口腔外科処置の依頼が多くあります。これらの患者の治療はもちろんのこと、骨髄移植、臓器移植あるいは心臓弁疾患など、口腔管理が重要な意味を持つ全身疾患について、他科医師と連携しその口腔管理を行っております。
再生医療グループ
インプラント・顎顔面再生医療
再生医学、その実践である再生医療は、LangerとVacantiによるティッシュエンジニアリンングの概念の提唱にはじまります。この概念は細胞、細胞の足場、増殖因子の三要素を組み合わせることで組織再生を行うものです。当初、臓器不足の移植医療に変わる医療として注目されましたが、現在では高齢化社会に突入する中で、再生医療の役割はさらに重要となって来ております。つまり、豊かな老後をおくる意味において、Quality
of life (QOL)の向上は必要となってきております。当グループは組織工学的手法により、患者さんの負担を少なく、早期に審美的、口腔機能の回復をはかることをめざす一方で、瘢痕治癒改善やしわ治療などにも焦点をあて、QOL向上を目指す研究、臨床グループです。臨床では、インプラント義歯の高度先進医療の承認を受け、インプラント治療を行うと同時に、最先端医療である再生医療の臨床を行っています。これは間葉系幹細胞と多血小板血漿を応用した注入型培養骨をインプラント治療および歯周病治療に応用する治療です。また、線維芽細胞を用いた、より予知性の高いしわ治療も行っております。さらに、基礎研究では幹細胞(間葉系幹細胞、歯髄幹細胞、歯胚など)を用いての骨、歯、歯周組織の再生に関する研究を、基礎研究にとどまらず、臨床応用を常に念頭においたトランスレーショナルリサーチの概念によって行っています。この成果は特許出願します。研究面では、この分野を世界的にリードするばかりでなく、国内の他施設と共同研究、共著書の出版を進めております。そして、各種国際、国内学会にも積極的に参加し、研究の国際化を進める一方で、グループ員の留学も継続的な体制が確立されています。今後、より効率的、実用的な再生医療に関する基礎的研究、その臨床応用を目指します。
顎外科グループ
顎外科グループでは口腔領域の先天的形態異常、後天性形態異常および機能障害に関する疾患の治療と研究、顎関節症、口腔顎顔面痛、睡眠時無呼吸症候群、口腔外科一般症例の臨床、基礎研究を行っています。また,オールラウンドな口腔外科専門医、口腔外科指導医の育成を目標に,日々研鑽に励んでおります.その内容は以下のようなものです。
臨床:
(1) 顎変形症患者に対する外科的矯正治療
東海地区の矯正医の先生方と症例検討会を行い、種々の顎矯正外科手術を行っています。従来の下顎枝矢状分割術やLe Fort T型骨切り術以外にも、多様な症例に応じて種々の新たな骨切り法を選択して施行しております。特に小下顎症、小上顎症、下顎骨非対称症に対する仮骨延長治療は、日本で先駆けて行われ、最先端にあると自負しております。
(2) 口唇裂、口蓋裂患者に対する発育管理、形成手術
口唇裂、口蓋裂患者の中には種々の全身合併症を有するものも少なくありません。当グループでは医学部の歯科口腔外科の利点を生かして、小児科、形成外科、耳鼻科、ソーシャルワーカーなどと連携し治療を行っています。
(3) 顎関節症
顎関節症は歯科領域における齲蝕、歯周病につぐ第三の疾患と言われるほど、その病名が一般化しています。しかし、その診断、治療、予後についてはまだ不明な点が多く、施設ごとでもこの疾患に対する概念、治療が異なっています。顎外科グループは顎関節症の臨床を通じて、病態の解明、診断技術の向上、治療法の確立を目指しています。治療法としては、Mandibular
kinegiogram診断、MR画像診断の後、約3―6ヶ月間の保存療法(各種スプリント療法、薬物療法、理学療法、運動療法、Pumping
manipulation、Arthrocentasisなど)、治療効果判定、保存療法が奏功しない症例に対してはKTPレーザー併用顎関節鏡下剥離授動術、Modified
condylotmy 、骨延長、顎変形に準じた顎矯正外科治療などの外科療法を導入しています。また近年注目されつつある口腔顔面痛患者の治療にもあたっております.
(4) 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は内科、耳鼻科、放射線科、矯正歯科とのチームアプローチによる口腔内装置を用いた保存治療から小下顎症症例においては顎骨延長、顎矯正外科手術を応用した段階的治療で実績を上げています。
(5) 確固たるエビデンスに基づいた口腔外科臨床
骨折、嚢胞、良性腫瘍、補綴前外科、歯周形成外科、口腔外科小手術など口腔外科手術の基本術式を見直し、最新の材料、最新技術を検証、研究し、オールラウンドな口腔外科専門医、指導医の育成を目標に研鑽しております.
研究:
● 骨格性咬合異常を伴う顎顔面領域の成長に関連する遺伝子多型の探索に関する研究
● 顎顔面領域のscaffold、担体、移植材料の基礎的研究
● 顎顔面領域へのBMP、SHH遺伝子を用いた骨・軟骨再生遺伝子治療の基礎的研究
● 組織工学的手法を用いた下顎頭軟骨、関節円板軟骨再生の基礎的研究
● 神経原性疼痛などにおける神経伝達分布、疼痛誘発など口腔顎顔面慢性疼痛関する基礎的研究